Real Life POP Top 10 (july 30, 2023)

「心のベストテン 第一位はこんな曲だった」的なことを急激にやりたくなる周期が久々に訪れたのでまずはやってみるのだが、おそらく飽きた瞬間に予告もなくこっそりやめる予感でいっぱいである。要はその時にリアルタイムで気に入っている楽曲をランキング化してカウントダウンしながら感想なども書いていくというそういうやつである。

10. ファジーネーブル/Conton Candy

Conton Candyは軽音楽部出身のガールズロックバンドで、いろいろシリアスな状況を乗り越えてきたりもしているのだが、今年の4月にリリースしたこの曲がTikTokの影響などもあって広く聴かれるようになったような印象がある。このご時世に清々しいまでのインディー・ポップ的なギターロックで、なかなかうれしくなってしまうわけだが、しかも切ない片想いを歌った名曲であり、個性的なボーカルの魅力もフルに生かされている。

それで、ミュージックビデオもあるわけだが、曲はとても切なくて最高ではあるものの、音楽をとても楽しそうにやっている様子がうかがえ、そこにもひじょうに好感が持てる。ちなみにタイトルの「ファジーネーブル」というのは甘いカクテルの名称であり、ピーチ・リキュールとオレンジ・ジュースを混ぜ合わせたようなものである。

9. fake face dance music/音田雅則

音田正則は2003年生まれのシンガーソングライターで、SNSでは楽曲を発表し続けることによって注目をあつめるようになった。

シティ・ポップブーム以降のナチュラルに都会的なセンスとベッドルーム・ポップ的なサウンドが特徴的ではあるのだが、それに加えて絶妙に刺さる歌詞というのが大きな魅力でもある。

タイトルからしてとても良い感じのこの楽曲においては、「洒落た夜に流れたメロディー」と舞台設定をした後に、「守るとか、君しか見てないとか言われても信用ないなぁ」「純愛なんてさ 信じてたのに 本命じゃなくて浮気女側」といったリアルで本気の現実が歌われたりもしてたまらないのだが、この掃きだめのような世界において、何度無残に裏切られたとしても、やはり信じるに足るのは本当にあるのかどうかすらよく分からない真実の愛とでもいうようなものなのだろうか、ということを現在の感覚でポップ・ミュージック化した最高の楽曲である。

まったくの余談だが、最近LINEを交換したとある20代女子がプロフィールにこの曲を設定していたのでとても良かった。

8. TATTOO/Official 髭男 dism

先日、「日経エンタテイメント!」なる雑誌を必要に迫られてパラパラ見ていたところ、2023年上半期で最もヒットした楽曲はOfficial 髭男 dismが昨年の秋に発表した「Subtitle」であるということが分かった。

この曲はすでに2023年の夏になった現在でもよく聴かれれているし、実際にとても素晴らしいのだが、2023年4月21日にリリースされたテレビドラマ「ペンディングトレイン」主題歌のこの曲もかなり良い。

「Pretender」「宿命」などで大きくブレイクしたのが2019年で、当時からその音楽性のたかさには定評があったが、オールドタイプな音楽リスナーからしてみるとやや優等生的に感じられなくもないようなところも正味の話、あったのではないかというような気もする。

しかし、そのような偏見や先入観のようなものを軽々と超えるべく優れた楽曲の数々を発表し、圧倒的な支持をあつめ続けているので本当にかなりすごいということができ、しかも楽曲自体がとても良いのに加え、歌われている内容がおそらく現在を生きる人々には刺さりがちで、キラーフレーズの連発であったりもする。

必然的に生きざるをえないこの時代に対しての諦念とでもいうべきものがベーシックにありながらも、その上で大切にすべき人との関係性について、シンプルなようでいてとても深いことが歌われている。

「愛 ジョーク それとたまにキツめのネガティブ」というようなフレーズにますはやられるし、かと思えば「大丈夫」と「ハイボール」で韻を踏んでいたり、「情け容赦ない時代のバッドワードがひょんな時に僕らの事を脅かす時には」以下のくだりなど、時代の気分のすくいあげ具合でいうと、たとえば1980年代のサザンオールスターズあたりに匹敵するか、もしかすると超えているかもしれないと思わされたりもする。

