The 500 Greatest Songs of All Time : 440-431

440. Can’t Be Sure – The Sundays (1989)

イギリスはブリストル出身のインディー・ロックバンド、ザ・サンデイズのデビュー・シングルで、全英シングル・チャートで最高45位を記録した。

ヒップホップやハウス・ミュージックが新しくてカッコいい音楽とされがちであった80年代後半、イギリスのインディー・ロックですらダンス・ミュージックを取り入れたマッドチェスター系というかインディー・ダンス系に人気があった。

そのような時代において、ザ・スミス的に繊細なインディー・ロックで大注目されたのがザ・サンデイズであった。デビュー・アルバムには「天使のささやき」という邦題がつけられていたのだが、とにかく女性ボーカリスト、ハリエット・ウィーラーの歌声が素晴らしいと話題になった。

439. Making Plans for Nigel – XTC (1979)

XTCの3作目のアルバム「ドラム・アンド・ワイヤーズ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高17位を記録した。邦題は「がんばれナイジェル」である。

子供の将来の進路を親の思い通りにさせようとするプレッシャーがテーマになっていて、作詞作曲をしたコリン・モールディングの実体験に基づいているところもあるという。

この曲をシングルとしてリリースしようという構想は早い段階からあったようで、レコーディングなどもかなり念入りに行われたようなのだが、バンドのフロントマンにしてもう1人のソングライターであるアンディ・パートリッジは自分の曲が軽視されているような気分にもなっていたという。

日本のロック・バンド、Base Ball Bearがライブの出囃子に使った曲でもある。

438. Radiation Vibe – Fountains of Wayne (1996)

アメリカのオルタナティヴ・ロックバンド、ファウンテインズ・オブ・ウェインのデビュー・シングルで、バンド名がタイトルのデビュー・アルバムにも収録された。

学生時代のルームメイトであったアダム・シュレシンジャーとクリス・コリングウッドはハリー・ニルソンやエルヴィス・コステロやビートルズといった、自分たちが影響を受けたアーティストに似たタイプの曲をつくったりしていたのだが、クリス・コリングウッドがこの曲をつくった時、ついにオリジナルの音楽性を獲得したと実感したのだという。

歌詞にはそれほど深い意味はないようにも感じられるが、パワーポップのクラシックスと比較してもけして劣ることのない音楽性がとにかく素晴らしい。

ポップ・ミュージック史においてどれだけ歌われてきたか知るよしもない「ベイビー、ベイビー、ベイビー」というありふれたフレーズでさえ、この上なく最高に輝かしく聴こえてくる。

437. This Is a Low – Blur (1994)

ブラーの3作目にして全英アルバム・チャートで初の1位に輝いた「パークライフ」の収録曲で、シングルではリリースされていないもののひじょうに人気が高く、ベスト・アルバムに収録されたり、ライブでも良いところで歌われがちである。

キャッチーでコミカルなイメージもありながら、このようにシリアスな楽曲もとても良いところがブラーというバンドの奥深さであり、真髄であるともいうことができる。海上気象における低気圧の予報というポップソングとしてはなかなかユニークなテーマを扱いながら、聴く者の心の深いところに強く訴えかけてくる名曲である。

オアシスのデビュー・アルバムにブラー「パークライフ」、スウェード「ドッグ・マン・スター」、マニック・ストリート・プリーチャーズ「ホーリー・バイブル」、パルプ「彼のモノ♥彼女のモノ」などがリリースされた1994年はイギリスのインディー・ロック好きにとって最高の年だったような気がする。

436. I Saw the Light – Todd Rundgren (1972)

トッド・ラングレンのアルバム「サムシング/エニシング?」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高16位を記録した。邦題は「瞳の中の愛」である。

90年代に日本で流行したフリー・ソウルという概念はなかなか素敵でもあり、アーティスト毎にコンピレーションCDが発売されたりもしていたのだが、ソウル/R&Bのアーティストに混じってトッド・ラングレンのも出ていたような気がする。

すべての楽器を自分自身で演奏するという現代でいうところのベッドルーム・ポップに近いことを1970年代にしてやっていたわけだが、そうかと思えばニューヨーク・ドールズの素晴らしいデビュー・アルバムをプロデュースしていたりもする。

