邦楽ポップス名曲のあゆみ 第8回(1976)

スローバラード/RCサクセション (1976)

RCサクセションの3作目のアルバム「シングル・マン」から、先行シングルとしてリリースされた。後に代表曲として知られるようになるが、当時はマネージャーの独立騒動になどに絡んだ暗黒時代でほとんど売れずに、まもなく廃盤になったという。市営グラウンドの駐車場に停めた車の中で、恋人と毛布にくるまりカーラジオから流れるスロー・バラードを聴いて、「悪い予感の欠片もない」という曲である。クレジットはされていないが、タワー・オブ・パワーが参加しているようだ。

ファンタジー/岩崎宏美 (1976)

岩崎宏美の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。筒美京平によるディスコ歌謡路線で、糸居五郎のDJをフィーチャーしたディスコ・アルバムも発売された。個人的には当時、小学3年でディスコとはまったく無縁な北海道苫前郡苫前町の書店のラジオでかかっているのを聴き、これは本当に良いなと生まれて初めて感じた曲である。歌詞に「地下鉄」という単語が入っていて、当時はどういうものなのかさっぱり分からなかったのだが、なんとなく都会を感じてうっとりしていた。

恋の弱味/郷ひろみ (1976)

郷ひろみの16枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。白いビルを舞台にした危ういラヴソングであり、一人で煙草をふかしたり星を見つめたりしながらあせってしまいがちなところがとても良い。近田春夫&ハルヲフォンが1978年のアルバム「電撃的東京」でカバーしていた。

春一番/キャンディーズ (1976)

キャンディーズの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。「雪が溶けて川になって流れて行きます」「もうすぐ春ですね 恋をしてみませんか」と、「です・ます調」で丁寧なのだが、ノリが軽いところがとても良い。

青春の坂道/岡田奈々 (1976)

岡田奈々の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高23位を記録した。70年代の女性アイドルの中でも、岡田奈々には文学性のようなものや良い意味でアナクロな青春が感じられてとても良い。中村雅俊が主演したテレビドラマ「俺たちの旅」で、岡田奈々をメインにした回の挿入歌として使われ、ヒットにつながった。

夢で逢えたら/吉田美奈子 (1976)

吉田美奈子のアルバム「FLAPPER」に収録された、大滝詠一によるスタンダード・ナンバーである。様々なアーティストによるバージョンが存在するが、最初にレコードとして発売されたのはこれだったようだ。当初はアン・ルイスへの提供曲としてつくられたのだが、イメージに合わずボツになったという。

セクシー・バス・ストップ/浅野ゆう子 (1976)

筒美京平が企画した覆面ディスコ・バンド、Dr. ドラゴン&オリエンタル・エクスプレスのインストゥルメンタル曲を浅野ゆう子がカバーしたバージョンで、オリコン週間シングルランキングで最高12位を記録した。

夏にご用心/桜田淳子 (1976)

桜田淳子の15枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。「夏は心の鍵を甘くするわ ご用心」ということなどについて歌われている。

横須賀ストーリー/山口百恵 (1976)

山口百恵の13枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。「これっきり これっきり もうこれっきりですか」というフレーズがあまりにもキャッチーで大いに流行っていた。阿木燿子・宇崎竜童が山口百恵に提供した最初の楽曲でもある。

SHININ’ YOU SHININ’ DAY/Char (1976)

Charのデビュー・シングル「NAVY BLUE」のB面に収録された、とてもカッコいい曲である。デビュー・アルバム「Char」の1曲目にも別テイクが収録された。後に世良公則、原田真二と共にロック御三家として人気者になるが、シティ・ポップの文脈で再評価もされがちである。

どうぞこのまま/丸山圭子 (1976)

丸山圭子のキングレコード移籍後2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位のヒットを記録した。ニック・デカロ「イタリアン・グラフィティ」の線を狙ったという、ボサノバ調の洗練されたアレンジがとても良い。

電話線/矢野顕子 (1976)

矢野顕子のデビュー・アルバム「JAPANESE GIRL」に収録された曲で、リトル・フィートのメンバーが参加している。オリジナリティー溢れる自由奔放なボーカルの魅力を、素晴らしい演奏と共にコンパクトに楽しむことができる。

中央フリーウェイ/荒井由実 (1976)

荒井由実のアルバム「14番目の月」収録曲で、中央自動車道のドライブがロマンティックに歌われている。調布基地、ビール工場、競馬場など実際の風景が歌詞に出てくる。当時、シティ・ポップとはおそらく呼ばれていなかったと思われるが、ドライブ・ミュージックとしてのそれを強く印象づける楽曲でもある。

失恋レストラン/清水健太郎 (1976)

清水健太郎のデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングでは1位に輝いている。ギター弾き語りのスタイルでテレビにもよく出演していて、アイドル的な人気があった。楽曲を提供していたのは、つのだひろである。

S.O.S./ピンク・レディー (1976)

ピンク・レディーの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで初の1位に輝いた。イントロにSOSのモールス信号が入っていて、放送上問題があったらしく、テレビやラジオではカットされていた。「ペッパー警部」でデビューした時にはミニスカートの衣装に激しいアクション、グループ名がピンク・レディーと、キワモノ的な印象もあったが、すぐに子供たちの人気者となっていった。「男は狼なのよ 気をつけなさい」と歌われるこの曲へのアンサーソングとして、岡林信康が「狼なんかじゃありません 男は悲しい生き物よ」と「新説SOS」をリリースしていた。

フィーリング/ハイ・ファイ・セット (1976)

ブラジルのシンガー・ソングライター、モーリス・アルバートの「愛のフィーリング」をハイ・ファイ・セットがカバーしたバージョンで、オリコン週間シングルランキングで最高2位のヒットを記録した。