邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1993, Part.2

エロティカ・セブン/サザンオールスターズ(1993)

サザンオールスターズの32作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングではCHAGE&ASKA「YAH YAH YAH/夢の番人」、B’z「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」、THE 虎舞竜「ロード」に次ぐ4位を記録した。

「素敵なバーディー (NO NO BIRDY)」とのシングル2作同時リリースだったが、こちらの方がかなりよく売れていた。WAVEが1階に入っていた渋谷LOFTの店頭で当時3名ぐらいの店員が販促を行っていたのだが、ラジカセからこの曲のイントロが流れる度に女性スタッフたちが陽気に踊っていたことなどが思い出される。

「熱い乳房を抱き寄せりゃ 自分勝手に空を飛ぶ」「恋人同士だから飲む ロマンティックなあのジュース」とあからさまに性愛をテーマにしているのだが、「涙を見せぬように生きていたいだけさ」などと歌われてもいる。

天気読み/小沢健二(1993)

小沢健二のソロデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高17位を記録した。

この2年前に人気も評価も絶頂期に突然解散したフリッパーズ・ギター時代と比べるとよりJ-POP的になっているが、この頃にはまさか後にあれほど開かれた感じになるとは予想されていなかった。

個人的にローソン調布柴崎店での深夜アルバイト中にやたらとよくかかっていたことで強く印象に残っているのだが、客としてよく来店していた女子大生と付き合う少し前に、友人と小沢健二のライブに行ってきたという話などをしていたことなども懐かしく思い出される。

「ほんの少し傷つけあうために待っている恋人同士と何言ったって裏返っていく彼や彼女」「君にいっつも電話をかけて眠りたいよ 晴れた朝になって君が笑ってもいい」などのフレーズにやはり天才的だなと感じ入ったり、少し前にインコグニートがアシッドジャズ的なカバーバージョンがJ-WAVEや六本木WAVEなどでは大ヒットしていたスティーヴィー・ワンダー「くよくよするなよ」を思い起こさせるところもあるな、などと感じてもいた。

真夏の夜の夢/松任谷由実(1993)

松任谷由実の24作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで2週連続1位、年間シングルランキングで8位を記録した。

テレビドラマ「誰にも言えない」の主題歌に使われ、1975年の「あの日に帰りたい」以来、ソロアーティストとしては17年ぶり2作目のオリコン週間シングルランキング1位獲得曲で、初のミリオンセラーとなった。

昭和歌謡的なテイストも感じられる軽快なポップソングで、夢見心地な恋の気分も感じられてとても良い。

THE SUN IS MY ENEMY 太陽は僕の敵/Cornelius(1993)

Corneliusこと小山田圭吾のソロアーティストとしては最初のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高15位を記録した。

音楽的には小沢健二のソロよりもよりフリッパーズ・ギターの延長線上にあるような気も個人的にはしていたのだが、それはフリッパーズ・ギターをどのように聴いていたかにもよるのかもしれない、と感じたりもする。

それはそうとして、小沢健二が当時のインタビューでフリッパーズ・ギターの歌詞とピチカート・ファイヴの曲が好きな人がつくった曲みたいだというような感想を述べていたような気もするのだが、気のせいかもしれない。

いずれにしても個人的には当時、小山田圭吾を完全にアイドル視はしていたので冷静な判断はそれほどできず、渋谷や幡ヶ谷のカラオケボックスで深夜や明け方に「街に明かりが昇る頃に僕は眠るのだろう Ah 僕等の莫迦らしい話 朝まで続くはずさ」などと悦に入って歌っていたことなどが思い出される。

渋谷で5時/鈴木雅之、菊池桃子(1993)

鈴木雅之と菊池桃子のデュエットソングで、鈴木雅之のアルバム「Perfume」に収録された後、シングル「違う、そうじゃない」との両A面シングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高9位を記録した。

90年代前半の渋谷といえば「渋谷系」かもしれないのだが、それと同時にというか一般的にはコンサバティブなリーマンやOLがメインの街という印象の方が強く、この楽曲はその後者の方を象徴しているように思える。

つまり、「渋谷系」とは別ベクトルの渋谷ソングという印象があったのだが、後に元ピチカート・ファイヴの野宮真貴が「渋谷系」ソングとしてカバーしたりしたことにより、もしかすると「渋谷系」なのかもしれないと感じてきたりもしているのだが、曲として良ければ別にどちらでも良い。

