The 500 Greatest Songs of All Time : 410-401
410. Into My Arms – Nick Cave & The Bad Seeds (1997)
ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズのアルバム「ボートマンズ・コール」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高53位を記録した。
ピアノとベースだけによるシンプルな伴奏が、ニック・ケイヴの味わい深いボーカルの魅力ををより際立てたせている。宗教的なイメージさえ感じさせる広い意味での純粋なラヴソングだといえる。
ニック・ケイヴは友人であったイン・エクセスのボーカリスト、マイケル・ハッチェンスの葬儀でもこの曲を歌った。
409. Borderline – Madonna (1983)
マドンナをポップスターとして大躍進させた楽曲は1984年の「ライク・ア・ヴァージン」だが、それ以前にリリースされていたデビュー・アルバム「バーニング・アップ」とそのシングルカット曲もかなり良い。
ダンス・ミュージックとしてポップでキャッチーでありながら、ストリート感覚もほんのりと感じさせるところがとても良い。この曲は全米シングル・チャートで最高10位を記録し、マドンナにとって最初のトップ10ヒットとなった。
408. Brimful of Asha (Norman Cook Mix) – Cornershop (1998)
1993年にはカウンター的なインディー・ロックが盛り上がりそうな気配もあり、実際にはそれほどでもなかったのだが、アジア系イギリス人によるバンド、コーナーショップもモリッシーのレイスシト的な性向を糾弾するなどだかなか刺激的な活動を行っていた。
インド映画界で大人気の女優を讃えたこの曲は元々ひじょうにクオリティーが高かったのだが、これを人気DJのファットボーイ・スリムことノーマン・クックがリミックスしたバージョンがおそらくクラブで大ヒットしたらしい。そして、満を持してCDとしてリリースしたところ、全英シングル・チャートで1位に輝くほど盛り上がってしまった。
407. Pull Up to the Bumper – Grace Jones (1981)
グレイス・ジョーンズのアルバム「ナイトクラビング」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高53位を記録したが、1985年のベスト・アルバム「アイランド・ライフ」のリリースに合わせて再発されると最高12位にまで順位を上げた。
シンセ・ポップ、ディスコ、ダブ、R&B、ニュー・ウェイヴなど様々な音楽ジャンルの要素が混ざり合ったアルバム「ナイトクラビング」は1981年の「NME」年間ベスト・アルバムでクラフトワーク「コンピューター・ワールド」を抑えて1位に選ばれていた。
この曲のトラックは以前のアルバム用につくられていたものだが、レーベルからはあまり相応しくないと判断され、他のアーティストに提供されていたのを、グレイス・ジョーンズ聴いてとても気に入り、取り戻したものだという。歌詞は性的な暗喩を含んでいると捉えることもでき、そのためラジオでされないこともあったようだ。
グレイス・ジョーンズは当時、日本でも流行最先端的なメディアなどで取り上げられがちだったが、後にLGBTQ+的なポップ・アイコンとしても再評価されることになる。
406. Dry Your Eyes – The Streets (2004)
イギリスのラッパー、マイク・スキナーによるソロ・プロジェクト、ザ・ストリーツのアルバム「ア・グランド・ドント・カム・フォー・フリー」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで1位に輝いた。
音楽的にひじょうに革新的な楽曲も多いザ・ストリーツだが、この曲は失恋をテーマにした痛切なバラードであり、版権フリーの音源からサンプリングしたというストリングスも効果的に用いられている。
この曲にはコールドプレイのクリス・マーティンがコーラスを歌っているバージョンが存在するがリリースされていなく、クリス・マーティン自身も自分が歌っていないバージョンの方がかなり良いと認めている。
405. Golden Skans – Klaxons (2007)
ロンドン出身のインディー・ロック・バンド、クラクソンズのデビュー・アルバム「近未来の神話」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高7位を記録した。
アルバム「近未来の神話」は全英アルバム・チャートで最高2位、マーキュリー賞も受賞していた。「NME」では「近未来の神話」が年間ベスト・アルバム、「ゴールデン・スカンズ」が年間ベスト・シングルでそれぞれ1位に選ばれるなど、最も注目されているイギリスのインディー・ロック・バンドだったこともある。
インディー・ロック的でありながらポップであり、ダンス・ミュージック的な要素も感じられる。この曲はマドンナがABBA「ギミー・ギミー・ギミー」をサンプリングしたことで話題になった「ハング・アップ」に音楽的の影響を受けながらも、SF作家、J・G・バラードの小説にインスパイアされている。
404. Clint Eastwood – Gorillaz (2001)
アニメーションのキャラクター4名によるバーチャル・バンド、ゴリラズのデビュー・シングルで、全英シングル・チャートで最高4位を記録した。ブラーのデーモン・アルバーンとコミック作家のジェイミー・ヒューレットが中心となっていることは周知の事実である。
タイトルの「クリント・イーストウッド」はもちろん同名の人気俳優から取られているが、この曲の雰囲気とクリント・イーストウッドが主演した「続・夕陽のガンマン」「荒野の用心棒」といった映画のサウンドトラックとの類似性に由来している。
ゴリラズの楽曲にはショーン・ライダー、デ・ラ・ソウルをはじめ有名アーティストがゲストとしてフィーチャーされがちだが、この曲ではデル・ザ・ファンキー・ホモサピエンがラップで参加している。
403. Bodak Yellow – Cardi B (2017)
カーディ・Bのデビュー・アルバム「インヴェイジョン・オブ・プライバシー」からの先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで3週連続1位に輝いた。女性ラッパーがソロ楽曲で全米シングル・チャートの1位になるのは1998年のローリン・ヒル「ドゥー・ワップ」以来、19年ぶりのことであった。
ストリッパーであった過去を回想したりしながらも、ラッパーとして成功をおさめた現状を満喫するような痛快なラップが最高である。それでいて、どこか不穏なムードも感じさせるダークなトラックがまたとても良い。
402. Push It – Salt-N-Pepa (1988)
ソルト・ン・ペパのシングル「トランプ」のB面に収録されていた曲だが、サンフランシスコのDJ、キャメロン・ポールによってリミックスされたバージョンがヒットして、全米シングル・チャートで最高19位を記録した。イギリスではネルソン・マンデラの70歳を祝うライブでこの曲をパフォーマンスした後、全英シングル・チャートで2位まで上がっている。
女性ラッパーによる最初のメジャーなヒット曲として知られているが、ソルト・ン・ペパのメンバー自身はあまり気に入っていなかったという。しかし、この80年代後半的なポップ感覚は圧倒的であり、ディスティニーズ・チャイルドやミーガン・ジー・スタリオンによってカバーされたり、様々な映画やテレビドラマのサウンドトラックで使われたりしている。
401. Goodbye Yellow Brick Road – Elton John (1973)
エルトン・ジョンの最高傑作アルバムともいわれる「黄昏のレンガ路」のタイトル曲にして先行シングルで、全米シングルチャートで最高2位を記録した。タイトルは「オズの魔法使い」に由来している。
バーニー・トーピンの原点に帰りたいというテーマの歌詞、エルトン・ジョンのシンガー・ソングライターとしての魅力が最大限に発揮された素晴らしい楽曲である。
2023年公開のマーベル・コミックス映画「アントマン&ワスプ:クアントマニア」の予告編でこの曲を聴いて、その良さを再認識したり初めて感じたりしたリスナーも少なくはないと思われる。