the 50 best songs of 2023: 50-41

2023年も残りわずかとなってきたので、今年も年間ベストソング的なやつをなんとなくやっていきたい。今年は小学生ぐらいの頃をルーツとするヒット曲リスナーに原点回帰したというか、流行っている音楽を聴いている時間がほとんどだったこともあり、それが反映しているような気もする。

また、いろいろあって実際に音楽の話をしたりする人たちの平均年齢がおそらく20歳ぐらい若返ったので、その辺りももしかすると少しは影響しているのかもしれない。それでトータル的になかなか良かったな、というような毎年言っているようなありふれた感想となる。

50. タイムマシーン/佐藤千亜妃

宇多田ヒカル「Automatic」のイントロをサンプリングしていることが話題となった佐藤千亜妃のEP「TIME LEAP」、アルバム「BUTTERFLY EFFECT」収録曲である。

念のため佐藤千亜妃はみんな大好き「クロノスタシス」などでお馴染み、きのこ帝国のボーカル、ギターで全楽曲の作詞・作曲者だった方である。

過去の恋愛にまつわるマイルドな感傷をテーマにしたドリーミーでビタースウィートな楽曲である。

49. サマータイムシンデレラ/緑黄色社会

フジテレビ系の月9ドラマ「真夏のシンデレラ」のテーマソングとしてリリースされた緑黄色社会のシングルである。

どんなタイプの楽曲をやっていたとしても長屋晴子のボーカルがとにかく素晴らしいのだが、この曲の場合は王道J-POPという感じで、それにもきっちりハマっている。

路上で聴くことができる音楽についていうならばすっかり広告の街と成り果てて久しい渋谷宇田川町の交番の近くでも真夏の一時期、この曲を頻繁に耳にしたものだが、この夏のサウンドトラックとしてはなかなか良かった。その後、乃木坂46「おひとりさま天国」に変わった。

48. rose feat. Vaundy/Chilli Beans.

チリビことChilli Beans.の3作目のEP「mixtape」に収録されたVaundyとのコラボレーション曲である。

バンド的なルーズなグルーヴ感と都会的なセンスが絶妙に混じり合い、ボーカルのMotoとVaundyとのデュエットソング的な良さもある。とても幸福なコラボレーションだということができる。

47. For Granted/Yaeji

韓国をルーツとし、ニューヨークとソウルを拠点に活動するアーティスト、Yaeji(イェジ)のデビューアルバム「With a Hammer」からの先行シングルである。

ベッドルームポップ的にミニマルでありながらユニークなアイデアに満ち溢れていて、この曲では途中にジャングル的なビートが導入されたりもしている。

自己肯定感を阻害する様々な要因に対するレジスタンスとしてのメッセージ性が特徴であり、その根底に怒りが感じられるところもとても良い。

46. Nothing Left to Lose/Everything But the Girl

エヴリシング・バット・ザ・ガールの11作目のアルバム「Fuse」からの先行シングルである。

1980年代にトレイシー・ソーンとベン・ワットによってネオアコースティック(日本でしか通じないらしいがとても便利で愛おしい音楽ジャンル名)的な音楽をやるデュオとして結成されたエヴリシング・バット・ザ・ガールがいまだに充実した作品をつくり続けていること自体がまずはかなりすごい。

デュオとしては約24年ぶりの新作ということだが、ハウスミュージック的なサウンドが体現しているのは底なしの空虚さと諦念のようであり、そのような現実ではあるのだが我々は生きていこうという切実さがきわめて現在的だということができる。

45. BORDER/WurtS

大学生の個人的な研究からはじまってTikTokに発表した楽曲がバズり、いまや様々な大企業とのタイアップもこなしまくるといういかにも現在的なアーティストがWurtS(ワーツ)である。

この曲は「週刊少年ジャンプ」に連載中に人気コミック「SAKAMOTO DAYS」とのコラボレーション作品であり、その世界観に寄り添いながらも目くるめくイメージと情報量の坩堝感が素晴らしい(「アルゴリズムに負けない絡み合う生き物の様々な死骸物」「この世界は異常で軽くハイ」「君を守り、愛を迎え撃つ」)。

44. I Got Heaven/Mannequin Pussy

アメリカはフィラデルフィア出身のパンクロックバンド、Mannequin Pussy(マネキン・プッシー)の4作目のアルバム「I Got Heaven」(2024年3月リリース予定)からの先行シングルである。

聖と俗とが混在しているのが現実ではあるわけだが、それを音像化したようなエネルギッシュでドリーミーなロックチューンである。アグレッシブだったかと思うと、途中でドリームポップ的な耽美性を感じさせたりもする展開がとても良い。

43. リンジュー・ラヴ/マカロニえんぴつ

マカロニえんぴつはボーカル、ギターでソングライターのはっとりがそのアーティスト名がユニコーンのアルバム「服部」に由来しているように、ユニコーンおよび奥田民生的なイズムを受け継いだバンドではあるのだが、けして懐古趣味にはしるわけではなく、コンテンポラリーなポップミュージックとしてしっかり現在の若者たちから支持されているロックバンドである。

この曲はTBS系のテレビドラマ「100万回言えばよかった」の主題歌であり、もう二度と触れることのできない愛をテーマにした楽曲である。重要な問題をけしてそれっぽくなく、ある種の軽快さすら感じさせながら表現し、それゆえにグッとくるタイプの作品ともいえる。

ミュージックビデオには広末涼子が出演し、絶妙に素晴らしい演技を見せている。まったくの余談だが読者様の中でも個人的な趣味や嗜好にまでご興味をお持ちいただいている方々ならばご存知の通り、件の報道によって、広末涼子の対しての個人的な好感度が爆上がりしていることには間違いがない。

42. Speed Drive/Charli XCX

チャーリーXCXが映画「バービー」のサウンドトラックに提供し、全英シングルチャートでは最高9位のヒットを記録した楽曲である。

チープなシセ音やトニー・バジル「ミッキー」(日本ではバラエティー番組「ワンナイR&R」でガレッジセールのゴリが演じたゴリエ関連でも2004年にヒットした)の引用を含み、「Kawaii like we’re in Tokyo」という歌詞が登場したりもする。曲の時間は2分にも満たず、インスタントにポップス的欲求を満たしてくれるところが最高である。

41. Hollywood Baby/100 gecs

アメリカはセントルイス出身のハイパーポップデュオ、100 gecs(ワンハンドレッド・ゲックス)のアルバム「10,000 gecs」から先行リリースされた楽曲である。

ハードロック的なクリシェ(常套句)を素材として使用し、最新型のポップミュージックをつくりだしているような印象がある。この曲ではハリウッドスタイルの成功神話を批評的に取り扱っているように思われるのだが、それ以前にポップ的快感を強烈にアピールするところに類いまれな知性を感じたりもする。