菊池桃子のウィスパー気味のボーカルはいま改めて聴き直すと、尊さがさらにヴィヴィッドに実感できる。セリフパートもとても良い。

TRUE LOVE/藤井フミヤ(1993)

藤井フミヤのソロアーティストとして2作目、チェッカーズ解散後では最初のシングルで、オリコン週間シングルランキングで5週連続1位を記録した。

テレビドラマ「あすなろ白書」の主題歌で、結婚披露宴でもよく歌われがちなラヴソングとしてよく知られる。アレンジはシンプルで、それだけに藤井フミヤのボーカリストとしての魅力がストレートに伝わってくる。

個人的にはとあるCDショップの店員だった頃に藤原ヒロシと一緒に来店した藤井フミヤがビートルズのBOXセットのようなものを買って、他にもまだ店内を見るので一旦カウンターに預けるのだが、その後忘れて帰ってしまい、翌日に電話があった時に偶然にそれを取って感激したことが思い出される。

接吻 kiss/オリジナル・ラヴ(1993)

オリジナル・ラヴの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高13位を記録した。

日本テレビ系のドラマ「大人のキス」の主題歌として制作されたようなのだが、2003年に中島美嘉によるカバーバージョンがオリコン週間シングルランキングで最高4位を記録するなどを経て、いまやJ-POP史に残る名曲の1つとして知られる。

メジャーデビュー時にはよりクールでスタイリッシュでスノビッシュなイメージも強かったのだが、絶妙な大衆性が加わるとそのポップミュージックとしての強度は絶大であり、その良さがフルに発揮された楽曲だともいえる。

フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴと並び、「渋谷系」を代表するバンドとして見なされがちだが、田島貴男がそれを強く否定したことなども思い出される。

Bomb A Head!/m.c.A・T(1993)

m.c.A・Tのデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高27位を記録した。

タイトルは英語よりもカタカナで「ボンバヘッド!」と発音したくなってしまう。

元々はVシネマ系のダンスミュージカル映画「ハートブレイカー ~弾丸より愛を込めて」関連の楽曲として制作されたということなのだが、後にエイベックスからリリースされ大いに注目をあつめる。

ダンスミュージックの要素やラップを取り入れた楽曲で、ハイトーンなボーカルにもインパクトがあった。

個人的には明大前の雑居ビル地下にあったカラオケ店(カラオケボックスではない)でお調子者の大学生が歌い、店員がやる気なさそうにタンバリンを鳴らしていたことなどが思い出される。

また、m.c.A・Tこと富樫明生は北海道教育大学旭川校卒業ということなので、もちろんそういった意味での個人的な思い入れもマイルドにある。後にDA PUMPのプロデュースなども手がける。

ロマンスの神様/広瀬香美(1993)

広瀬香美の3作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで3週連続通算4週1位、1994年の年間シングルランキングではMe.Children「innocent world」に次ぐ2位を記録した。

スキー用品販売チェーン、アルペンのCMソングに使われ、大ヒットした。恋愛至上主義的なバブルの残り香のようなものが、もはや絶妙に良い意味での下世話さとしてスパークしていて、「週休二日 しかもフレックス」だとか「今夜 飲み会 期待している 友達の友達に」といった卑近さを「Boy meets girl」「勇気と愛が世界を救う」といったエバーグリーン感に強引に接続している力技感にすごみを感じる。

音楽的な基礎体力とボーカルパフォーマンスにも圧倒的なものがあり、このポジティビティーはいまや実に貴重だといえるかもしれない。

東京は夜の七時/ピチカート・ファイヴ(1993)

ピチカート・ファイヴの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高50位を記録した。

タイトルは矢野顕子のライブアルバム「東京は夜の7時」に由来し、フジテレビ系の子供向け番組「ウゴウゴルーガ2号」のオープニングテーマソングとして起用された。

「渋谷系」アンセムとして知られ、表層的なきらびやかさに裏側にあるこの輝きがけして永遠ではないことによる哀しい予感をすら内包しているようにも感じる。

特に「待ち合わせたレストランはもうつぶれてなかった」のくだりである。

個人的にはこの曲がリリースされた年のクリスマスイブに当時付き合っていた女子大生とおしゃれをして渋谷に出かけたのだが、その時に食事をしたレストランももうとっくにつぶれれすでに存在していない。