邦楽ポップス名曲のあゆみ 第6回(1974)

赤ちょうちん/かぐや姫 (1974)

「神田川」を大ヒットさせたかぐや姫による四畳半フォークシリーズ第2弾で、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。「雨が続くと仕事もせずに キャベツばかりをかじってた」というようなフォーキーかつハートフルなフィーリングが最高である。秋吉久美子主演で映画化もされた。

襟裳岬/森進一 (1974)

森進一の29枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位、日本レコード大賞と日本歌謡大賞で大賞を受賞した。演歌歌手の森進一が吉田拓郎によるフォークソング的な曲を歌うことにレコード会社や所属事務所からは反対の声も強かったというが、森進一自身の強い希望により発売したところ、大ヒットした。「襟裳の春は何もない春です」というフレーズは、作詞をした岡本おさみが北海道のえりも町を訪れた際に、実際に「何もないですが」と言われながらも温かくもてなされたことに由来している。

学園天国/フィンガー5 (1974)

フィンガー5の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルで最高2位を記録した。「ヘーイヘイヘイヘーイヘイ」からはじまるコール&レスポンスがたまらなくキャッチーな学園ポップスで、1989年には小泉今日子によるカバー・バージョンもヒットした。

花とみつばち/郷ひろみ (1974)

郷ひろみの8枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。中性的なボーカルによって性愛の気分が後ろめたくはまったくなく、明るく健全なものとしてポップでキャッチーに歌われているところがとても良い。近田春夫&ハルヲフォンがポップス・メドレーでカバーしてもいた。

グッドバイ・マイ・ラブ/アン・ルイス (1974)

デビュー当時はアイドル歌謡的な曲を歌っていたアン・ルイスの6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高14位と初のヒットを記録した。平尾昌晃によるロッカ・バラード的なメロディーや間奏で入る英語のセリフなど、洋楽的なセンスが特徴的である。

やさしさに包まれたなら/荒井由実 (1974)

荒井由実の3枚目のシングルとしてリリースされた後、別のバージョンがアルバム「MISSLIM」に収録された。元々は不二家ソフトエクレアというキャンディーのCMソングとしてオファーを受けて、つくられたものである。「目に映る全てのことはメッセージ」というフレーズが、独特で印象的である。1989年にはスタジオジブリのアニメーション映画「魔女の宅急便」のエンディングテーマとして使われ、より広く知られるようになった。

精霊流し/グレープ (1974)

さだまさしと吉田正美によるフォークデュオ、グレープの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。さだまさしの故郷である長崎市で行われる死者の魂を弔う行事、精霊流しをテーマにしている。ラジオの深夜放送から少しずつ広まり、時間をかけてヒットしていった。「テープレコーダー」というワードも印象的なこの曲の歌詞で、さだまさしは日本レコード大賞の作詩賞を受賞している。

激しい恋/西城秀樹 (1974)

西城秀樹の9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。「やめろと言われても」のフレーズとアクションはコール&レスポンスと共に子供たちの間でも流行ったが、アイドル歌謡ではあるがロック的なフィーリングを感じさせるものでもあった。この年には情熱的なバラード「傷だらけのローラ」もヒットした。

岬めぐり/山本コウタローとウィークエンド (1974)

競馬をテーマにしたコミックソング「走れコウタロー」をヒットさせたフォーク・バンド、ソルティ・シュガーの元メンバーであった山本コウタローが新たに結成したバンドのデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録した。マイルドにセンチメンタルな旅情のようなものも感じられるスタンダード・ナンバーとして、長く親しまれるようになる。

ポケットいっぱいの秘密/アグネス・チャン (1974)

アグネス・チャンの6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。元はっぴいえんどの松本隆が職業作詞家として初めて歌詞を提供した楽曲ともいわれ、「あなた草の上 ぐっすり眠ってた 寝顔やさしくて 『好きよ』ってささやいたの」という歌詞を縦読みすると「アグネス」になるという仕掛けが用いられていた。

ひと夏の経験/山口百恵 (1974)

山口百恵の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」というフレーズがひじょうに印象的な、いわゆる性典歌謡のクラシックとして知られているが、「女の子の一番大切なもの」とは真心を指しているということである。この曲で「NHK紅白歌合戦」に初登場し、トップアイドルとしての人気を確立していく。

ふれあい/中村雅俊 (1974)

中村雅俊のデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。役者として主演した学園ドラマ「われら青春!」の挿入歌で、ハートウォーミングなボーカルには唯一無二の個性が感じられる。

よろしく哀愁/郷ひろみ (1974)

郷ひろみの10枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。ジャニーズ事務所所属の歌手による、記念すべき初の1位獲得曲でもある。「会えない時間が愛育てるのさ」というフレーズや「よろしく哀愁」というタイトルそのものも使い勝手がよく、印象的であった。秋に発売されるというタイミングもひじょうに良かったような気がする。

ピンク・シャドウ/ブレッド&バター (1974)

ブレッド&バターのアルバム「Barbecue」に収録され、シングルでもリリースされた曲である。当時それほどヒットしたというわけではないが、シティ・ポップの名曲として後に再評価されるようになる。「愛してるよ 君だけを」というストレートな歌詞がとても良く、山下達郎や「花の82年組」から三田寛子にもカバーされていた。

12月の雨/荒井由実 (1974)

荒井由実の2作目のアルバム「MISSLIM」からのシングル・カットである。山下達郎、大貫妙子らシュガー・ベイブのメンバーがバックコーラスで参加している。当時の日本におけるトップクラスのミュージシャンたちによるひじょうに高いレベルの音楽に乗せて、「雨音に気づいて遅く起きた朝は まだベッドの中で半分眠りたい」というようなきわめて日常的な気分について歌われているのが特徴的である。「時はいつの日にも親切な友達」というフレーズは天才的である。

タイムマシンにおねがい/サディスティック・ミカ・バンド (1974)

サディスティック・ミカ・バンドの日本のロック名盤としても知られるアルバム「黒船」から、先行シングルとしてリリースされた曲である。当時、イギリスなどで流行していたグラム・ロックを取り入れた音楽性が特徴的である。