邦楽ポップス名曲のあゆみ 第11回(1978・後編)

君のひとみは10000ボルト/堀内孝雄 (1978)

アリスの堀内孝雄によるソロ・シングルで、オリコン週間ランキングで1位、年間ランキングでは4位の大ヒットを記録した。資生堂、秋のキャンペーンソングとして当初はアリスにオファーがあったのだが、谷村新司が長期入院することになったため、堀内孝雄のソロでリリースされた。インパクトのあるタイトルは資生堂サイドから提示されたものである。

たそがれマイ・ラブ/大橋純子 (1978)

大橋純子の10枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。TBSテレビの3時間ドラマ「獅子のごとく」の主題歌として放送された後、秋から冬にかけてヒットした。個人的には旭川のスキー場でもよく流れていた記憶がある。

銃爪/世良公則&ツイスト (1978)

世良公則&ツイストの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いたが、TBSテレビ系「ザ・ベストテン」での10週連続1位もひじょうにインパクトがあった。タイトルは「銃爪」と書いて「ひきがね」と読む。世良公則のパワフルなボーカルとロックバンドによる演奏というスタイルが、テレビサイズでお茶の間に鮮烈な印象を残した。

季節の中で/松山千春 (1978)

松山千春の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。北海道ではすでにかなり人気があり、STVラジオの深夜放送「アタックヤング」のパーソナリティーとしても知られていたが、山口百恵と三浦友和が共演するグリコアーモンドチョコレートのCMソングに起用されたこの曲の大ヒットで、全国的にも大ブレイクした(「オールナイトニッポン」ではこの年の春の改編ですでに火曜2部から月曜1部に異動していたが)。テレビ出演を拒否していたが、一度限りという条件で旭川市民文化会館からの中継で出演した「ザ・ベストテン」でのメッセージも話題になった。

ロキシーの夜/近田春夫 (1978)

近田春夫のソロ・アーティストとしては最初のシングルで、オリコン週間シングルランキングにランクインはしていないが、筒美京平が作曲したとてもカッコいいディスコ歌謡である。近田春夫は「オールナイトニッポン」火曜2部で歌謡曲の新しい聴き方を提示してくれたり、近田春夫&ハルヲフォンで歌謡曲をパンクロック的なスタイルでカバーしたアルバム「電撃的東京」をリリースするなど、当時の一部音楽リスナーに多大なる影響をあたえた。

グッド・ラック/野口五郎 (1978)

野口五郎の28枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。恋人の元を立ち去る男のダンディズム的な感覚が歌われた曲だが、シティ・ポップ的なサウンドと歌謡曲的なボーカルとの組み合わせがカッコよくてとても良い。

みずいろの雨/八神純子 (1978)

八神純子の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。ハイトーンボイスとサンバホイッスルのイメージが強い、ヤマハポピュラーソングコンテスト、通称ポプコン出身のシンガー・ソングライターである。

透明人間/ピンク・レディー (1978)

ピンク・レディーの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。1976年の「S.O.S.」から続く連続1位は、この次のシングル「カメレオン・アーミー」まで続く。「ザ・ベストテン」出演時には、歌い踊っていたピンク・レディーの姿が歌詞と同様に消えてしまう演出が話題になった。雪印のアイスクリームでできたクリスマスケーキを買って、この曲の振り付けがパラパラ漫画的に動いて見える小さな本をもらった記憶がある。B面にはザ・ドリフターズらと共演していた人形劇「飛べ!孫悟空」の主題歌「スーパーモンキー孫悟空」が収録されていた。

ハリウッド・スキャンダル/郷ひろみ (1978)

郷ひろみの28枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高13位を記録した。ゴージャスなサウンドに乗って、スター同士のロマンスについて歌われる。歌詞には過去の自殺未遂を懐かしく思い出すようなくだりがあったり、「爪のさきまで惚れていたのさ」というフレーズが印象的だったりもする。「おかしな悲劇とかなしい喜劇が交差する 光と影のレイザリアム」というのもよく分からないのだが、なんだかカッコいい。

ガンダーラ/ゴダイゴ (1978)

堺正章が主演した日本テレビ系のドラマ「西遊記」のエンディング・テーマで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。ゴダイゴにとっては日本語の歌詞で歌った初めてのシングルで、一般大衆的にブレイクするきっかけとなった曲である。オリエンタルな雰囲気とタケカワユキヒデのユニークなボーカルがニューミュージックファンの心もつかんだ。

ラブ・ステップ/越美晴 (1978)

越美晴は後にコシミハルとしてテクノポップ的な音楽をやるアーティストして活動するが、オーディション番組「君こそスターだ!」出身で、この曲でデビューした頃はアイドル的な要素もあるニューミュージックの新人という感じであった。テレビでピアノを弾き語りながら歌うのをよく目にした記憶があるが、「そうよそうよ恋なんて 回る回る回転木馬」というところがひじょうにキャッチーで気に入り、シングルレコードを買った記憶がある。オリコン週間シングルランキングでの最高位は33位であった。

いい日旅立ち/山口百恵 (1978)

山口百恵の24枚目のシングルで、オリコン週間シングルで最高3位を記録した。「あゝ 日本のどこかに私を待ってる人がいる」というわけで、国鉄こと日本国有鉄道のキャンペーンソングであった。当時は阿木燿子・宇崎竜童コンビによる自立した女性をテーマにしたシングルのイメージが強かった山口百恵だが、このしっとりしたバラードではアリスの谷村新司を起用し、さだまさしが作詞・作曲した「秋桜」に続いて、ニューミュージックとも相性が良いことを印象づけた。

チャンピオン/アリス (1978)

アリスの14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。ボクシングのチャンピオンが若き挑戦者に敗れ、衰えを自覚する様が描写されている。「You’re king of kings」というセリフはドラマーのキンちゃんこと矢沢透(ちなみに愛称は落語家の柳家金語楼に似ていたことに由来する)によるものである。

HERO~ヒーローになる時、それは今/甲斐バンド (1978)

甲斐バンドの11枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。セイコーの腕時計のCMソングであり、1979年の元旦を迎えた瞬間にバンドメンバー自身が出演した映像が民放各局で一斉に流れた。甲斐バンドはこの時点ですでにそこそこのキャリアを重ねていたのだが、テレビなどにそれほど露出していなかったこともあって、若年層にはまるで新しいニューミュージックのバンドのように思えた。そして、デジタル腕時計は当時の中学生が入学祝いに買ってもらうアイテムの筆頭でもあったため、そういった要素がこの曲をさらに魅力的に感じさせていたような気もする。

モンキー・マジック/ゴダイゴ (1978)

テレビドラマ「西遊記」のエンディング・テーマであった「ガンダーラ」をヒットさせたゴダイゴがオープニング・テーマのこの曲もリリースして、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。イントロの「アチャー!」という叫び声にインパクトがあり、歌詞は英語だったがフィーリングは伝わった。「ガンダーラ」との連続ヒットによって、ゴダイゴは一躍、国民的な人気バンドになった。