邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:290-281

290. 青春Night/モーニング娘。’19 (2019)

モーニング娘。の67枚目のシングルとして「人生Blues」との両A面でリリースされ、オリコン週間紫雲グルランキングで最高3位を記録した。モーニング娘。は2014年からグループ名の最後にその年の下2ケタが加わるようになったので、名義はモーニング娘。’19である。

「私の人生 エンジョイ!!」というわけで、人生は楽しまなければもったいない、というようなことがフューチャー・ファンク的でもあるとてもカッコいいトラックにのせて歌われている。「ガラガラゴー」などの後の弾け気味にシャウトするところもとても良い。

渋谷陽一が前説を担当した「ROCK IN JAPAN 2019」のステージでもひじょうに盛り上がり、会場に集まったロックファンなどをもそのパフォーマンスで魅了したという。見た目は清純派なのに精神性はギャルという最高のキャラクターで知られるちーちゃんこと森戸知沙希(2022年に卒業)がセンターに抜擢されているところも、個人的にはひじょうにポイントが高い。

289. 新宝島/サカナクション (2015)

サカナクションの11枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高9位を記録した。バンド名が日本のロックバンドとしてはかなりカッコいい方なのではないかと思ったりもするのだが、それはそうとしてこの曲は映画「バクマン。」の主題歌ということもあり、かなりポップでキャッチーなところがとても良い。

タイトルは手塚治虫の漫画から取られていて、80年代のサブカルチャーをリードしたが後にヘアヌードなどを扱うようになったあの雑誌とはおそらく関係がない。

「このまま君を連れて行く」的な感情がおそらくいろいろなことを大きく動かしているような気がするのだが、もしかするとそれと同じぐらい「連れて行かれたい」衝動が拮抗している方がいろいろ気持ちイイかもしれない(知らんがな)。

288. あじさい/サニーデイ・サービス (1996)

サニーデイ・サービスの最高傑作ともいわれがちなアルバム「東京」に収録されている、とても良い曲である。

情緒的なストリングスとネオ・アコースティック的なサウンドはザ・スタイル・カウンシルから着想を得たということなのだが、全体的な印象はとても日本的である。あじさいの季節に明大前から井の頭線に乗って聴きたい楽曲ランキングがもしあるとするなら、ダントツでこの曲が1位になるだろう。

287. 思い過ごしも恋のうち/サザンオールスターズ (1979)

サザンオールスターズの4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位、「ザ・ベストテン」では最高4位のヒットを記録した。

この曲は大ヒットした「いとしのエリー」も収録したアルバム「10ナンバーズ・からっと」発売から3ヶ月以上も経ってからシングルカットされ、通常ならばそれほど売れないのだがしっかりと売れた。つまり、曲の良さである。片想いの切なさをヴィヴィッドに描写したポップでキャッチーなこの曲を、中学生だった当時、ベッドの上で身もだえしながら聴いていた記憶がある。

286. しあわせ未満/太田裕美 (1977)

太田裕美の7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。作詞・松本隆、作曲・筒美京平の黄金コンビによる超名曲で、家賃の督促に怯えるようなタイプのお金のないカップルがモチーフになっているところがとても良い。

歌詞は男性目線であり、健気でいとおしい恋人について、「ぼくの心の荒ら屋に住む君が哀しい」と歌われるのみならず、「アパートも見つからなきゃ良かったよ」「面喰いなのにもてないぼくを何故選んだの」と、どこまでも自虐的である。だが、そこがたまらなく良い。

285. There will be love there – 愛のある場所 -/the brilliant green (1998)

the brilliant greenの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

テレビドラマ「ラブ・アゲイン」の主題歌に起用されたことによって、バンドにとって初めての日本語詞でリリースされた楽曲である。「そこから流れて行けるような世界を見つけたい」というようなフレーズを、ボーカルの川瀬智子は爆笑しながら書いた、と音楽雑誌か何かで読んだような気もするのだが、記憶が定かではない。

インディー・ロック的な音楽性に加え、その良い意味でけして性格が良くはなさそうなイメージが個人的な被虐嗜好に強烈に訴えかけるものがあり、なんだかやたらと好きだったような気がする。

284. 今日はなんだか/シュガー・ベイブ (1975)

山下達郎や大貫妙子が在籍していた伝説のバンド、シュガー・ベイブのアルバム「SONGS」に収録されていた曲である。

「今日はなんだか 遠い君の声が聞こえる様な気がする」「今日はなんだか 君の心が開いたような気がする」というような、もしかするとささいなできごとが生きる理由のすべてであり、救いになりうるようなこともある。ということに、実際に気がつくよりも以前にこのリストはつくられ、偶然にもこの順位にランクインしていたのである。不思議だが本当だ。

283. マジックミラー/大森靖子 (2015)

大森靖子のアルバム「TOKYO BLACK HOLE」からの結果的には先行シングルということになるのだが、これはこれとして独立していたような印象がある。

激情派シンガー・ソングライター的なイメージで見られがちだが、とにかく曲と歌詞がとても良く、わりと深いところにリーチしがちなのだが、独特なポップ感覚的なものに救われるというような、個人的には生活にとても必要な音楽である。

「わたしのゆめは君が蹴散らしたブサイクでボロボロのLIFEを搔き集めて大きな鏡をつくること 君がつくった美しい世界をみせてあげる」という覚悟には感動と号泣を禁じえず、自分自身も頑張らなければいけないな、と強く思わされるのである。

音楽フェスティバル「ビバラポップ!」での、道重さゆみとの共演もとても良かった。

282. ズルい女/シャ乱Q (1995)

シャ乱Qの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

当時、会社の上司がカラオケでよく歌っていて嫌な感じを覚えていたのだが、後に実はこれはかなりすごい曲なのではないかと悔い改めるようになる。それはけして、バンドのフロントマンであるつんく♂がプロデュースしたモーニング娘。およびハロー!プロジェクトが素晴らしかったから、というだけの理由ではない。

ダンス・ミュージックと水商売的な歌謡ポップスとをミックスし、さらにはジャジーな気分をすら感じさせるところもあったり、ひじょうに味わい深いポップソングである。

281. ウェディング・ベル/シュガー (1981)

シュガーのデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位のヒットを記録した。

かつて本気で愛していた恋人の結婚式に呼ばれ、「くたばってしまえ アーメン」と感じるという本音が、わりとお洒落めなサウンドとメロディーにのせて歌われるという素晴らしい楽曲である。

ミキ、クミ、モーリという3人のメンバーの適度に遊んでいるお姉さん的なイメージも、当時の地方都市で暮らす男子中学生にとってはかなり丁度良かった。後に大森靖子もこの曲をカバーしている。