7. 美しい鰭/スピッツ

2023年上半期のヒット曲といえば、新進気鋭のアーティスト達によるものがほとんどである。最新のポップ・ミュージックは若者のものであった方がより理想的であり、同時代性はかなり肝心だといえる。

そうなってくるとわりといい大人であるにもかかわらず、最新のポップ・ミュージックに興味をひかれ続けている状態には、老いや死に対する恐怖であったり何やら深刻な事情が関連しているのではないか、というようなことが心配になってきたりもする。

そこで、個人的にほぼ同世代であるスピッツのこの曲がヒットしたことは、わりと好ましい事象ではある。映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影」の主題歌だったとしてもである。

「びっくらこいた展開」などというデジタルネイティブのZ世代からしてみると、かなりかけ離れた感もある言語感覚が見受けられたりもするのだが、この曲は若い世代の音楽リスナーにも実際によく聴かれている。無理して若ぶろうとは特にしているようでもなく、楽曲にはベテランならではの円熟味すら感じられたりもするのだが、それでいて感覚的にはとても若々しいところが良いのだと思う。

1990年代半ばにスピッツがブレイクした時の個人的な感想というのが、こんな何の派手なギミックもなく、ただただ曲と演奏と歌が良いだけのギターロックバンドが普通に売れてしまうとは、実に良い時代になったものだ、というようなタイプのやつであった。それが30年近く経った現在もまだ続いているというのは、これは本当にどえらいことである。

6. Eve, Psyche & The Bluebears’s wife/LE SSERAFIM

LE SSERAFIMはル・セラフィムと読むK-POPのガールズグループであり、元HKT48の宮脇咲良など2名の日本人が在籍していることでも知られ、2022年には「NHK紅白歌合戦」にも出演している。

とにかく楽曲とパフォーマンスがカッコよく、韓国でも大人気である。宮脇咲良はサクラや愛称のクラオンニとしても知られ、グループの最年長メンバーでありビジュアル面を牽引する存在としても認知されがちである。メンバー同士の仲がひじょうに良く、特に最年長のサクラと最年少のホン・ウンチェとの関係性が素晴らしく、クラウンズなどと呼ばれたりもしている。

と、ここまで書いてきてやんわりとバレているかもしれないのだが、LE SSERAFIMの楽曲がとても良くてはじめは好きになったものの、その後にいろいろ情報をあつめていくにしたがって、完全にいろいろ沼りはじめているといえる。

グループ名は「I’M FEARLESS(私は恐れない)」のアナグラム、この楽曲にも女性の権利を主張するようなところがありとても好ましい。HKT48時代にすでにかなり人気があったにもかかわらず、より高みを目指して自らK-POPグループでのデビューを志したサクラのストーリーにも胸が熱くなるものがあるのだが、それはさておき楽曲がとにかくとても良い。

5. 青のすみか/キタニタツヤ

キタニタツヤは1996年生まれのシンガーソングライターで、中学生時代にASIAN KUNG-FU GENERATIONのコピーバンドを結成したり、いろいろと音楽活動をやった末に、ボカロPやヨルシカのサポートメンバーとして知られるようになっていった。

この曲は人気テレビアニメ「呪術廻戦 懐玉・天祈」のオープニングテーマ曲としてかなり広く聴かれ、大ヒットもしている。夏を感じさせる快活なポップスでありながら、ルーツにギターロックがあることが感じられ、そこはかとなく感じられるあきらめ切れていないノスタルジーのようなものがとても良い。

コーラスに学校のチャイムのようなメロディーが取り入れられていたり、そもそも「青のすみか」というタイトルそのものが実に秀逸であり、「今でも青が棲んでいる」「『また会えるよね』って」などのフレーズがただただ切ない。

4. Seven/JUNG KOOK & Latto

言わずと知れた韓国の超大人気音楽グループ、BTS(防弾少年団」のメンバー、ジョングクによるソロデビューシングルで、アメリカのラッパー、Lattoをフィーチャーしている。

