The 500 Greatest Songs of All Time : 90-81

90. Girls & Boys – Blur (1994)

ブラーのアルバム「パークライフ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高5位を記録した。

懐かしさも感じられる誇張したイギリスらしさが特徴のアルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」が好評だった翌年に、いきなりスポーティーなファッションに身を包んでディスコ的でもあるこのシングルが出た時には驚かされた。

これがバンドにとってこの時点ではデビュー以来最大のヒットとなり、ルックスの良さからアイドル的人気も得るようになった。この約1ヶ月後にオアシスのデビュー・シングル「スーパーソニック」がリリースされ、ブリットポップ・ムーヴメントは本格的な盛り上がりへとギアを上げていく。

89. Blitzkrieg Bop – Ramones (1976)

ラモーンズのデビュー・アルバム「ラモーンズの激情」の1曲目に収録され、それ以前にシングルもリリースされていたのだが、特にヒットはしていない。当時の邦題は「電撃バップ」である。

「へイ・ホー、レッツ・ゴー」というおなじみのかけ声がフィーチャーされているが、これは当時、人気絶頂だったベイ・シティ・ローラーズ「サタデー・ナイト」にインスパイアされたものである。

単純明快でキャッチーな曲調が特徴で、血縁関係はないもののメンバー全員がラモーン姓を名乗り、アルバムのジャケットでは革ジャンとジーンズでキメるなど、キャラクターも立っていてとても良かった。

1980年代後半に日本でバンドブームが起こった時にも、パンクロックのレジェンド的存在でありながら現役でやり続けているバンドとして新しい世代からもリスペクトされていた。

88. Loaded – Primal Scream (1990)

プライマル・スクリームが1990年2月にリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高16位を記録した。後にアルバム「スクリーマデリカ」にも収録される。

アルバム「プライマル・スクリーム」に収録されていた「アイム・ルージング・モア・ザン・アイ・エヴァー・ハヴ」をDJのアンドリュー・ウェザウォールがリミックスしているうちに出来た楽曲である。

プライマル・スクリームのそれまでの音楽性とはかなり異なり、ダンス・ビートや映画からのサンプリングなどが特徴となっているが、これがインディー・ダンスやマッドチェスター・ムーヴメントともシンクロして、バンドにとって初のメジャーなヒット曲となった。

フリッパーズ・ギター「奈落のクイズマスター」などにも強い影響を与えていると思われる。

87. Unfinished Sympathy – Massive Attack (1991)

マッシヴ・アタックのデビュー・アルバム「ブルー・ラインズ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高13位を記録した。

当時、湾岸戦争の真っ只中であり、戦争を連想させる単語はあまり良くないだろうということで、このシングルのジャケットには「マッシヴ・アタック」から「アタック」を抜いて、「マッシヴ」と記載されていた。

シャラ・ネルソンのソウルフルなボーカルとストリングスなどを効果的に用いたサウンドがひじょうに画期的で、様々なメディアで高く評価された。

印象的なベルの音はRUN D.M.C.「ピーター・パイパー」と同様に、ボブ・ジェームス「夢のマルディ・グラ」からサンプリングされている。

86. Paid in Full – Eric B. & Rakim (1987)

エリック・B &ラキムのデビュー・アルバム「ペイド・イン・フル」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高15位を記録した。コールドカットによるリミックス・バージョンが有名である。

デニス・エドワーズ&サイーダ・ギャレットのヒット曲「ドント・ルック・エニー・ファーザー」のベースラインにのせて、音楽という好きなことを仕事にしてお金を稼げることの素晴らしさについて語られている。

コールドカットによるリミックス・バージョンではイスラエルの女性歌手、オフラ・ハザの「イム・ニン・アル」をサンプリングしているところなどがユニークであった。

「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」というフレーズはエリックB &ラキムの同じアルバムからシングルカットされた「アイ・ノウ・ユー・ガット・ソウル」からのサンプリングだが、M/A/R/R/Sの全英NO.1シングル「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」も生み出した。

85. Killing in the Name – Rage Against the Machine (1992)

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのデビュー・アルバム「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高25位を記録した。そして、発売から17年後の2009年には人気テレビ番組「Xファクター」の優勝者がクリスマスの週の全英シングル・チャートで1位になるのを阻止しようというキャンペーンが行われ、その結果この曲が1位に輝いている。

