邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2017

ラブ・ストーリーは週末に/WHY@DOLL(2017)

WHY@DOLLのシングル「キミはSTEADY」にカップリング曲として収録されたシティポップ的でとても良い曲である。

イントロや間奏のサックスがとても印象的でゴージャス感を高めているのだが、オーガニックでチャーミングなボーカルがまた素晴らしく、ドリーミーでロマンティックな気分にさせてくれる。

「恋の魔法かけられたみたい キミに惹かれていく」はまさにこの曲を聴いているリスナーの心境である。

桜 super love/サニーデイ・サービス(2017)

サニーデイ・サービスのアルバム「DANCE TO YOU」からシングルカットされた桜ソングである。というわけで、アルバム収録曲としてリリースされたのは2016年の夏なのだが、岡崎京子のイラストのジャケットでシングルカットされた翌年春の印象があまりにも強かったのと、アルバムとはミックスが異なってもいるので、ここでは2017年の楽曲として扱っている。

「きみがいないことは きみがいることだなぁ」と歌われているように、とても大切に想っている人が現実的にはいまはもうここにいない、という喪失感とどう向き合っていくかという切実な問題に対処していくにあたって、救いになるかもしれない美しくも芯のところではひじょうに力強い楽曲である。

個人的にあの時の気持ちはもう忘れてしまったのだが、この曲がいまでもそれを記憶しているし、その証として残り続けているような気もしている。

あなたがいるなら/Cornelius(2017)

Corneliusのアルバム「Mellow Waves」から先行シングルとして7インチシングルでリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高31位を記録した。

久々の本格的な歌モノということでも話題になっていたような気もするのだが、作詞は坂本慎太郎である。「ただ見てるだけで なぜわけもなく切なくなるのだろう?」などシンプルな言葉で歌われる純然たるラブソングであり、「あなたがいるならこの世はまだましだな」と結ばれる。

つまり前提としてベーシックにこの世は酷いのだが、「あなた」がいてくれることだけがたった一つの希望である、というようなことが歌われているようにも感じられる。

ピースサイン/米津玄師(2017)

テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の主題歌として使われ、オリコン週間シングルランキング最高2位、Billboard JAPAN Hot 100では1位を記録した。「デジモンアドベンチャー」の主題歌「Butter-Fly」も意識されているということである。

人間の感情のネガティブな部分に対しての共感や理解を踏まえた上での圧倒的なポップでキャッチーであり、だからこそ「さらば掲げろピースサイン 転がっていくストーリーを」というようなフレーズがアンセミックで勢いがあるのみならず、味わい深いものとして響いてきたりもする。

ダンスに間に合う/思い出野郎Aチーム(2017)

多摩美術大学で結成された8人組のソウルバンド、思い出野郎Aチームのアルバム「夜のすべて」に収録された楽曲である。

タイトルは「ダンスには間に合う」であり、歌詞でもいきなりそう歌われているのだが、一体それがどのような状況であるかについては詳細には明かされていない。しかし、どうやら「散々な日でも ひどい気分でも」「何も持ってなくても 失くしてばかりでも」それは適用されるようなのだ。

ポップミュージックが持つ機能の1つとして何やらとてつもなく救いようがない状況であったとしても、なんだか大丈夫かもしれないと束の間でも思わせてくれる、というのがもしあるのだとすれば、この曲はその最たるものであろう。

夏休みのBABY/lyrical school(2017)

ヒップホップアイドルユニットのリリスクことlyrical schoolはそもそも別の名義で活動をスタートしているのだが、その後もメンバーチェンジを繰り返し、様々なフェイズが存在する。この楽曲はminan、hime、hinako、yuu、risanoの5人体制となってリリースした最初のシングルで、オリコン週間シングルランキングで14位を記録した。

夏という季節のどこが最高なのかがぎっしりと凝縮されたような素晴らしい楽曲で、「夏最高!」と繰り返し連呼されるところなどもとても良い。「SPICYでチョイ甘い EVERYDAY YES! WOW WOW WOW」である。

君はロックを聴かない/あいみょん(2017)

あいみょんのメジャー3作目となるシングルでオリコン週間シングルランキングで最高76位、Billboard JAPAN Hot 100では最高11位を記録した。多くのラジオ局でパワープレイやヘビーローテーションに選ばれ、オンエアされていたが、人気アーティストとなった後も代表曲の1つとして聴かれ続けている。

フォークやニューミュージックの全盛期には女性的な言葉で歌う男性シンガーソングライターが多かった印象があるが、あいみょんは男性的な言葉で歌うこともある女性シンガーソングライターで、この楽曲もそのうちの1つである。

そして、1995年生まれでありながら吉田拓郎をリスペクトし、尾崎豊などの曲をカバーしていたというのも興味深いところである。しかもそれがノスタルジックな気分も感じさせながら、しっかりと現在的であり、若いリスナーから支持されているのも特徴である。

この楽曲はおそらく「ロックなんか聴かない」であろう好きな女性に対して、自分が大切に聴いてきたロックを聴いてもらおうという、いまどき絶妙に微妙な内容ではあるのだが、それが良い感じのポップソングとして成立しているところがかなりすごい。

ボーカルやソングライティングにフォークやニューミュージック全盛期のシンガーソングライター的な大衆性を感じたりもする。

打上花火/DAOKO×米津玄師(2017)

アニメーション映画「打ち上げ花火、下から見るか? 上から見るか? 横から見るか?」の主題歌で、DAOKOと米津玄師のコラボレーション楽曲である。

モダンでありながら日本的な情緒をも感じさせ、「パッと光って咲いた」からのメロディーが特にとても強い。

この前の年のアニメーション映画「君の名は。」の主題歌、RADWIMPS「前前前世」に続き、アニメから国民的ともいえるヒット曲が生まれる、というかもしかするともうアニメからしかそれは生まれないような感じを加速させたような印象もある。

オリコン週間シングルランキングでは最高9位だったが、Billboard JAPAN Hot 100では1位、年間チャートでは2017年に3位、2018年に4位となるロングヒットを記録している。

Family Song/星野源(2017)

星野源の10作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、Billboard JAPAN Hot 100、いずれにおいても1位に輝いた。日本テレビ系のドラマ「過保護のカホコ」の主題歌である。

ソウルミュージックに対しての深い造詣を大衆的なJ-POPに落とし込んだ好サンプル的な楽曲だということができるが、タイトルの通り家族をテーマにしているところも大きな特徴である。

しかも、従来的な家父長制的なそれではまったくなく、多様性を意図的にアピールしているあたりは現在的であり、潜在的なメッセージソングとしても機能しているように思える。

N.E.O./CHAI(2017)

CHAIのデビューアルバム「PINK」から先行シングルとしてリリースされた、バンドのマニフェスト的楽曲ともいえるポップソングである。

「全部同じ顔なんて変じゃない? キレイキレイしすぎ 個性はどこにある?」「そのままがずっと 誰よりもかわいい」などと、規定された美の概念にとらわれない「NEOかわいい」をコンセプトとして提唱している。

CSSなどにも通じるオルタナティブポップ的な音楽性が特徴であり、そのメッセージ性と共に海外でも高く評価された。

2024年3月12日をもって活動を終了したが、日本のポップ・ミュージック界のみならず、社会全体にとって果たした役割は大きくひじょうに価値が高いものである。