邦楽ポップス名曲のあゆみ 第5回(1973)

女の子なんだもん/麻丘めぐみ (1973)

麻丘めぐみの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルで最高7位を記録した。「女の子なんだもん」というタイトルからしてまず最高なのだが、「口に出すのは ルル 恥ずかしいから ルル」の「ルル」がまずよく分からないのだが、「やさしい心で 感じとってね」ときたものである。筒美京平によるとてもグルーヴィーで良い曲のうちの1つである。

他人の関係/金井克子 (1973)

金井克子の31枚目のシングルで、オリコン週間シングルで最高7位を記録した。「逢う時にはいつでも他人の2人」というわけで、何やら大人のいけないことについて歌われているようだという雰囲気は当時の子供たちにもなんとなく伝わっていたのだが、「パッパパヤッパー」というようなスキャット的なところや独特の振り付けなどがあまりにもキャッチーすぎて、真似しては大人たちから怒られたりもしていた。

心の旅/チューリップ (1973)

チューリップの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。ビートルズからの影響も強く受けた音楽性はもっと再評価されるべきというようなことが、わりといわれがちな印象もある。福岡から上京する時の心境などが歌われていて、別れをテーマにしたロマンが感じられる楽曲である。リードボーカルは財津和夫ではなく、姫野達也である。1980年代にはニュー・ウェイヴ・バンドの有頂天もカバーしていた。

危険なふたり/沢田研二 (1973)

ザ・タイガース、PYGのボーカリストとして活動していたジュリーこと沢田研二のソロ・アーティストとして6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。年上女性との切ない恋について歌われた、とてもカッコいい曲である。

赤い風船/浅田美代子 (1973)

浅田美代子のデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝い。国民的人気テレビドラマ「時間ですよ」の第3シリーズでデビューし、番組内で歌っていたことがヒットにつながったと思われる。圧倒的な美少女で歌唱力はそれほど芳しくもないのだが、そこがアイドル歌謡としての魅力にもなっている。

ろっかばいまいべいびい/細野晴臣 (1973)

はっぴいえんど解散の翌年にリリースされた、細野晴臣のソロ・デビュー・アルバム「HOSONO HOUSE」の1曲目に収録された曲である。アコースティック・ギター弾き語りによる懐かしくも新しい感覚があり、西岡恭蔵、吉田美奈子のカバー・バージョンでも知られる。

ファンキー・モンキー・ベイビー/キャロル (1973)

矢沢永吉、ジョニー大倉らによるロックンロール・バンド、キャロルの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高57位を記録した。ご機嫌なサウンドに乗せて歌われる「君はFunky Monkey Baby いかれてるよ 楽しい 君といれば」などのシンプルかつエッセンシャルなフレーズが最高である。

恋する夏の日/天地真理 (1973)

天地真理の7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。当時のアイドルブームにおいても特に一般大衆的な人気があり、ブリヂストンのドレミまりちゃんなる子供用の自転車まで発売されていた。「あなたを待つのテニスコート」の歌いだしも印象的な、避暑地を感じさせるサマーソングである。

わたしの彼は左きき/麻丘めぐみ (1973)

麻丘めぐみの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。左ききの彼に合わせてみようとするのだが、私の右ききは直せないという健気でとても可愛い曲であり、振り付けもキャッチーでとても良い。

涙の太陽/安西マリア (1973)

1965年にエミー・ジャクソンがヒットさせた曲のカバー・バージョンで、オリコン週間シングルランキングで最高16位を記録した。これがデビュー・シングルである。

てんとう虫のサンバ/チェリッシュ (1973)

チェリッシュの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録した。元々はアルバム「春のロマンス」の収録曲だったのだが、ラジオで流したところリクエストが殺到し、シングル・カットすることになったという。グループから男女デュオとなっていたチェリッシュは後に夫婦となるのだが、この曲も結婚披露宴の定番曲として知られる。

草原の輝き/アグネス・チャン (1973)

香港出身のアイドル歌手、アグネス・チャンの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。ハイトーンのボーカルと親しみやすいキャラクターで人気者になり、テレビの司会者がアグネス・チャンちゃんなどと寒いことを言いがちだったような気もするのだが、記憶が定かではない。レンゲの花を枕にして寝るというのがよく分からないのだが、なんとなくファンタジーでとても良かった。

わたしの青い鳥/桜田淳子 (1973)

桜田淳子の3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高18位を記録した。テレビで歌っている姿をやたらと目にした記憶があったので、もっとヒットしたような気がしていた。「ようこそここへ クッククック」のくだりはあまりにもキャッチーで、こぞって真似をしていたものだが、後に「オレたちひょうきん族」の「タケちゃんマン」のコーナーで明石家さんまが演じていたブラックデビルにも引用される。

個人授業/フィンガー5 (1973)

沖縄出身の兄妹5人組によるグループ、フィンガー5の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルで1位に輝いた。子供たちがソウル・ミュージック的でカッコいい曲を歌う姿がテレビでも大人気となり、ヒット曲が続いたり、いろいろなグッズが発売されるなどしていた。先生に恋をして個人授業を受けてみたいという内容も、背伸びしがちな子供心に響いていたような気がする。

神田川/南こうせつとかぐや姫 (1973)

南こうせつとかぐや姫のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。銭湯の風呂上りに同棲をしているらしき恋人を待つ女性の心境が歌われ、いわゆる四畳半フォークの代表曲とされる。日本国民の生活水準が向上していくにつれ、貧しかった過去の象徴のように見なされるようになっていくが、音楽的にもひじょうに聴きごたえがあるグループである。

ひこうき雲/荒井由実 (1973)

荒井由実のデビュー・アルバム「ひこうき雲」のタイトル曲で、シングル「きっと言える」のB面にも収録されていた。小学生時代の同級生が卒業してから数年後に病死したことを知らされ、葬式に行くと祭壇には記憶の中にはいない高校生になった彼の写真が飾られていた、という実体験がベースになっている。デビュー間もなくして早くも天才性を感じさせるこの曲は、元々は雪村いずみのために書き下ろされていたという。

氷の世界/井上陽水 (1973)

井上陽水の3作目のアルバムで、1974年と1975年のオリコン年間アルバムランキングで2年連続1位という大ヒットを記録した「氷の世界」のタイトル曲である。クラビネットを効果的に用いたサウンドは、スティーヴィー・ワンダー「迷信」に影響を受けている。

恋のダイヤル6700/フィンガー5

フィンガー5の3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは4週連続1位に輝いた。好きな人に電話をかける時のドキドキ感という絶妙なテーマがご機嫌なサウンドとも相まって、これまた本当に受けまくった。イントロとして収録されている電話のベル音も、現在となってはとても懐かしい。

あなた/小坂明子 (1973)

小坂明子のデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、1974年のオリコン年間ランキングでは2位を記録した大ヒット曲である。小坂明子はポプコンことヤマハポピュラーコンテストにおいて、この曲で16歳にしてグランプリを獲得した。小さな家と子犬の横にはあなたがいてほしい、というような素朴な願望が歌われているのかと思いきや、実は叶うことなく失われてしまった夢についての曲なのだと気づかされる。小柳ルミ子、天地真理といった同時代の人気女性歌手から徳永英明やエレファントカシマシの宮本浩次といった男性シンガーまで、数々のカバー・バージョンも生んだ名曲である。