邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:180-171

180. September/竹内まりや (1979)

竹内まりやの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高39位を記録した。第21回日本レコード大賞においてはこの曲で井上望、倉田まり子、桑江知子、松原のぶえと共に新人賞を受賞している(最優秀新人賞は「私のハートはストップモーション」の桑江知子であった。

この頃の竹内まりやにはキャンパスポップスのイメージが強い。松本隆が作詞、林哲司が作曲・編曲を手がけたこの曲はシティ・ポップの名曲としても知られ、秋のはじまりと恋の終わりをテーマにした切ない失恋ソングでもある。特に借りていた辞書の「Love」の文字だけを切り取って返すのが別れの挨拶だ、というようなくだりが印象的であった。あと、イントロがとても良い。

179. 1/2/川本真琴 (1997)

川本真琴の3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

持て余した心と身体、性愛へのやみくもな衝動こそが青春なわけだが、それを饒舌で文学的かつ小娘感いっぱいに表現したとてつもなく良い曲である。

「唇と唇 瞳と瞳と手と手 神様は何も禁止なんかしてない 愛してる 愛してる」というフレーズの中に、人生で究極的に求められているもののすべてはすでに凝縮されているのではないか、とすら思える。

178. Fade Out/小泉今日子 (1989)

小泉今日子の27枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

作詞・作曲・編曲は近田春夫、アルバム「KOIZUMI IN THE HOUSE」からの先行シングルである。当時、世界のポップ・ミュージック界におけるトレンドの最先端であったハウス・ミュージックをトップアイドルに歌わせてみるという実験、しかも「Ah 今頃Discoでは」以下では、歌謡曲的な下世話さもしっかりキープされているところがとても良い。カッコいいとしか言いようがない。

177. 彼女とTIP ON DUO/今井美樹 (1988)

今井美樹の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位を記録した。作詞は秋元康、作曲は上田知華で、資生堂の秋のキャンペーンソングであった。

ニュー・ウェイヴを標榜していたとしても、本当はコンサバティブな女の子にモテたいというのが本音で、今井美樹とはその権化のような存在であった。しかも、これはわりと切なくてヴィヴィッドな失恋ソングであることから、疎外感からくる被虐性にはかなりのものがあった。

トンガリキッズ的な音楽やファッションを追い求めている風を装いつつも、本当はこういうのがたまらなく良いな、と身もだえながら聴いていた自分自身が思い起こされる。

176. 横浜いれぶん/木之内みどり (1978)

木之内みどりの11枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高28位を記録した。

曲はそれほどヒットしていないのだが、グラビアや司会業などでは大活躍していた木之内みどりの、これは最もヒットした曲であろう。アイドルとして人気があったにもかかわらず、作曲家の後藤次利を負って海外へ恋の逃避行、その後に引退というプロ意識的にはどうなのだろうという案件なのだが、個人的には自らの欲望に正直という点において、好感度が爆上がりでしかない。

そして、ボーカルがウェットで遊び人ぽくもあり、たまらなく良い。個人的に1970年代のアイドルの中では、結局のところ木之内みどりが最も好きなのである。それだけに1990年代初期に六本木WAVEで働いていた頃、夫の竹中直人と買物をするプライベートの姿を見た時の感激はひとしおであった。

175. あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう/岡村靖幸 (1990)

岡村靖幸の13枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録した。傑作アルバムとして評価されがちな「家庭教師」からの先行シングルとしても、かなりの一般大衆的な支持を得ていたのではないか、という気がする。

タイトルがもうすでにすべてをあらわしているのだが、男というものは結局のところ、「あの娘だけの汗まみれのスター」になりたくて生きているのではないか、という気分が少なくとも個人的にはひじょうに強くあり、賛同を得られたり得られなかったりはまあするのだが、そのような想いに寄り添う最高のラヴソングなのではないかと思ったりはする。

174. ナイトクルージング/フィッシュマンズ (1995)

フィッシュマンズの素晴らしいアルバム「空中キャンプ」からの先行シングルで、オリコン週間シングルランキングにはランクインしていない。

レーベルをポリドールに移籍してから最初のシングルでもあり、レゲエやダブの要素を取り入れたユニークな音楽性はさらに空間的な広がりと浮遊感を増し、まるで彼岸からの音楽のようでもある。

「Up and down, up and down. Slow, fast! Slow, fast!」と歌われるそれは、人生そのもののことなのではないか、と感じたりもする。

173. Magic Motion No.5 (2019Remodel)/WHY@DOLL (2019)

WHY@DOLLのラストアルバム「@LBUM~Selection 2014-2019~」に収録されている曲で、2014年にオリコン週間シングルランキングで最高13位を記録したシングル「Magic Motion No.5」をリモデルしたものとなっている。

エレクトロニックなサマー・ディスコ・ポップで、キュートなボーカルが弾けまくる。ライブでも大切に歌い続けられ、親しまれてきた楽曲を、集大成的に歌い直した結果、とても素晴らしい仕上がりとなっている。

172. 今宵の月のように/エレファントカシマシ (1997)

エレファントカシマシの15枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位のヒットを記録した。

1988年の衝撃のデビュー以降、注目はされながらもセールス的には苦戦し、孤高の存在という感じだったのだが、テレビドラマ「月の輝く夜だから」の主題歌としてオファーを受け、書き下ろされたこの楽曲にはそれまでにないキャッチーさがあり、それでいてバンドの個性は生かされていた。

バンドにとって初の大ヒット曲となり、これによって一般大衆にもその存在が知られるようになっていった。

171. Baby Don’t Cry/安室奈美恵 (2007)

安室奈美恵の32枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

音楽的にはヒップホップやR&Bの要素を取り入れた切ないながらも力強いトラックが印象的であり、「散々でも前に続く道のどこかに望みはあるから」と、大人でもグッとくる応援ソングとなっている。

この曲のヒットから、安室奈美恵の第2期ブレイクがはじまったともいえる。

https://youtu.be/i8B7PIiznqg