邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:110-101

110. Flamingo/米津玄師 (2018)

米津玄師のメジャー9枚目のシングルとして「TEENAGE RIOT」との両A面でリリースされ、オリコン週間シングルランキングなどで1位に輝いた。

ミニマルなファンク調のサウンドにのせて、演歌調ともとれる歌いまわしや様々なボイスサンプルなどが飛び交い、自己嘲笑的でありながらラヴソングとしても成立しているところもある歌詞など、すさまじい情報量である。

個人的には「触りたい ベルベットのまなじりに」に込められた情欲に深く感じ入ったりはする。

109. Romanticが止まらない/C-C-B (1985)

C-C-Bの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位、「ザ・ベストテン」では1位に輝いた。

テレビドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌に使われたことにより、大ヒットした。ハイトーンボイスが特徴であるドラマーの笠浩二をリードボーカルに起用したのは、作曲者である筒美京平のアイデアであった。シンセサイザーやシンセドラムなどを効果的に用いたサウンドとポップでキャッチーな楽曲とが絶妙にマッチしていてとても良い。

「Romanticが止まらない」というタイトルも最高であり、いつもそんな気分こそが生きる理由だったりはしている。吐き気がする程ロマンチックだぜ。

108. アンドロメダ/aiko (2003)

aikoの13枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

aikoの楽曲というのは音楽的に素晴らしいことはもちろんなのだが、恋愛のいろいろなフェイズにおけるヴィヴィッドなリアリティーであったり、それを表現する上での語彙力やメロディーの機微などがあまりにもすごすぎて、リスナーのおかれた状況や精神状態によっては、もうこれだけでいいやとか、こればかり集中して聴く期間が続きがちだったりもする。

そして、このランキングのリストをつくってから少ししたあたりで個人的にaikoしか聴く気がしなくなっていた時期があったりもしたのだが、やはりこの曲はその中でも特に良いもののうちの1つである。

愛は移ろい、やがて消えて失くなってしまう場合がひじょうに多いのだが、その予感を感じることはいつでもとても切なくて悲しい。「交差点で君が立っていても もう今は見つけられないかもしれない」というフレーズに込められた感情を想うと、いてもたってもいられない気分になったりもする。でも、今日は素敵な人とランチができたのでよかった(知らんがな)。

107. ひこうき雲/荒井由実 (1973)

荒井由実のデビューアルバム「ひこうき雲」の表題曲で、デビューシングル「きっと言える」のカップリング曲でもある。

「空に憧れて 空をかけてゆく あの子の命はひこうき雲」と歌われるこの曲には実在のモデルがいて、彼は荒井由実の小学生時代の同級生だったが、高校生の頃に病気で亡くなった。

2013年にはスタジオジブリのアニメ映画「風立ちぬ」の主題歌に起用され、配信シングルとしてもリリースされた。

106. 十七歳の地図/尾崎豊 (1983)

尾崎豊のデビューアルバム「十七歳の地図」の表題曲で、後にシングルカットもされた。

若者のカリスマ的なイメージがどこまで自然発生的なもので、どこから意図的につくり上げられたものであったかは定かではないのだが、尾崎豊はまず優れたシンガー・ソングライターであり、そのエッセンスがこの曲には凝縮されている。タイトルはプロデューサーの須藤晃が中上健次の小説「十九歳の地図」からインスパイアを受けたものだが、それに対して尾崎豊が仕上げてきた楽曲には驚愕させられたという。

当時、同じく青山学院大学の高等部に在学していたとある女性音楽ライターは、あの時代にあの学校に通っていたような若者に何の不満があったのだろう、正直いってダサいと思っていた、というようなことを言っていたような気がするが、それもまた1つのリアリティーではあるだろう。

個人的には当時、尾崎豊のレコードは全部買っていたのだが、あまり周囲には堂々と明かしてはいなかったような気がする。そして、久しぶりにこの曲を聴いてみると、音楽的にブルース・スプリングスティーン「明日なき暴走」を明らかに下敷きにしているであろうところなどはさておき、そこにはほとばしる情熱と瑞々しい感性をヴィヴィッドに感じずにはいられない。

105. そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸 (1984)

大沢誉志幸のアルバム「CONFUSION」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高2位のヒットを記録した。

沢田研二や中森明菜などへの楽曲提供で注目されながら、ソロアーティストとしてもネクストブレイク的に取り上げられがちだった大沢誉志幸だが、この曲は日清カップヌードルのテレビCMで使われたことがきっかけで、一般大衆的にも大きな支持を得ることになった。

ポリス「見つめていたい」などを思わせもするシンセサウンドと、大沢誉志幸のハスキーなボーカルとが絶妙なマッチングを実現している。

104. ジェニーはご機嫌ななめ/ジューシィ・フルーツ (1980)

ジューシィ・フルーツのデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録した。

近田春夫&BEEFを前身とするロックバンドで、テクノポップ的でもある楽曲をボーカリストのイリアがファルセット的なウィスパーボイスで歌うのが特徴である。テクノブームであった当時、そういった関連の特集番組でも取り上げられがちだったような気もするのだが、シングルとしては一般大衆的に最もヒットしていたのではないだろうか。

2003年にはPerfumeによってカバーされたりもして、いまやクラシックとして認知されているようなところもある。作曲は近田春夫である。

103. ライディーン/イエロー・マジック・オーケストラ (1979)

イエロー・マジック・オーケストラのアルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高15位を記録した。作曲は高橋幸宏である。

タイトルは江戸時代の力士に由来していて、楽曲には「スター・ウォーズ」を黒澤明が監督したらどうなるか、というようなコンセプトもあったようだが、当時、日本のテレビアニメ「勇者ライディーン」がアメリカでヒットしていたらしく、それから取られているようである。

当時、一般大衆的に知らない人はいないレベルでポピュラーなメロディーであり、「テクノポリス」と共に1980年のテクノブームを象徴する楽曲として知られる。

102. あなたがいるなら/Cornelius (2017)

Corneliusのアルバム「Mellow Waves」からの先行シングルで、オリコン週間シングルランキングで最高31位を記録した。

坂本慎太郎が作詞を手がけ、Corneliusにとっては久々の本格的な歌モノとして話題になった。音楽的にも革新的でありながらポップスの最新型のようでもあって最高なのだが、「あなたがいるなら この世はまだましだな」と歌われるラヴソングとしてもかなり素晴らしい。

特にクソッタレなことがあまりにも多すぎて、すべてがどうでもよくなりそうな時があったとしても、「あなたがいるなら この世はまだましだな」と心から思える人が現実的にいるのといないのとでは、世界の見え方がまるっきり違ってくるのではないか、ということを近頃は特に実感している。

101. BABY BLUE/フィッシュマンズ (1996)

フィッシュマンズの素晴らしいアルバム「空中キャンプ」に収録され、後にシングルカットもされた。

レゲエやダブからの影響を取り入れたサウンドは音響的にもひじょうにユニークだが、「このまま 連れてってよ 僕だけを連れてってよ」などと歌われる佐藤伸治のボーカルが何とも切なくてとても良い。

「意味なんかないね 意味なんかない 今にも僕は泣きそうだよ」というような感覚をヴィヴィッドに表現したとても良い曲である。