邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2018
Lemon/米津玄師(2018)
米津玄師のメジャー通算8作目のシングルとしてリリースされ、Billboard JAPAN Hot 100では2018年、2019年の2年連続で年間1位に輝いた。オリコン週間シングルランキングでは最高2位、年間18位だったが、この頃から正式に発表されるようになったデジタルシングルランキングではやはり2018年、2019年の2年連続1位を記録した。
TBS系のテレビドラマ「アンナチュラル」のテーマソングとして書き下ろされた楽曲だが、その内容に合わせて大切な人の死がテーマになっているが、制作中に米津玄師の祖父が亡くなったことも強く影響をあたえ、「第69回NHK紅白歌合戦」出演時には祖父が暮らしていた故郷の徳島県で歌唱された。
深い喪失感をかかえたままどのように生きていくかというようなことについて、コンテンポラリーなサウンドにのせて歌われているが、「今でもあなたはわたしの光」というフレーズが救いのようにもなっているような気がする。
ストロー/aiko(2018)
aikoの38作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、Billboard JAPAN Hot 100、いずれにおいても最高6位を記録した。
「君にいいことがあるように 今日は赤いストローさしてあげる」と歌われているように、日常における小さなしあわせにこそ価値があるのではないか、というようなことがテーマになっているように思える。
「君にいいことがあるように」の後に「あるように あるように」と繰り返し歌われているところもとても良い。
常夏リターン/lyrical school(2018)
lyrical schoolのアルバム「WORLD’S END」から先行トラックとして発表された楽曲である。アルバムはオリコン週間アルバムランキングで初登場10位を記録した。
スチャダラパーのメンバーとかせきさいだぁがソングライティングに参加していて、「男子たちとかく ついつい流されちまうとか ゴタク言うけどハッキリ言っとく 女子なら最優先は美白」とスチャダラパー「サマージャム’95」のアンサー的になっているところがあったり、かせきさいだぁ「じゃっ夏なんで」のタイトルが歌詞に出てきたりもする。
他にも様々な曲のタイトルや歌詞、タイトルは大韓航空ナッツ・リターン事件のもじりになっているなどいろいろ楽しいのだが、メンバーのナチュラルな色香さえも感じさせるメロウなラップや歌がとても良い。セミの声をイメージしていると思われるサウンドがリズム楽器的に使われているのもユニークである。
青と夏/Mrs. GREEN APPLE(2018)
Mrs. GREEN APPLEの7作目のシングルで、オリコン週間シングルで最高14位、Billboard JAPAN Hot 100で最高7位のヒットを記録するのだが、その後もずっと聴き続けられていて、ヒットソングとしての現役感を長年にわたり保ち続けた状態のままサマーアンセムでありモダンクラシック化したとてつもない楽曲である。
映画「青夏 きみに恋した30日」のために書き下ろされ、主題歌に起用された楽曲で、夏のはじまりのテンションがぶち上がる感じから、こんな最高の日々もいずれは終わり忘れてしまうのだろうかというような、少し寂しげなところまでがコンパクトかつエネルギッシュに表現されてとても良い。
マリーゴールド/あいみょん(2018)
あいみょんのメジャー5作目のシングルでBillboard JAPAN Hot 100で1位、年間チャートでは2019年の2位を最高位に6年連続して50位以内にランクインし続けているが、オリコン週間シングルランキングでは最高25位(2019年のデジタルシングルランキングでは年間3位)であった。
「麦わらの帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる」のところがあまりにも有名な、サマーアンセムにしてモダンクラシックである。いつかの恋を懐かしんでいるようでありながら、現在進行形でもあるという素晴らしい内容になっている。
音楽的にもフォークやニューミュージック的な懐かしさを感じさせながらも新感覚であり、あいみょんのボーカルも聴きやすいのだが強く印象に残るという流行歌手として俄然強めなものになっている。
パプリカ/Foorin(2018)
米津玄師が作詞・作曲・編曲・プロデュースを手がけた小中学生によるユニット、Foorinの楽曲で、オリコン週間シングルランキングで最高16位、Billboard JAPAN Hot 100で最高5位を記録し、「第61回日本レコード大賞」では大賞を受賞した。
「<NHK> 2020応援ソングプロジェクト」の企画から生まれた楽曲で、メンバーはオーディションによって、あえてカラオケ的な歌い方に染まっていない子供たちが選ばれたという。
童謡のようでもあり応援歌でもある素晴らしい楽曲なのだが、サウンド的にも実験感覚がありひじょうに聴きごたえがある。
ただいまの魔法/Kaede(2018)
NegiccoのKaedeによる2作目のソロシングルで、かねてからファンであることを公言していたTRICERATOPSの和田唱が作詞・作曲・プロデュースを手がけている。
グループでは低音域を担当しているような印象もあるKaedeのボーカルにはもって聴き続けていたくなるオーガニックな魅力があるのだが、それが存分に堪能できるのみならず、「きっと永遠はおとぎ話ではなくて 愛を知った時 心に宿るのでしょう」のところなどは、永遠よりも刹那にこそ重きを置くようなタイプのリスナーさえをも納得させるだけの説得力があるようにも思える。
相模湖のレトロなゲームセンター(2023年に惜しまれながら閉店)で撮影されたミュージックビデオもとても良い。
栞/クリープハイプ(2018)
「FM802 x TSUTAYA ACCESS!」のキャンペーンソングとしてクリープハイプの尾崎世界観が書き下ろし、他にあいみょん、片岡健太(sumika)、GEN(04 Limited Sazabys)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、スガシカオからなるユニット、Radio Bestsellersによって歌われた楽曲のセルフカバーバージョンで、アルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」に収録されている。
イントロからしてドライブ感溢れるギターサウンドが素晴らしく、恋の終わりを爽やかに見送る切なくも美しい桜ソングとなっている。「句読点がない君の嘘」「後ろ前逆の優しさ」などのフレーズもいちいち刺さりまくるのだが、「今ならまだやり直せる」かと思いきや「嘘だよ ごめんね 新しい街にいっても元気でね」であり、しかし実際には「ちょっといたい もっといたい ずっといたいのにな」であるところなどもとてもよく、とてつもない名曲だということができる。
ごめんね/加納エミリ(2018)
札幌出身のシンガーソングライター、加納エミリが7インチシングルでリリースした後、「NEO・エレポップ・ガール」をキャッチフレーズとしていた頃のアルバム「GREENPOP」にも収録した楽曲である。
80年代に流行したエレポップを下敷きにした音楽なのだが、作詞・作曲・編曲から振付まで自ら行っていることで話題になっただけあって、解釈が新感覚でとても良い。
「少しはお世話になったけれど あなたの名前も思い出せないの ごめんね」という歌詞の痛快さや、一度見たらけして忘れることができない振付のインパクトも最高である。
Flamingo/米津玄師(2018)
米津玄師のメジャー通算6作目のシングルとして「TEENAGE RIOT」との両A面でリリースされ、オリコン週間シングルランキング、Billboard JAPAN Hot 100のいずれにおいても1位を記録した。
「Lemon」「パプリカ」がリリースされた時点ですっかり米津玄師の年という印象はすでに強かったのだが、さらにこの曲も無視することはできない。
というのもミニマルでファンキーなサウンドにのせて、フラフラする様子とフラミンゴをかけ合わせてような歌詞や演歌のようにコブシを効かせた歌唱になるところがあったり、咳払いや笑い声などのボイスサンプルの効果的な使用など、情報量が驚異的でありながらポップソングとしてのシンプルな魅力にも溢れているからである。