ジョー・ジャクソンの名曲ベスト10【Artist’s Best Songs】

ジョー・ジャクソンは1954年8月11日にイギリスに生まれ、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックに奨学生として入学し、クラシック音楽を勉強したりもしていたのだが、やがてポピュラー・ミュージックに興味を持ちはじめ、1979年にはアルバム「ルック・シャープ!」でデビューし、ニュー・ウェイヴ系のアーティストとして認識される。その後、ジャズやラテンなど様々なジャンルの音楽を取り入れたユニークな楽曲を次々と発表していく。都会的な洒脱さと乾いたユーモアのようなものも感じられるジョー・ジャクソンの音楽は、ややユニークな受け入れられ方をしていたような印象もある。今回はそんなジョー・ジャクソンの楽曲から、これは特に名曲なのではないかと思える10曲を挙げていきたい。

1. Steppin’ Out (1982)

1982年のアルバム「ナイト・アンド・デイ」はアナログレコードでいうところのA面がナイト・サイド、B面がデイ・サイドのコンセプト・アルバムで、イギリスのみならずアメリカでもヒットした。「夜の街へ」の邦題でも知られるこの曲はアルバムからの最初のシングルとしてリリースされ、全米、全英、いずれのシングル・チャートでも最高6位のヒットを記録し、グラミー賞でも2部門にノミネートされた。ニューヨークの街をテーマにしていて、この年の夏に撮影されたというミュージック・ビデオもとても良い感じである。打ち込みのリズムやシンセサイザーと美しいピアノのフレーズ、クセがあるが都会的な洒落っ気を感じさせもするボーカルが相まって、夜の街に繰り出す時のわくわくするような気分が再現されている。

2. Is She Really Going Out With Him? (1978)

ジョー・ジャクソンのデビュー・シングルで、後にファースト・アルバム「ルック・シャープ!」にも収録された。1978年の秋にリリースされた時にはヒットしなかったが、イギリスのニュー・ウェイヴが注目をあつめるにつれ少しずつ話題になり、最終的には全英シングル・チャートで最高13位、全米シングル・チャートで最高21位のヒットを記録した。邦題は「奴に気をつけろ」である。美しい女性が醜い男性と一緒に歩いているのを見ることによって生じた違和感について歌われているのだが、ニュー・ウェイヴ的なサウンドとシニカルで不穏で適度にユーモラスな感じがとても良い。

3. It’s Different For Girls (1979)

ジョー・ジャクソンの2作目のアルバム「アイム・ザ・マン」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高5位を記録した。これは全英シングル・チャートでジョー・ジャクソンが記録した最高位だが、全米シングル・チャートでは最高101位に終わっている。シンプルなニュー・ウェイヴ的なサウンドにのせて歌われているのは、恋人との間の愛をめぐる疑念のようである。

4. You Can’t Get What You Want (Till You Know What You Want)

(1984)

ジョー・ジャクソンが1984年にリリースしたアルバム「ボディ・アンド・ソウル」は、ソニー・ロリンズをパロディー化したようなジャケット写真からしてすでにジャズの要素が強くなっていることを予感させた。先行シングルとしてリリースされたこの曲はホーンセクションやスラップベースのサウンドも心地よいキャッチーさが魅力で、全米シングル・チャートで最高15位を記録した(全英シングル・チャートでは最高77位に終わっている)。

5. Breaking Us In Two (1982)

アルバム「ナイト・アンド・デイ」のB面というかデイ・サイドの1曲目に収録された曲で、邦題は「危険な関係」である。ヒットした「夜の街へ」に続いてシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高18位を記録した。日本では「夜の街へ」とのカップリングでシングル・カットされていて、なかなかお得だった。スキャンダラスな方面での危険さではなく、絶妙に危うい恋人との関係を歌った都会的で大人な楽曲である。

6. Be My Number Two (1984)

アルバム「ボディ・アンド・ソウル」からシングル・カットされたが、全英シングル・チャートでの最高位は70位とそれほどヒットしていない。しかし、評価はわりと高く、いかにもジョー・ジャクソンらしいひねりの効いたラヴソングだということもできる。まずは、私のNo.2になっておくれ、などということを言われて良い気がする相手というのもそれほどいないような気もするのだが、その奥底にある傷つき臆病になったハートと破れかぶれにシニカルな感じが味わい深くもある。

7. Home Town (1986)

ジョー・ジャクソンが1986年にリリースしたアルバム「ビッグ・ワールド」は、ライヴ一発録りが話題となり、スタジオワークに凝りまくりがちな80年代半ばにあって、かなりストレートなアプローチを取っていたことがユニークだと見なされもした。この曲は故郷を懐かしむただただノスタルジックな曲であり、シングル・カットされるもののヒットはしなかったが、わりと人気や評価が高い。

8. Happy Ending (1984)

アルバム「ボディ・アンド・ソウル」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高58位、全米シングル・チャートでは最高57位を記録した。ゲスト・ボーカルにエレーヌ・キャズウェルを迎えた男女デュエット曲なのだが、やはり単純にハッピーでラッキーなラヴソングとはならない。現在が1984年であることが強調され、様々な不安の中でも物語がハッピー・エンドで終わることを望んでいる、というようなことが切実に歌われている。

9. Jumpin’ Jive (1981)

デビュー当時のニュー・ウェイヴ時代から「ナイト・アンド・デイ」のヒットまでの間に、ジョー・ジャクソンは様々な音楽ジャンルからの影響を取り入れたユニークな作品を発表し続けていた。1981年にリリースされたアルバム「ジャンピン・ジャイヴ」は1940年代に流行したスウィングやジャンプ・ブルースをニュー・ウェイヴ的にカバーしたご機嫌な作品で、キャブ・キャロウェイがオリジナルのこの曲は全英シングル・チャートで最高43位を記録した。

10. A Slow Song (1982)

アルバム「ナイト・アンド・デイ」の最後を締めくくる約7分以上にも及ぶラヴ・バラードである。イギリスではシングル・カットされたものの、全英シングル・チャートにはランクインしなかった。しかし、その後、ジョー・ジャクソンのライブで重要な曲になったり、評価も高まっていった。静かにはじまるのだが、次第にエモーショナルに盛り上がっていく展開が実に素晴らしく、「スローな曲をかけてくれ」という邦題もイカしている。