邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1996, Part.3

田園/玉置浩二(1996)

玉置浩二のソロアーティストとしては11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

主演テレビドラマ「コーチ」の主題歌としてリリースされたこの楽曲は、安全地帯の活動休止後、様々な要因で精神状態が不安定になり、旭川の実家で療養していた頃の心境を歌ったものである。

それだけに「生きていくんだ それでいいんだ」というメッセージも強く響いてくる。当時の玉置浩二を支え、この曲においても作詞とプロデュースを共同で行っているのは、尾崎豊の作品などにもかかわった須藤晃である。

Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜/YEN TOWN BAND(1996)

YEN TOWN BANDのファーストシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

岩井俊一監督の映画「スワロウテイル」に登場する架空のバンドで、主役のグリコを演じたCHARAがボーカルを担当している。メンバーは他に小林武史、名越由貴夫、岩井俊二である。

1991年にデビューしたCHARAはそのキュートで個性的なボーカルやキャラクターで早くから注目をあつめ、アルバム「Violet Blue」「Happy Toy」が2作連続でオリコン週間アルバムランキング最高4位のヒットを記録したり、サントリーや資生堂のテレビCMや岩井俊二監督の映画「PiCNiC」に出演したりもする。

しかし、シングルヒットがなかなか生まれずに、それまでは「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」で記録した41位が最高位であった。

そこで、小林武史が作曲・編曲・プロデュースをしたこの楽曲である。CHARAのボーカリストとしての個性や魅力をフルに生かしたまま、トレンド感とエバーグリーン加減とのバランスが実に絶妙な音楽性がかなり良く、この曲自体も大ヒットしたのだが、CHARAの存在を一般大衆的なリスナーに向けて広くアピールする結果にもなった。

Little Jの嘆き/GREAT3(1996)

GREAT3の2作目のアルバム「METAL LUNCHBOX」に収録され、シングルカットもされた楽曲である。

一般的にけして大ヒットはしていないのだが、一部では特別にかなり人気があった印象のバンドである。かといって、その音楽性が難解でマニア向けだとかいうわけでもなく、間口はかなり広いようにも思える。

とはいえ、ボーカリストでソングライターの片寄明人による歌詞は致死量レベルにヤバめな切なさを表現している場合も少なくはなく、この曲もその典型的な一例だということができる。

まずは失恋ソングのようなものではあるのだが、家が取り壊され門だけが残されている状態になっているところ、応える人のないインターフォンを意味もなく何度も押し続けているうちに、突然に涙がこぼれて落ちたのだが、悲しいわけではなく、少し憂鬱な気持ちだっただけなのだ、というようなことが平然と歌われている。

そして、「神様 あぁ 勝ち目はない 僕は ダメだよ 憎めない さよならもいえない あぁ」などと続いていく。もちろん最高である。

サマー・ソルジャー/サニーデイ・サービス(1996)

サニーデイ・サービスの5作目のシングルで、後にアルバム「愛と笑いの夜」にも収録された。

「愛しあうふたり はにかんで なんにも喋らず 見つめあう それは天気のせいさ」などと歌われる最高のサマーアンセムなのだが、発売されたのは10月25日で夏はもうすでにすっかり終わっていたのだった。

とはいえ、歌詞もメロディーも演奏も歌もとにかくすべてとても良いので、次の夏はもちろんその後もずっと聴き続けられる素晴らしい楽曲である。

「そこから先は Hey hey hey…」と結末をリスナーの想像力に委ねているところなどもとても良い。

PRIDE/今井美樹(1997)

今井美樹の12作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、1997年度の年間シングルランキングで6位を記録した。

安田成美と香取慎吾が主演したテレビドラマ「ドク」の主題歌で、作詞・作曲・編曲は布袋寅泰である。

「だけど今は 貴方への愛こそが 私のプライド」と今井美樹の癒し効果絶大のボーカルで歌われるこの楽曲は女性からの支持も絶大であり、カラオケでもよく歌われがちであった。

SHAKE/SMAP(1996)

SMAPの23作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

バラエティータレントとしても幅広い層に人気があり、男性アイドルグループとしてかつてないレベルでの国民的大スター感が漂っていた当時のSMAPだが、楽曲が音楽的にもかなり優れていたことも大きな特徴である。

「シェイクシェイク ブギーな胸騒ぎ チョーベリベリ最高 ヒッピハッピシェイク」というような歌詞のキャッチーすぎる軽さに見合うご機嫌な楽曲であり、「明日は休みだ仕事もない 早起きなんてしなくてもいい」ときわめて小市民的な小さいが確かな幸せをベースにしてもいるところがとても良い。

STEADY/SPEED(1996)

SPEEDの2作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高2位、1997年度の年間シングルランキングで5位を記録した。

テレビドラマ「イタズラなKiss」の主題歌であった。沖縄アクターズスクール出身の4人組女性ダンス&ボーカルグループで、アイドルのようでもあるのだが、それにしてはパフォーマンスがわりと本格的だという特徴は、当時としてはかなり珍しかったのである。

「世界中でたったひとりの あなたに出逢えたこと」というところがやはり最も印象的なのだが、「泣きそうな自分に負けないで」とセルフエンパワメント的なメッセージ性もかなり重要である。

音楽的にはコンテンポラリーなR&Bを取り入れているところも、わりとカッコいいものとして受け入れられもする要因となり、J-POPのダンスミュージック化を促すことにもつながったような気がする。

YES〜free flower〜/MY LITTLE LOVER(1996)

MY LITTLE LOVERの6作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」劇中にて、All or Nothingというバンドの「Free Flower」という楽曲として演奏されていた。

イントロがオルタナティブロック的に歪んだサウンドであり、それでいて歌はMY LITTLE LOVERのakkoによる真骨頂とでもいえるタイプのものであり、そのあたりの絶妙なバランス感覚がとても良い。

どこか不安で悲しい気持ちについて歌われた楽曲ではあるのだが、「寂しさも yes, yes」をはじめ、すべてにおいて肯定的でもあるところが特徴である。