邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:280-271

280. 天気読み/小沢健二 (1993)

小沢健二のソロデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高17位を記録した。

個人的にはローソン調布柴崎店の夜勤中に店内放送で聴いたのが最初だと思うのだが、初めは小沢健二の曲だと分からなかった。フリッパーズ・ギター時代と比べ、かなりJ-POP的になったなということや、アシッド・ジャズのインコグニートによるカバーがJ-WAVEの「TOKIO HOT 100」や六本木WAVEなどでヒットしがちだったスティーヴィー・ワンダー「くよくよするなよ」に少し似ているのではないか、と感じた程度である。

しかし、「何言ったって裏返っていく彼や彼女」「君にいっつも電話をかけて眠りたいよ」というフレーズには心に刺さるものがあり、どんな音楽を聴いたり映画を見ることよりも、ただただ好きな人のことを思うことによって最も心が満たされ、それだけで朝を迎えていたりもするのだが、それでも平気で仕事に行っている今日この頃においても、かなり良いのではないかと感じることができる。

279. 電話線/矢野顕子 (1976)

矢野顕子のデビュー・アルバム「JAPANESE GIRL」に収録されている曲である。初期の代表曲であり、プロモーション用のシングルにもなっていたようだ。

個人的に矢野顕子のことをYMOファミリーのメンバーとして初めて認識した世代のボリュームゾーンなのだが、それ以前に読売ジャイアンツのスターティングオーダーを順番に歌っていく「行け柳田」なる曲のことは知っていた。個性的で自由な魅力が溢れんばかりの、とても良い曲である。

278. グッド・ラック/野口五郎 (1978)

野口五郎の28枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位、「ザ・ベストテン」で最高6位のヒットを記録した。

筒美京平が作曲をした、いわゆるシティ・ポップ歌謡的なとても良い曲である。「男は心にオーデコロンをつけちゃいけない わかってくれよ」というようなマイルドなダンディズムが都会的なサウンドにのせて、個性的な歌声で歌われている。

277. 君が僕を知ってる/RCサクセション (1980)

RCサクセションのシングル「雨あがりの夜空に」のB面に収録され、ライブでは定番となっていた楽曲の1つでもある。

当時の忌野清志郎の歌詞によく見られる、理解者という概念が分かりやすくあらわされた楽曲だともいえる。もしかするとその人が最も自分のことを理解してくれていて、その人さえ分かってくれているならば、他のことはほとんどどうでもいい、というような感覚に主体的に溺れがちな人々にとってはたまらなく良い曲だということができる。

276. モンロー・ウォーク/南佳孝 (1979)

南佳孝の6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高38位を記録した。

危険な真夏のアバンチュールを予感させるが、結局のところは気分だけで、特には何も起こらない、というようなブルーズを現実的に体験した人たちはこの世にはけして少なくはないだろうと考えるのだが、この曲はまさにファンタジーである。

郷ひろみが「セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)」としてカバーしてヒットさせたが、作詞をした来生えつこは勝手にタイトルを変えられたと大激怒していたらしい。

275. ワンダーフォーゲル/くるり (2000)

くるりの6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録した。

文学的なロックなのだが、テクノポップ的な味つけもされているところがとても良い。「ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって こんなにもすれ違ってそれぞれ歩いてゆく」というフレーズが印象的である。

しかし、個人的に現在は「何故君はいつでもそんなに輝いてるの」というところに特に激しく共感を覚える。

274. ギザギザハートの子守唄/チェッカーズ (1983)

チェッカーズのデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位を記録した。

2枚目のシングル「涙のリクエスト」の大ヒットによってスポットが当たったようなところもあり、デビューからブレイクまでには少しだけ時間を要した。

「ちっちゃな頃から悪ガキで 15で不良と呼ばれたよ ナイフみたいにとがっては 触わるものみな傷つけた」というフレーズと、サックスのイントロが特に印象的である。オールディーズ感覚とアイドル性と不良性とが絶妙なバランスで調和され、社会現象的ともいえる大ブレイクに至った。

273. 楽園ベイベー/RIP SLYME (2002)

RIP SLYMEの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位のヒットを記録した。

個人的に特に思い入れがある曲というわけでもないのだが、この年の夏の気分を即座に思い起こさせてくれる大衆的なヒット曲であり、ヒップホップはもうすでにお茶の間にすっかり浸透していたということができる。

そして、やはり特にサマーソングにはカジュアルセックス感が肝要というのは個人的な趣味嗜好なのかもしれないが、この曲には明らかにそれがあり、「むきだしのロマンスはクレイジー なぜか多い6月のベイビー」というフレーズにも必然性がある。

272. ゆらゆら帝国で考え中/ゆらゆら帝国 (2000)

ゆらゆら帝国の3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高42位を記録した。

テレビのバラエティ番組「はねるのトびら」のオープニングテーマに起用されたりもした事実はあるものの、いわゆるJ-POPとはほとんど異なり、個性が暴発しまくっているのだが、強靭なポップ感覚は健在であり、そこが大きな魅力になっているように感じられる。

271. ガラスのジェネレーション/佐野元春 (1980)

佐野元春の2枚目のシングルで、初期の代表曲ではあるのだが、当時はオリコン週間シングルランキングにランクインしていなかった。

ポップでキャッチーでありながら、街に暮らす若者たちの心情をヴィヴィッドに描写した歌詞をロックミュージックにのせて歌っていた当時の佐野元春は、日本語ロックの可能性を拡張し、1つのパターンを発明したともいうことができる。

この曲においては「つまらない大人にはなりたくない」というフレーズが何とも本質的であり、個人的にも強く共鳴したのだが、まさかあれから40年以上経ってもいまだに「君の幻を守りたい」「見せかけの恋ならいらない」というような歌詞に共感しまくっているという未来にまでは、さすがに当時も想像が及ばなかった。