The 500 Greatest Songs of All Time : 330-321
330. You Keep Me Hangin’ On – The Supremes (1966)
シュープリームスが1966年10月にリリースしたシングルで、全米シングル・チャートではグループにとって8曲目となる1位に輝いた。
この曲もまたモータウンのヒットメーカー、ホーランド=ドジャー=ホーランドによって作詞作曲、プロデュースされている。けして本気ではないくせに別れてはくれない恋人に対して、自由にしてほしいと懇願する内容である。イントロでも聴くことができる印象的なギターのフレーズは、ラジオのニュース番組からインスパイアされたとのことである。
ヴァニラ・ファッジによるカバーバージョンが全米シングル・チャートで最高6位、そして、1986年にリリースされたキム・ワイルドのバージョンはこの曲にとって2バージョン目の1位に輝いている。
329. Rock the Casbah – The Clash (1982)
ザ・クラッシュのアルバム「コンバット・ロック」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高8位を記録した。全英シングル・チャートでは最高30位に終わっている。
ドラマーのトッパー・ヒードンによる楽曲ということで、他のザ・クラッシュの楽曲とはややテイストが異なっているのだが、これがアメリカではザ・クラッシュにとって最大のヒット曲になった。とはいえ、この曲がヒットしていた頃、トッパー・ヒードンはドラッグ問題によってバンドを解雇されていた。
中東的なムードが漂うミュージック・ビデオもひじょうに印象的であり、この曲のヒットに貢献したと思われる。
ザ・クラッシュが存続していた頃の全英シングル・チャートでの最高位は「ロンドン・コーリング」の11位だったのだが、解散してから何年も経った1991年に同じくアルバム「コンバット・ロック」から「ステイ・オア・ゴー」がリーバイスのCMに使われたことによってリバイバルし、1位に輝いたのであった。
328. WAP – Cardi B feat. Megan Thee Stallion (2020)
カーディ・Bがミーガン・ジー・スタリオンをフィーチャーしたシングルで、アメリカ、イギリスをはじめいろいろな国々のシングル・チャートで1位に輝いたのみならず、年末に各メディアが発表する年間ベスト・シングルのリストでも、上位に選ばれていることが多かったような気がする。
タイトルの「WAP」とは「Wet-Ass-Pussy」の略であり、つまりは女性アーティストが性的なテーマをポジティヴに扱った楽曲となっている。トラックの中毒性やラップももちろんとても良いのだが、この曲のコンセプト及び内容そのものがひじょうに痛快であり、一部の保守的な人たちを怒らせたり不機嫌にさせては、この期に及んでいまだ根強く残存するセクシズム(性差別)を浮き彫りにもした。
そういった意味でもとても重要な楽曲ではあるのだが、それ以前にポップソングとしてひじょうに魅力的でもある。
327. Don’t Stop Believin’ – Journey (1981)
ジャーニーの大ヒットアルバム「エスケイプ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高9位を記録した。同じアルバムからシングルカットされた「クライング・ナウ」「オープン・アームズ~翼をひろげて~」に比べると順位は低かったのだが、特に00年代以降の再評価によって、ジャーニーで最も人気の高い曲となった。アルバムのリリース時には「愛に狂って」という邦題がついていた。
ハリウッド・ブールバードに集まる夢追い人たちを描いた楽曲だが、かつてプロのミュージシャンとして成功する夢をあきらめかけていたバンドのキーボーディスト、ニール・ショーンに父がかけた励ましの言葉がモチーフになってもいる。
日本では産業ロックと呼ばれたりもするこのタイプの音楽は、一般大衆的に大ヒットしていたとしても、ポップ・ミュージック批評においてはなかなか正当に評価されにくかったりはするのだが、この曲は例外のようにも感じられる。
2003年にシャーリーズ・セロン主演の映画「モンスター」のサウンドトラックで使われたことによって注目され、2007年には史上最も優れたテレビシリーズと評価されることもある「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」の最終回、しかもラストシーンで効果的に使われた。さらに2009年には高校の合唱部をテーマにした大ヒットテレビドラマ「glee/グリー」のキャストによって歌われたバージョンが全米シングル・チャートで最高4位と、ジャーニーのオリジナルを上回るヒットを記録した。
全英シングル・チャートで「glee/グリー」のキャストによるバージョンは最高2位の大ヒットとなったのだが、これによってジャーニーのオリジナルも注目され、リリース時の最高61位を大きく上回る6位を記録した。
326. You Love Us – Manic Street Preachers (1991)
マニック・ストリート・プリーチャーズがヘヴンリー・レコーディングスからシングルとしてリリースした翌年、デビュー・アルバム「ジェネレーション・テロリスト」のために再レコーディングされたバージョンが全英シングル・チャートで最高16位を記録した。
