50 Greatest Summer Songs of All Time (10-1)
10. Sunny Afternoon – The Kinks (1966)
ザ・キンクスによる1966年夏の全英NO.1ヒットである。気だるい晴れた午後、税金が高くてしんどいということなどをテーマにしたこの曲は、レイ・デイヴィスがオレンジ色の壁と緑色の家具の部屋で体調がすぐれない中、1歳になる娘が床を這っているという状況でつくられたらしい。いかにも英国ポップスという感じのアンニュイでとても良い曲である。
9. School’s Out – Alice Cooper (1972)
学期が終わって夏休みがはじまる瞬間の解放感をポップソングというフォーマットで表現した素晴らしい曲で、全英シングル・チャートでは1位に輝いている。1976年のテキサスを舞台にした1993年の映画「バッド・チューニング」では、この曲が最高の使われ方をされていて、そのポテンシャルを遺憾なく発揮している。
8. Lovely Day – Bill Withers (1977)
80年代の全米トップ40ファンにはグローヴァー・ワシントン・ジュニアによるAORの名曲「クリスタルの恋人たち」で歌っていた人としても知られるビル・ウィザースのヒット曲で、全米シングル・チャートで最高6位を記録した。1986年のコンピレーション・アルバム「NOW-THE SUMMER ALBUM」ではヤング・ラスカルズ「グルーヴィン」、アイズレー・ブラザーズ「サマー・ブリーズ」、ビーチ・ボーイズ「ドゥ・イット・アゲイン」に続く4曲目に収録されていた。
7. It Was a Good Day – Ice Cube (1992)
アイス・キューブのアルバム「略奪者」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高15位を記録した。アイズレー・ブラザーズ「フットステップス・イン・ザ・ダーク」をサンプリングしたレイドバックしたサウンドに乗せて、良かった日について語られているのだが、その条件の一つとして仲間が誰も殺されなかったことなどが挙げられている。この曲はロサンゼルス市警の人種差別的な暴力行為をきっかけとするロサンゼルス暴動が起こった年にレコーディングされた。
6. Good Vibrations – The Beach Boys (1966)
ビーチ・ボーイズで分かりやすい夏の曲といえば「サーフィン・U.S.A.」「サーファー・ガール」といった初期のサーフィンものや「カリフォルニア・ガールズ」などが挙げやすいと思うのだが、ここではあえてより複雑な構造を持った1966年冬の全米NO.1ヒット「グッド・バイブレーション」を選んでおきたい。日本編集のベスト・アルバム「サマー・プレゼント」を録音したカセットテープを発売されたばかりの山下達郎「GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA」のそれと一緒に留萌市の黄金岬で行われたキャンプに持っていって、ラジカセで仲間たちと代わる代わる聴き続けていた1982年の夏休みが思い出される。ビーチ・ボーイズのベスト・アルバムを旭川のミュージックショップ国原で買おうと思ったきっかけは、「花の82年組」アイドルの早見優が好きなアーティストとして挙げていたことであった。
5. Hot Fun in the Summertime – Sly & The Family Stone (1969)
ファンキーでダンサブルな曲が多い印象のスライ&ザ・ファミリー・ストーンにしては、わりとリラックスした感じのシングルであり、全米シングル・チャートでは最高2位を記録している。伝説の野外イベント「ウッドストック」でパフォーマンスをする少し前に発売されたシングルでもある。タイトルにあらわれているように、夏の暑い楽しみがテーマになっている。
4. Dancing in The Street – Martha & The Vandellas (1964)
80年代にはヴァン・ヘイレンやデヴィッド・ボウイ&ミック・ジャガーのバージョンもヒットするが、オリジナルは1964年のマーサ&ザ・ヴァンデラスであり、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。ソングライティングにはマーヴィン・ゲイもかかわっている。暑い夏にストリートで踊ることについて歌われているが、その後、公民権運動のアンセムとしても知られるようになる。いわゆるモータウン・サウンドを代表する楽曲でもある。
3. Summer in the City – The Lovin’ Spoonful (1966)
夏の都会をテーマにした楽曲で、全米シングル・チャートで1位に輝いた。昼間の喧騒や暑さでうんざりする感じなどを描写した後、それでも夜にはまた違った素敵な世界が立ち現れる、というようなことが歌われている。街のノイズが効果音として使用されているのも、特徴的である。個人的には80年代にFENで初めて聴いて、すっと気になっていたのだが、1986年の夏休みに札幌の玉光堂で買った「NOW-THE SUMMER ALBUM」で手に入れることができたのでとても良かった。
2. Summertime – DJ Jeffy Jeff & The Fresh Prince (1991)
ザ・フレッシュ・プリンスこと俳優のウィル・スミスはアルバムのレコーディングが行われたシカゴからフィラデルフィアに向かう飛行機の中でこの曲を完成させたといわれているが、これが全米シングル・チャートで最高4位、グラミー賞ではベスト・ラップ・パフォーマンス賞を受賞、夏の定番ソングとしても知られるようになっていく。クール&ザ・ギャング「サマー・マッドネス」をサンプリングしたブリージィーなトラックに乗せたザ・フレッシュ・プリンスのラップはラキムを参考にしたものらしい。
1. Fight the Power – Public Enemy (1989)
パブリック・エナミーの歴史的名盤アルバム「パブリック・エナミーⅡ」と、これもまた素晴らしい次のアルバム「ブラック・プラネット」の間にリリースされたシングルで、スパイク・リー監督の映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」の主題歌であり、劇中ではラジオ・ラヒームのブームボックス(巨大なラジカセ)から幾度となく流され、そのアイデンティティーともなっていた(がゆえに終盤の悲劇へとつながっていく)曲である。この映画はアメリカでは1989年に公開され、「1989 the number another summer」、さらには「Sound of the funky drummer」とラップされているのだが、日本では翌年の公開であった。レイシズムやファシズムをはじめとする様々な問題に対しての怒りが込めらたこの曲の内容を、ボム・スクワッドのプロダクション・ワークとチャック・Dのラップが当時における最新型のレイジ・ミュージックにしてプロテスト・ソングとでもいうべきアートフォームで表現していて、その強度はリリースから30年以上が経過した現在でもけして色褪せていない。