邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2010

1984/andymori(2010)

andymoriのアルバム「ファンファーレと熱狂」の1曲目に収録された楽曲である。タイトルはバンドの中心メンバーでこの曲のソングライターでもある小山田壮平が生まれた年である。

どこか牧歌的なムードも感じられるイントロに続いて歌われる歌詞は文学的でありながらとても懐かしく、それでいて現在から見た世代というようなものをテーマにしているようでもある。

このいくばくかの諦念をも含んだ微熱感覚こそがこの時代におけるリアルにとても近いような気がした。

ロックンロールは鳴りやまないっ/神聖かまってちゃん(2010)

神聖かまってちゃんのデビューミニアルバム「友だちを殺してまで。」の1曲目に収録された楽曲である。歌詞が駅前のTSUTAYAでビートルズやセックス・ピストルズのCDを借りるくだりからはじまることもあり、ミニアルバムのリリースに先がけて、この曲のみを収録したCDが全国のTSUTAYAで無料レンタルされた。

はじめはどうにもピンとこなかったロックンロールが急に心に響いてきて、それなしにはいられなくなるような衝撃と驚きを激情型のパンクロックにのせて歌ったとても良い曲である。ロックの名盤や名曲を教養のように摂取して、時にはそれが人生においてとても重要なものになることもある、というような現象が起こる確率はひじょうに低くなっているような気もするのだが、それが良いことなのかそうではないのかはまあさておいて、かつてこういうことがあったという記憶の記録が心を動かしてやまない。

ソラニン/ASIAN KUNG-FU GENERATION(2010)

アジカンことASIAN KUNG-FU GENERATIONの14作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位のヒットを記録した。洋楽のオルタナティブロックなどをメインで聴いているリスナーが普通に聴いて良いと感じられる日本のロックがメインストリームでちゃんと売れているという事実だけでも、日本のポップミュージック界は以前よりもかなり良くなっているのではないだろうか、などと思わされたりもした。

映画「ソラニン」のテーマソングであり、「さよなら」というワードが歌詞に何度も登場する。特に「さよならだけの人生か」というフレーズにはまったくその通りだと思わされたりもするのだが、それは自分自身が好きでやっている生き方のせいでもあり、自業自得というところもあるし、もちろんそれはじゅうぶんに分かっている。とはいえ、やはり寂しいものである、というようなことを歌ったロックチューンというのは、ありそうでなかなかないのではないだろうか。

ナチュラルに恋して/Perfume(2010)

Perfumeの10作目のシングルとして「不自然なガール」との両A面シングルとしてリリースされた。オリコン週間シングルランキングでは最高2位を記録し、国民的人気グループとしての地位をすっかり確立した感もあった。

それにしても、「ナチュラルに恋して」は等身大的な背伸びをしない親しげな恋愛こそが至高というようなことが、とても良い感じのテクノポップサウンドにのせて歌われていて、たとえばそのような関係にある人がいる相手にガチ恋しているようなシチュエーションにおいては、かさぶた剥がし的に痛々しかったりもする。

そこを繰り返し聴き返すことにより、マゾヒスティックな快感を得るというような楽しみを知ったがゆえに、Perfumeで最も好きな曲はこれ、という例も稀には存在するようである。

ずっと好きだった/斉藤和義(2010)

斉藤和義の38作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位のヒットを記録した。資生堂のCMのために書き下ろされた楽曲であり、高校時代の憧れの女性と大人になってから再開し、「ずっと好きだったんだぜ 相変わらず綺麗だな」というようなことを歌うというような内容である。

広告された商品というのも40代半ばの女性向けということで、テレビCMには伊藤つかさ、荻野目洋子、河合その子、石川秀美といった斉藤和義と同世代の往年の女性アイドルたちが出演していた。

楽曲そのものもクラシックロック的で、まったく奇をてらっていないところがコンセプトにも合っていてとても良い。斉藤和義の故郷でもある栃木県宇都宮市のオリオン通りにあるビルの屋上で撮影されたミュージックビデオもとても良い。

ありがとう/いきものがかり(2010)

いきものがかりの18作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の主題歌として書き下ろされた楽曲ということで、ドラマの舞台になった調布市にある京王線調布駅の列車接近メロディとして使われてもいる(ので個人的に耳にする機会がまあまあ多い)。

吉岡聖恵のボーカルやルックス(や粗すぎるものまね)も含め、素朴で親しみやすいところが最高なのだが、特にこの楽曲はその最たるものだということができる。いまや超人気でメジャーなアーティストであるにもかかわらず、無名時代にお世話になった海老名の新星堂が閉店する日にちゃんと現地を訪れていた件なども好感しかない。

行くぜっ!怪盗少女/ももいろクローバー(2010)

ももいろクローバーのメジャーデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。グループ名に当時はまだ「Z」が付いていない。作詞・作曲・編曲はヒャダインこと前山田健一である。アニメ映画「ルパン三世 カリオストロの城」のオマージュにもなっているとのこと。

「週末ヒロイン」のキャッチフレーズでライブを積極的に行っていたようである。楽曲がおもしろいと音楽ファンの間でも話題になり、いわゆる「楽曲派」アイドルファンと呼ばれる人たちからも圧倒的な支持を得ていたようである。

確かにおもちゃ箱をひっくり返したようなめくるめくポップ感覚の坩堝とでもいうべき音楽性はただただ楽しく、ボーカルの初々しさをも含めてとても良い。

会いたくて会いたくて/西野カナ(2010)

西野カナの10作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位、年間シングルランキングでは最高72位だが、着うたフルでは年間1位に輝いている。

「会いたくて会いたくて震える」のフレーズがあまりにも印象的であり、女性リスナーを中心に絶大な支持を得たのだが、西野カナ自身の恋愛観はこの歌詞とは対照的だったとのことである。

コンテンポラリーなポップソングとして普通にかなり良く、わりと好んで聴いていたのだが、若い女性からの支持があまりにも熱烈だったことから、こっそり隠れて聴いていた大人の男性リスナーたちの例もいくつかはしっかり確認できている。