邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1999, Part.2
花火/aiko(1999)
aikoの3作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した。
「夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして」となかなかSF的な表現が用いられているのだが、「こんなに好きなんです 仕方ないんです」という切ない片想いの曲である。
デビューしてからプロモーションなどで忙しくなり友人と毎年行っていた花火大会に行けなくなった寂しさから書いた曲でもあるようである。
スロウライダー/サニーデイ・サービス(1999)
サニーデイ・サービスの11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高35位を記録した。
ポップミュージックの機能の1つとして意識をここではないどこかへ連れていってくれる、というのもあるとは思うのだが、この曲にもそういったところがあるように思える。
しかも、それほど必死で急いでいるというわけでもなく、あくまでマイペースに感じられながらもけしていい加減ではないようなところがとても良い。
スノードームをイメージしたライブ演奏風景的なミュージックビデオも、オーディエンスの感じも含めとても味わい深い。
イージーライダー/深田恭子(1999)
深田恭子の2作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。
女優としてすでにかなり人気があった深キョンこと深田恭子のCDデビューは当時わりと話題になっていた記憶があり、デビューシングル「最後の果実」に続いてこの曲もヒットした。
フィリーソウル的なストリングスも美しく、マイルドな旅情をかき立てるのだが、深田恭子の技術的にはそれほど上手いとはいえないのかもしれないが、とても味のあるボーカルがまた素晴らしい。
それで「あなたってもっと本当は 大胆って思ってた」「倫理や論理など振りかざす前に きつく抱きしめてよ 今すぐ」「永遠って言ったって なんだって終わるでしょ 始まってずっと続く 恋なんて信じられない」などと歌われる。
作曲・編曲・プロデュースはPLAGUESの深沼元昭である。それにしてもサニーデイ・サービス「スロウライダー」に続いて、約半月の間にタイトルに「ライダー」が入った名曲が立て続けに2曲リリースされたのもなかなかすごいことである。
LOVEマシーン/モーニング娘。(1999)
モーニング娘。の7作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで3週連続1位、年間シングルランキングで7位を記録した。
すでに人気はかなりあったわけだがこの曲の大ヒットによって、それが社会現象的なレベルにまで達し、国民的アイドルグループ化につながった印象はある。
当時14歳の後藤真希が3期メンバーとして加入したばかりにもかかわらず、いきなりセンターに抜擢されたことも話題になったが、ディスコソング的なサウンドにのせて「日本の未来は 世界がうらやむ」「モーニング娘。も あんたもあたしも みんなも社長さんも」などとベタな感じで歌われる祝祭的な感じにもとてもインパクトがあった。
このシングルのジャケットに写ったメンバーたちがある規則性に則って順番に卒業や脱退していくことから、「ラブマの法則」などと後にいわれたりもした。
本能/椎名林檎(1999)
椎名林檎の4作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。
大ヒットしたデビューアルバム「無罪モラトリアム」以降、最初にリリースされた新曲ということで大いに注目をあつめたが、性愛的なムードを強く感じさせながらより深い意味もありそうな歌詞や、巻き舌をも含んだ個性的で堂々たるボーカル、さらにはナース姿のコスプレでガラスを拳で割るミュージックビデオのインパクトなど、期待にじゅうぶんに応えるのと同時に、一般大衆的にもポップアイコン的にその存在を印象づけたともいえる。
カブトムシ/aiko(1999)
aikoの4作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位を記録した。
恋をしている時の状態を「甘い匂いに誘われたあたしはカブトムシ」と表現する独自性、「生涯忘れることはないでしょう」と歌われることでエバーグリーン感も増しているとても良い曲である。
カブトムシは強い昆虫として知られるが、甲羅を1枚剥がすとやわらかくて脆いことから、それを恋をしている自分にたとえたということである。
「花火」に続き2曲連続のトップ10ヒットを記録し、注目のニューカマーから大人気アーティストに化けていくのではないかという可能性を感じさせてもいた。
Funny Bunny/the pillows(1999)
the pillowsの8作目のアルバム「HAPPY BIVOUAC」の9曲目に収録された楽曲で、シングルカットさえされていないのだが、いつの間にかナチュラルに代表曲で名曲として知られるようになっていた。
たとえばアニメーション作品「フリクリ」の挿入歌になったり漫画「SKET DANCE」で登場人物がこの曲を演奏するシーンが描かれたり、トリビュートアルバムではELLEGARDENやBase Ball Bearがカバーし、名曲カバー的な活動を行っていたアイドルネッサンスにも取り上げられたり、2019年はアクエリアスのテレビCMとギャツビーのWEBムービーにそれぞれ別々のアーティスト(Uru、佐藤緋美)によるカバーバージョンが使用され、2023年にはNintendo Switchのゲームソフト「なつもん!20世紀の夏休み」の主題歌として、また別のアーティスト(本名陽子)によってカバーされた。
要因はなんといっても「キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ」というフレーズの強さであろう。UKロックやオルタナティヴロックなどからの影響を感じさせるわりと通好みのバンドという印象も強いthe pillowsだが、この曲はおそらく一般大衆的にも名曲としていつの間にか認知されているような気もする。