邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2019

白日/King Gnu(2019)

King Gnuが配信限定シングルとしてリリースした楽曲で、Billboard JAPAN Hot 100で1位、年間チャートでは2019年に4位、2020年に5位を記録している。

日本テレビ系のドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」の主題歌として書き下ろされたため、歌詞もその内容に沿っているのだが、もっと広い意味での不条理的なものについて歌った曲として受け止められているようにも思える。

常田大希のボーカルが美しくも圧倒的であり、エモーショナルである様を表す日本語としてすでに定着して久しかった「エモい」という形容が最もふさわしいポップソングの1つとしても知られているような気がする。

香水/瑛人(2019)

瑛人のデビューシングルでBillboard JAPAN Hot 100で1位、2020年の年間チャートで6位を記録した。SpotifyやアップルミュージックといったストリーミングサービスやTikTokの浸透などによって、よく知らないアーティストの楽曲がいつの間にかヒットしているという現象がよく見られるようになっていくのだが、この楽曲もリリースの翌年あたりからTikTokがきっかけでヒットしていった。

別れた恋人から久しぶりにLINEで連絡があった、ということが歌われた楽曲なのだが、なんといっても「君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ」のフレーズがあまりにも印象的である。

「ドルチェ&ガッバーナ」はもちろんブランド名なわけだが、かつて山口百恵「プレイバックPart2」の「緑の中を走り抜けてく真紅(まっか)なポルシェ」や松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」の「伊代はまだ16だから」までをも宣伝にあたるとして歌わせなかったことがあるNHKも、瑛人が「第71回NHK紅白歌合戦」に出演した際にはさすがに歌わせていたのであった。

紅蓮華/LiSA(2019)

LiSAの15作目のシングルというか国民的大ヒットテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ曲で、Billboard JAPAN Hot 100で3週連続1位、2020年の年間3位を記録した。

日本の元号が平成から令和に変わるタイミングで最もヒットしていた邦楽ポップソングとしても知られる。

ドラマティックでエモーショナルなサウンドとボーカルに、和テイストも感じられる。

Pretender/Official髭男dism(2019)

Official髭男dismの2作目のシングルでBillboard JAPAN Hot 100で1位、年間チャートでは2019年に3位、2020年に2位のロングヒットを記録した。

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の主題歌だったが、それ以上に「グッバイ 君の運命のヒトは僕じゃない 辛いけど否めない」という多くの人々が共感できるであろう内容を最高のポップソングとして提示しているところがとにかくとてもすごい。

大衆音楽としてのクオリティとポピュラリティとが高いレベルで両立していて、まさに令和の国民的人気バンドと呼ぶにふさわしいのではないかと強く感じる。

青春Night/モーニング娘。’19(2019)

モーニング娘。の通算67作目のシングルとして「人生Blues」との両A面でリリースされた楽曲で、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

「私の人生 エンジョイ!!」をコンセプトにマイルドなチャラギャル感とピュアネスとが奇跡的ともいえるバランスで同居した14期メンバー、森戸知沙希をセンターに抜擢し、フューチャーファンク的でもあるサウンドにのせて歌った素晴らしい楽曲である。

渋谷陽一が前説を務めた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」フェスティバルのステージでも披露され、オーディエンスの多くを占めていたであろうロックファンからもそのパフォーマンスのすさまじさから「体力おばけ」の称号をいただいたりもしていた。

東京フラッシュ/Vaundy(2019)

Vaundyの配信限定シングルでBillboard JAPAN Hot 100での最高位は64位だが、夜の新宿や上野を徘徊するミュージックビデオがYouTubeで再生されまくったりして話題になった。

ラジオで流してもらうためにYouTubeやサブスクリプションサービスから流れてくる様々な楽曲を分析してつくったといわれるネオシティポップとでも呼ぶべき洗練された音楽なのだが、「Ageごしの性愛者でいいの」などのフレーズが絶妙に刺さったりもして、都市生活の空虚さを一方的な恋愛感情というテーマを通して描いているようにも感じられる。

夜に駆ける/YOASOBI(2019)

YOASOBIのデビューシングルにして、Billboard Japan Hot 100において2000年度の年間1位に輝いた大ヒット曲である。CDシングルは発売されていなく、配信のみによるリリースだったにもかかわらず、この年に最もよく聴かれた日本のポップソングとなった。

「小説を音楽にするユニット」のコンセプト通り、星野舞夜の小説「タナトスの誘惑」を原作としていて、歌詞やアニメーションを効果的に用いたミュージックビデオにもその内容は反映されている。自殺願望がある少女やそれを救おうとする男性がモチーフになっているようなところもあり、YouTubeではミュージックビデオに年齢制限が設けられている。

切なくも儚げな世界観を歌うIkuraの透明感溢れるボーカルが素晴らしく、「明けない夜」のイメージは新型コロナウィルスのパンデミック禍にあった当時の閉塞的な社会状況にもマッチしていたように思える。

祖母がピアノの先生であり、幼少期から遊び感覚で弾いていたというAyaseらしい、鍵盤のフレーズが実に印象的な楽曲である。けして明るい内容をテーマにはしていないのだが、たまらなくポップでキャッチーであり、何度聴いても飽きることのない不思議な魅力に満ち溢れている。