暑い夏の日に清涼感をあたえてくれるサウダージ気味なギターにヒップホップ的なビート、タイトルの「Seven」は1週間の日数でもあり、やはり曜日が次々と歌われていく。ボーカルやラップにコンテンポラリーなポップ感覚があり、ノスタルジックなムードもある楽曲を懐かしくさせすぎていないところがとても良い。

3. アイドル/YOASOBI

YOASOBIの大ヒットシングルで、テレビアニメ「推しの子」のオープニングテーマ曲である。とにかくヒットしまくったのみならず、楽曲のクオリティー的にも2023年上半期においてはぶっちぎりダントツなのではないか、と感じられる。

そもそもYOASOBIというユニットはそれぞれメインの音楽活動を別でやっているAyaseとikuraがソニーミュージックが運営するサイトに投稿された小説を音楽にするというコンセプトのために結成された課外活動的なものであり、ユニット名にもそれが反映されている。

それで、いきなり「夜を駈ける」という日本のポップ・ミュージック史に残るであろう超名曲を大ヒットさせた後も素晴らしい楽曲を発表し続け、さらにはこのシングルである。

YOASOBIの特徴であるシンセポップというかEDMというか、とにかく電子音楽的な楽曲でありながら、アイドルをテーマにしたテレビアニメの主題歌ということで、アイドルファンが盛り上がりやすいところもあり、しかもレコーディングにはアイドルヲタクであることを売りにしているユニットを起用するなど、かなり丁寧につくられている。

ラップパートなども含め、Ikuraのボーカルパフォーマンスもこれまでの楽曲から予測できた範疇を遥かに超えていて、変幻自在でありながらとにかく超ポップという天才的なものである。

楽曲そのものがアイドル論のようなものにもなっていて、単体でもかなり楽しめるのだが、テレビアニメ「推しの子」の内容にガッツリ沿ってもいて、リスナーの度合いによっては何重にも楽しめるようになっている。

2. Magic/Mrs. GREEN APPLE

Mrs GREEN APPLEの最新アルバム「ANTENNA」からの先行シングルとしてリリースされ、コカコーラとのタイアップも付いていた。

とにかくいまどきの若者たちから絶大な支持を得ているバンドであり、ポップでキャッチーでありながら、わりと刺さることを歌っている曲もある。そして、ソングライターにしてボーカリスト、大森元基のボーカルが地声でもファルセットでもとにかく最高である。

この曲はそんなボーカルの魅力が存分に生かされているのみならず、音楽的にもイントロからまずケルト的な音色やフレーズが印象的だったり、陽のイメージがなんとなく持たれがちでありながら、ちゃんと陰に寄り添っていたりもして、聴けば聴くほど味わい深さが増していくとは間違いなくいえるのである。

1. Super Shy/NewJeans

2022年にデビューして大人気になった韓国のガールズグループ、NewJeansの最新EP「Get Up」から先行リリースされたがっ楽曲である。

とにかくこれこそがいま現在におけるポップそのものであるといっても過言ではないほどの、大ブレイク組である。楽曲やパフォーマンスの良さに加え、メンバーそれぞれのキャラクターの個性やファッションセンスなどにも注目されがちである。

今回リリースされたEPは6曲入りで、計約12分。つまり、1曲がとても短い。これはTikokやショート動画が全盛な時代ならではなのだろうか。それでも6曲それぞれバラエティーにとんでいるし、他の曲と被るということがほとんど考えられない。

1991年にコーラ・ボーイ「7ウェイズ・トゥ・ラヴ」やクリスタル・ウォーターズ「メイキン・ハッピー」といったダンスヒットを聴いて良い気分になっていた頃の、イージーでリラクシンな気分が甦ってくるようである。それでいて、どことなく切ないところもあるのがまたかなり良い。

約2分35秒という短さも含め、いまどきのクールネスとかトレンド感とでもいうようなもののエッセンスがこの楽曲やビデオに凝縮されているような気もする。