なぜこの曲が選ばれたかというと、やはり「ファック・ユー、オレはお前に言われたことはやらないぜ」というようなフレーズの繰り返しの後、「マザーファッカー!」とシャウトするタイプの激しいプロテスト・ソングだからであろう。歌詞は1992年のロス暴動のきっかけとなった、警察官による人種差別的な暴力にインスパイアされている。

そして、ハード・ロックとパンク・ロックとラップとをミックスしたような音楽性もラップ・メタルなどと呼ばれ、その後のオルタナティヴ・ロックやポップ・ミュージック全般に影響を与えていった。

84. Bitter Sweet Symphony – The Verve (1997)

ザ・ヴァーヴのアルバム「アーバン・ヒムス」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高2位、全米シングル・チャートで最高12位を記録した。

ブリットポップのバンドともされているが、当初はスウェードなどと共にネオ・グラムとしてくくられそうになり、見事に盛り上がらなかった。当初はザ・ヴァーヴではなくヴァーヴというバンド名だったが、ジャズの名盤の数々やヴェルヴェット・アンダーグラウンドのレコードなどを出していたレーベルのヴァーヴからクレームがついて、ザ・ヴァーヴになった。

1995年にメンバー間の確執から一旦は解散するが、やはりこのメンバーが良いということになり、再結成して最初のシングルである。美しいストリングスにのせて、かつてはマッド・リチャードなどと呼ばれることもあり、オアシス「キャスト・ノー・シャドウ」のモデルにもなったリチャード・アシュクロフトが人生について深いことを歌っていて、ヒットした上に評価もひじょうに高い。

このストリングスがローリング・ストーンズ「ラスト・タイム」をカバーしたインストゥルメンタルだったことから、この曲が売れたり使用されたりする度に多額の支払いが生じることになった。この曲においてリチャード・アシュクロフトは生計を立てるために金の奴隷になって死んでいく、というような歌詞も歌っている。

リチャード・アシュクロフトが人混みの中を気にせずどんどん歩いていくミュージック・ビデオも、ひじょうに印象的である。この曲とマッシヴ・アタック「アンフィニッシュド・シンパシー」はタイトルが少し似ていなくもないが、偶然なのかミュージック・ビデオも道を1人でずっと歩いていくという点においてよく似ているといえる。

83. No Scrubs – TLC (1999)

TLCのアルバム「ファンメイル」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで1位、全英シングル・チャートでは最高3位を記録した。

タイトルにも入っている「scrub」とは、自分ではイケていると思って自惚れているようだが、実は何も持っていない男のことだとまずははじめに説明された上で、いろいろ痛烈に批判されていく。この曲がリリースされた頃には一部で通じるスラングだったのだが、この曲が大ヒットしたことにより広く知られるようになったようだ。

ハイプ・ウィリアムスが監督したミュージック・ビデオも未来的にクールでとても良い。

82. Debaser – Pixies (1989)

ピクシーズのアルバム「ドリトル」の1曲目に収録された曲で、1997年にベスト・アルバム「デストゥ・ザ・ピクシーズ」発売のタイミングでやっとシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高23位を記録した。

サウンドの強弱を効果的に用い、ルイス・ブニュエル監督の映画「アンダルシアの犬」にインスパイアされた、それほど深い意味はない歌詞がシャウト気味に歌われるという、ピクシーズらしさがよく出た楽曲で、ニルヴァーナのカート・コバーンにも強い影響を与えたといわれる。

「アンダルシアの犬」は女性の眼球がカミソリで切られるシーンが衝撃的で、この曲でもそれが歌われているのだが、モラルを低下(debase)させるから「Debaser」のようである。

1990年代にオルタナティヴ・ロックがメインストリーム化するきっかけとなったのはニルヴァーナ「ネヴァーマインド」の大ヒットであることに間違いはないのだが、その少なくとも音楽的なエッセンスの大部分は、ピクシーズから抽出されたといっても過言ではない。

81. Wichita Lineman – Glen Campbell (1968)

グレン・キャンベルのアルバム「ウィチタ・ラインマン」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高3位、全英シングル・チャートでは最高7位を記録した。

作詞作曲はシンガー・ソングライターのジミー・ウェッブで、車の運転中に見かけた高い電柱に登って作業をしながら電話で話している人にインスパイアされた曲である。

一体何を話しているのだろうか、もしかすると仕事上の報告かもしれないし、恋人と通話をしているのかもしれない、などと想像をふくらませてできた曲のようだ。

いわゆる普通の人をテーマにした曲らしく、素朴な感じがとても良く、グッとくる。R.E.M.から矢野顕子まで、いろいろなアーティストたちによってカバーされている。