マッドチェスターやインディー・ダンスといった当時のトレンドとはほとんど関係がないパンクロック的な音楽性と2枚組のデビュー・アルバムで1位を獲ってすぐに解散する、というようなビッグマウス的な発言によって、メディアからは面白がられながらもまがい物的な見られ方もされがちであった。
ローリング・ストーンズ「この世界に愛を」、つまり「We Love You」を逆さにしたかのようなタイトルを持つこの曲はそのような状況に対するフラストレーションをぶちまけたものでもあるのだが、バンドとファンとの関係性を強化する楽曲としても機能するようになる。
この曲を作詞したリッチー・エドワーズが失踪する前に、4人組のバンドとしてマニック・ストリート・プリーチャーズが最後に演奏したのもこの曲であった。
325. Gold Soundz – Pavement (1994)
ペイヴメントのアルバム「クルーキッド・レイン」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで記録した94位が最高位ではあるが、バンドの楽曲の中でも人気や評価はひじょうに高く、メンバーがサンタクロースのコスプレをしたミュージック・ビデオもとても良い。
1990年代にはニルヴァーナ「ネヴァーマインド」の大ヒットをきっかけにアメリカのオルタナティヴ・ロックがメインストリーム化していくのだが、ラウドでヘヴィーで陰鬱でもあるグランジ・ロックとはかなり違って、ペイヴメントの音楽性はローファイなどとも評されがちであった。
8月に酔っぱらっていて、好きなタイプの女の子がいる、なぜなら自分も彼女も空っぽだから、というようなことが、ノスタルジックでありながらマイルドな不安もにじませたような感じで歌われている。ペイヴメントというバンドの特に良いところが凝縮されたような楽曲だといえる。
324. Hey Joe – The Jimi Hendrix Experience (1965)
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・シングルで、全英シングル・チャートで最高6位を記録した。
ビリー・ロバーツというシンガー・ソングライターによって作詞作曲され、様々なアーティストやバンドがカバーしていた、ジミ・ヘンドリックスが参考にしたのはフォークシンガー、ティム・ローズによる最もスローなバージョンだったようだ。浮気をしていた妻を射殺してメキシコに逃げようとしている男のことが歌われている。
ニューヨークのクラブでこの曲を演奏しているジミ・ヘンドリックスを目撃した元アニマルズのチャス・チャンドラーがイギリスに連れて行き、デビューさせたところから伝説がはじまったという。
323. Living for the City – Stevie Wonder (1973)
スティーヴィー・ワンダーのアルバム「インナーヴィジョンズ」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高8位を記録した。邦題は「汚れた街」である。
リトル・スティーヴィー・ワンダーとして12歳の若さでモータウンからデビューしていたが、この頃にはより社会的なテーマを扱い、すべての楽器演奏とボーカルを自ら行うという天才ぶりを発揮していた。
ミシシッピの貧しい家庭で育った若者が、ニューヨークに出てきて都会の罠にはまっていくというストーリーが歌われているが、同時に人種差別を告発してもいる。
レイ・チャールズ、イアン・ギラン、ラムゼイ・ルイス、オージェイズ、アイク&ティナ・ターナー、TOTO、ウータン・クランなど、実に多様なジャンルのアーティスト達によってカバーされている他、パブリック・エナミーやアッシャーの楽曲でサンプリングもされている。
322. Come as You Are – Nirvana (1991)
ニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高32位、全英シングル・チャートでは最高9位を記録した。
キリング・ジョーク「エイティーズ」と似ているところもあることから、シングルカットにあたっては躊躇するとこもあったようだ。
この曲でカート・コバーンは銃を持っていないという歌詞を歌ってもいるのだが、数年後に遺体で発見された時の死因は、ショットガンで自分の頭を撃ち抜いたこととされていた。
ミュージック・ビデオは「ネヴァーマインド」のジャケットアートワークをモチーフしたものになっている。
321. Independent Woman Part Ⅰ- Destiny’s Child (2000)
デスティニーズ・チャイルドが3人組グループになってから最初のシングルで、映画「チャーリーズ・エンジェル」の主題歌に起用されたこともあり、全米シングル・チャートで11週連続1位の大ヒットを記録した。
メンバーのビヨンセが当時の恋人と口論の後、私は自立した女性なのだから男性に頼る必要なんてない、という気分になってつくった曲がベースになっているという。
この曲は「チャーリーズ・エンジェルズ」のサウンドトラックのみならず、デスティニーズ・チャイルドのアルバム「サヴァイヴァー」にも収録され、すでに大人気だったグループがさらに超メジャー化するきっかけとなった。