Real Life POP Top 10 (August 19, 2023)
2023年の夏は暑くて最高なのに加えて、ほとんど毎日、渋谷にいるのとその他の理由などによって基本的にはとても良い。それで、この「心のベストテン 第一位はこんな曲だった」的なランキングも奇跡的に4週間も続いている。毎週それほど変わり映えがしていないのではないかというような気もなんとなくはしているのだが、たとえば1980年代の「ザ・ベストテン」や「全米トップ40」のような感じが念頭にあるため、おそらくこんなものである。
それで最近はほとんどメジャーにヒットしているであろう楽曲しか聴いていない状況をダイレクトに反映しているとは思うのだが、これこそがリアルな日常のサウンドトラックとして記録され、いつか暇つぶしに振り返るとすれば、記憶の瞬間冷却パックを解凍していくものだと思われる。
10. 燈/崎山蒼志
テレビアニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」のエンディングテーマ曲である。渋谷区宇田川町あたりでもガンガン流れているのだが、アニメのイメージとは切り離されていているような印象も受ける。
とはいえ、歌詞の内容はアニメと関連していて、特に登場人物である夏油傑(げとう・すぐる)の心情に寄り添ったものであり、タイトルは「あかり」と読む。
アレンジ面では様々な実験が行われていながらも、キャッチーなボーカル曲としての完成度がひじょうに高い。今後、日本のポップミュージックの最新型を劇的に更新していくかもしれない重要アーティストの1人としての期待を高めるにはじゅうぶんな楽曲だということができる。
9. 怪獣の花唄/Vaundy
2020年5月11日にリリースされてからかなりの年月が経っているのだが、いまだにかなり聴かれ続けている、Vaundyによるロック色が濃い楽曲である。
というか、リリース当時はそれほどではなかったものの、少しずつ人気が出てきて、2022年暮れの「NHK紅白歌合戦」でパフォーマンスして以降はさらに一般大衆レベルで拡散していった印象である。
キャッチーで聴きやすいロックチューンではあるのだが、過去の好ましくも心に強く残っている記憶をノスタルジーにしたくはないというような葛藤が感じられもして、そこが色々な人たちの心の琴線にふれがちなような気もする。
8. サマータイムシンデレラ/緑黄色社会
テレビドラマ「真夏のシンデレラ」の主題歌である。フジテレビ系で月曜の夜9時から放送されるいわゆる「月9」ドラマということで、メジャー感が漂っている。
長屋晴子のボーカルがとにかく安定して上手いのだが、暑苦しくなく涼しげでありながら満足度も高いという、大衆ポップシンガーとしてのバリューを実現している。
渋谷はもはや広告の街ともいうことができ、それについていまさらどうこういうつもりもなく、自分の中にあるエッジが錆びついた懐古趣味の類いを明確に敵対視している昨今なのだが、宇田川町の路上でもこの曲はよく流れているような気がする。
7. 青と夏/Mrs. GREEN APPLE
Mrs. GREEN APPLEが2018年にリリースしたシングルである。現在は3人組だが、当時は5人組であった。いわゆるフェーズ1期の代表曲である。というか、もはや夏の定番ソングとして定着しまくっていて、各社配信ランキングでも軒並み上位にランクインしている。
ポップでキャッチーきわまりない楽曲に、生きづらさ的な要素もちゃんと含まれているところがこのバンドの楽曲の素晴らしさなのだが、夏をテーマにした快汗ロックとでもいうべきこの曲においても、この素晴らしい時間もいつかは忘れられてしまうのだという真実や、大人になってしまうことに対しての不安なども歌われ、それを踏まえても夏を満喫していこうという感じがとても良い。
6. アイドル/YOASOBI
テレビアニメ「【推しの子】」のオープニングテーマソングで、2023年上半期からアニメの放送がとっくに終わっている現在に至るまで聴かれまくっている言わずと知れた大ヒット曲である。