この曲については歌詞やメロディーはもちろんのことイントロの音色や歌声など、すべてにおいて個人的にプリミティヴに訴えかけてくる要素に満ち溢れているのだが、カバーしたアーティストが高橋幸宏、高野寛、ティーンエイジ・ファンクラブなどというところも信頼に値する。「Mr.Boo!」シリーズのサミュエル・ホイもカバーしているようなのだが、聴いたことはない。

435. Sunday Bloody Sunday – U2 (1983)

U2のアルバム「闘(WAR)」の1曲目に収録され、シングルカットもされた曲である。北アイルランドでデモ行進中の市民たちがイギリス陸軍に銃撃された「血の日曜日事件」というひじょうに政治的なテーマを扱っている。

この曲がリリースされたポップ・ミュージック界というのは、良くも悪くも軽薄なノリが特徴でもあったのだが、だからこそU2の生真面目でシリアスな感じというのが際立っていたり免罪符的に機能したような印象もある。日本でいうところの尾崎豊に近いのだろうかというようなことが一瞬だけ脳裏に浮かんだのだが、おそらく完全に間違えているし各方面から怒られそうな気もするのでやめておきたい。

それにしても、メッセージ性がどうこうという以前に当時、U2の音楽というのはそれ自体としてひじょうに新しくユニークに感じられたことは事実であり、トータルとしてけして熱心なファンではない音楽リスナーにとってもけして軽視できない存在ではあった。

434. Get the Message – Electronic (1991)

ニュー・オーダーのボーカリスト、バーナード・サムナーと元ザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーによって結成されたユニットとなるとそれはまあすごいことだったのだが、おそらくそれぞれのバンドを超えることはないだろうというムードもうっすらと感じられていたような気もする。

ところがこの全英シングル・チャートで最高6位を記録したヒットシングルにおいては、懐かしいけど新しい的な化学反応のようなものが静かに発生してもいて、ポップソングとして普通にとても良い。プライマル・スクリームでおなじみ、デニス・ジョンソンも最後の方でソウルフルなボーカルを聴かせている。

個人的には「 BEAT UK」のインディー・チャート紹介でセイント・エティエンヌ「ナッシング・キャン・ストップ・アス」と同じ回に見て気に入ったため、この2曲はずっとセットで印象に残っている。

433. Follow the Leader – Eric B. & Rakim (1988)

1980年代後半にはヒップホップが最も新しくカッコいい音楽という印象で、個人的にもそれまでニュー・ウェイヴやインディー・ロックを好んで聴いていたのに、急にヒップホップのレコードを中心に買うようになったり、スニーカーやジャージなどを日常のファッションに取り入れるようになっていた。つまり節操のない軽薄なミーハーということである。

エリック・B &ラキムの2作目のアルバム「フォロー・ザ・リーダー」は衝撃のデビュー作ほどのインパクトはなかったかもしれないが、音楽的に確実に進化を遂げ、ジャンルそのものの盛り上がりを感じさせるにじゅうぶんであった。というか、純粋にただただカッコいい。全英シングル・チャートでは最高21位を記録している。

432. Unbelievable – EMF (1990)

インディー・ロックとダンス・ミュージックの融合というイギリスのトレンドを反映したようば楽曲であり、全英シングル・チャートでは最高3位を記録したが、アメリカではもっと売れて、全米シングル・チャートで1位に輝いていた。

同じ頃にやはりイギリス出身でデジロックなどとも形容されていたジーザス・ジョーンズ「ライト・ヒア、ライト・ナウ」もアメリカで大ヒットしたが、第3次ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれるところまではいかなかった。

EMFはアイドル性もあってなかなか好ましかったのだが、メンバーの1人は学校の教師になって、かつてポップスターだったことを生徒からいじられているらしい。

431. Kids – MGMT (2007)

アメリカのオルタナティヴ・ロックバンド、MGMTのデビュー・アルバム「オラキュラー・スペクタキュラー」はサイケデリックなところもありながら、音楽雑誌の記事でビリー・ジョエルやトッド・ラングレンが参照されているところにも好感が持てた。

シングルカットもされたこの曲もキャッチーでとても良く、日本では後にSALU「夜に失くす feat. ゆるふわギャング」でサンプリングされたりもしていた。