洋楽ロック&ポップス名曲1001:1971, Part.1

Marvin Gaye, ‘What’s Going On’

マーヴィン・ゲイのアルバム「ホワッツ・ゴーイン・オン」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高2位を記録した。当時の邦題はアルバム、楽曲ともに「愛のゆくえ」であった。

モータウンの人気アーティストとしてヒット曲を次々と生み出していたマーヴィン・ゲイはよくデュエットをしていた女性シンガー、タミー・テレルが脳腫瘍で亡くなったことにショックを受け、一時的に音楽活動を休止することになる。

その間に社会情勢の変化やベトナム戦争から復員してきた弟の話を聞くなどしているうちに、もっと社会的な音楽をやるべきなのではないかと思い、この曲が生まれたという。

洗練された美しいサウンドと強いメッセージ性が特徴のこの曲は当時の時代背景にもマッチして、たちまち大ヒットになるのだが、モータウンの社長、ベリー・ゴーディは発売に反対していたようだ。

社会の混迷がけして過去のこととはならない限り、この曲はメッセージソングとして有効であり続けるように思える。シンディ・ローパーがヒットさせたのをはじめ、様々なカバー・バージョンが存在するが、日本語のものとしては、いとうせいこうのアルバム「MESS/AGE」に収録された「WHAT’S GOING ON 〜WHAT’S GOING?」が秀逸である。

Carole King, ‘It’s Too Late’

キャロル・キングのアルバム「つづれおり」からシングルカットされ、全米シングルチャートで5週連続1位、全英シングルチャートで最高6位を記録した。グラミー賞では最優秀レコード賞を受賞している。

トニー・スターンがジェームス・テイラーと別れた後に書いた歌詞にキャロル・キングが曲をつけたものとされている。関係を続けていくにはもう遅すぎる、というような内容にキャロル・キングのアンニュイなボーカルが見事にハマっている。邦題は「イッツ・トゥ・レイト(心の炎も消え)」である。

Gil Scott-Heron, ‘The Revolution Will Not Be Televised’

ギル・スコット・ヘロンのデビューアルバム「スモール・トーク・アット・125丁目レノックス通り」に収録されたコンガとボンゴの演奏をバックにしたポエトリーリーディング的なトラックをアレンジし直し、ジャズベーシストのロン・カーターを含むフルバンドでレコーディングしたバージョンである。

当時、ヒットしたわけではないのだが、「革命はテレビで放送されない」というタイトルのキャッチーさや人種差別を告発したメッセージ性の強い歌詞、後のヒップホップへの影響などからポップミュージック史上ひじょうに重要な楽曲の1つとされている。

歌詞には当時の政治家、俳優、ミュージシャン、スポーツ選手などの固有名詞やテレビコマーシャルのフレーズなどがちりばめられている。

Carpenters, ‘Superstar’

カーペンターズのアルバム「カーペンターズ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートで最高18位、日本のオリコン週間シングルランキングでは最高7位を記録した。

作詞・作曲はレオン・ラッセルとボニー・ブラムレットで、デラニー&ボニー・アンド・フレンズの楽曲として最初に発表された。ロックスターに恋をする女性をテーマにした楽曲で、いわゆるグルーピーのことが歌われている。

ベット・ミドラーがこの曲をテレビで歌っているのを見たリチャード・カーペンターは妹のカレンが歌うのにふさわしいのではないかと考え、カーペンターズでカバーすることにしたようである。

1994年にリリースされたオルタナティブロック系アーティストたちによるカーペンターズのトリビュートアルバム「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター〜カーペンターズに捧ぐ」がリリースされ、ソニック・ユースがこの曲をカバーしていた。このバージョンは後に映画「JUNO/ジュノ」のサウンドトラックにも収録された。

Rod Stewart, ‘Maggie May’

ロッド・スチュワートのアルバム「エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー」からシングルカットされ、全英、全米シングルチャートのいずれにおいても5週連続1位、年間シングルチャートで2位(年間1位を阻んだのはイギリスではジョージ・ハリスン「マイ・スウィート・ロード」、アメリカではスリー・ドッグ・ナイト「喜びの世界」であった)の大ヒットを記録した。

フェイセズのボーカリストとしてすでに人気があったロッド・スチュワートだが、ソロアーティストとしてはこの曲が最初のヒットとなった。とはいえ、レーベルは当初、この曲がヒットするとはそれほど考えていなく、シングル「リーズン・トゥ・ビリーヴ」のB面に収録していたのだが、ラジオ局はこの曲の方を気に入り、頻繁にオンエアするようになった。

ロッド・スチュワートが16歳の頃に迎えた初体験からストーリーをふくらませた、年上の女性と関係を持つ若い男性の心情を歌った楽曲となっている。

Joni Mitchell, ‘A Case of You’

ジョニ・ミッチェルのアルバム「ブルー」に収録された楽曲の中でも特に人気が高く、プリンス、k.d. ラング、ジェイムス・ブレイク、ハービー・ハンコック、スローンなど様々なジャンルのアーティスト達によってカバーされている。

グラハム・ナッシュとの破局について歌われた楽曲だといわれているが、レナード・コーエンについても歌われているのではないかという説があったりもする。アコースティックギターを弾いているのはジェームス・テイラーである。

ポップミュージック史上、カナダという国名が最もエモーショナルに歌われた楽曲かもしれない。

The Who, ‘Won’t Get Fooled Again’

ザ・フーのアルバム「フーズ・ネクスト」に先がけてシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。邦題は「無法の世界」である。

デビュー当時のビートバンド的なイメージからこの頃になるとかなり変わってきていて、ロジャー・ダルトリーの髪は長くなり、サウンドはよりハードになり、シンセサイザーが効果的に使用されている。

革命に対する失望について歌ったこの曲を保守系のメディアが保守的なロックソング第1位に選んだことについて、ピート・タウンゼントはやはり不服そうであった。

テレビドラマ「CSI:マイアミ」のテーマソングにも起用されていた。