YOASOBIの楽曲としてもこれまでの作品とはアプローチがかなり異なっていて、テレビアニメの内容に合わせてアイドルポップス的なお決まりのリズムを導入したり、Ikuraのボーカルパフォーマンスが変幻自在だったり、情報量が驚異的なので、何度も聴いているのだがまったく飽きることがない。いまだにずっとヒットし続けているということは、そのように感じているリスナーがじぇあいて少なくはないということなのだろう。
個人的には大宮アルシェの店内で流れているのを聴いた時の記憶が、いかにも大衆ポップスという感じで強く印象に残っている。
5. Magic/Mrs. GREEN APPLE
Mrs. GREEN APPLEの素晴らしいアルバム「ANTENNA」からの先行配信トラックで、コカ・コーラのCMソングでもある。
メジャー感溢れるとてもポップでキャッチーであり、夏らしくもある楽曲なのだが、「Ah, 苦い苦いの 私由来の無駄なダメージ」と歌いはじめられるように、けしてイケイケな状態をテーマにしているわけではない。
むしろ色々としんどいことだらけの現状ではあるのだが、肯定感を上げていこうというようなメッセージが込められているように感じられる。
ケルト音楽や80年代のニューウェイヴなど、様々な音楽からの影響が感じられ、ファルセットを効果的に用いた大森元基のボーカルパフォーマンスも骨太なポップ感覚で満ち溢れている。
4. 青のすみか/キタニタツヤ
「呪術廻戦 懐玉・玉折」のオープニングテーマソングで、切なさまじりのサマーポップチューンとでもいうべき情緒が濃密でありながら爽やかに感じられる素晴らしい楽曲である。
ロックがベースにはあるのだが、その他の様々な要素が組み合わされて、最新型のポップミュージックとして楽しめるようになっているのと、勢いがあったり寂寥感のようなものを感じさせたり、夏のはじまりから終わりに至るまで、それぞれの感覚と共に聴くことができそうでもある。
アニメ視聴者であればもっと深く味わえるところもあるのだが、その要素を抜きにしたとしてもとても良く、2023年の夏を代表するヒット曲の1つとして記憶され続けていくようば気もする。
3. Super Shy/NewJeans
韓国のガールズポップグループ、NewJeans(ニュージーンズ)はいま現在を最もヴィヴィッドに感じさせてくれるアーティストの1つである。
2023年7月にリリースされた6曲入りEP「Get Up」は軽やかなところが夏らしくてとても良く、しかも通して聴いても約12分間というコンパクトさながら、満足度がひじょうに高い。
この曲はEPからの先行トラックとして配信され、とてもシャイなので好きな人に気持ちをうまく伝えられないとか、あの人は私の名前すら知らないとか、そのようなことが歌われているのだが、サウンド全体やミュージックビデオなどで見られるパフォーマンスからは現在の社会が必要としているであろうクールでスマートなポジティヴィティーのようなものがヴィヴィッドに感じられたりもする。
2. ETA/NewJeans
NewJeansのEP「Get Up」収録曲で、iPhone 14 ProのCMでも使われた。
ジャージークラブ的なホーンのフレーズが繰り返されたりするのと、ナチュラルでブリージーなボーカルパフォーマンスとの組み合わせがとても良い。
恋人の浮気を告発したり、ガールズパワーでセルフエンパワメントなメッセージ性も感じるところがいまどき的でありながら、好ましい系譜に連なっているようでもあってとても良い。
1. Seven/JANG KOOK & Latto
韓国の超人気グループ、BTS(防弾少年団)のメンバー、JANG KOOKのデビューシングルで、アメリカのラッパー、Lattoをフィーチャーしている。全米シングル・チャートで1位に輝くなど、世界的な大ヒットを記録している。
ネオアコースティック的ともいえるギターがなんとも涼しげでリズムはUKガラージ的だったり、月曜から日曜までいつ何時でも一緒に過ごしたいというような熱愛的情緒がクールでありながらエモーショナルに歌われていてとても良い。
3週連続1位ということでなんとも変わりばえがしないわけだが、実際にこの夏この曲を最も気に入り続けているので仕方がない。