邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1995, Part.3
若草の頃/カヒミ・カリィ(1995)
カヒミ・カリィのミニアルバム「LEUR L’EXISTENCE~「彼ら」の存在」に収録された楽曲である。
架空の映画サウンドトラックがコンセプトで、プロデューサーならぬ音楽監督は小山田圭吾である。「渋谷系」的なクールでスタイリッシュなムードでありながら、絶妙にオーガニックにも感じられるところが特徴である。
「私達が手をつなぐ時 すべての風景は理想へと変わる」「本当は私達 何でも出来るはずね あの虹だって飛び越えられる」といったカヒミ・カリィ自身によるわりとストレートな日本語の歌詞やハーモニカの音色、ムッシュかまやつとのデュエットであるところなどもとても良い。
シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜/Mr.Children(1995)
Mr.Childrenの9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで3週連続1位、年間シングルランキングでは5位を記録した。
「恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム」というような身も蓋もなさが骨子かもしれないのだが、「友人の評価はイマイチでも She So Cute」をはじめ全体にまとまっていないような印象もあり、しかしそれこそが恋している瞬間のリアルな感情に近いのかもしれない。
ミュージックビデオも含め、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズからの影響が強く感じられもする。
Hello, Again〜昔からある場所〜/MY LITTLE LOVER(1995)
MY LITTLE LOVERの3作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで2週連続1位、年間シングルランキングで6位を記録した。
Mr.Childrenのプロデューサーとして大ブレイクしていた小林武史がメンバーとしても加入するのはこの後、アルバム「evergreen」リリースのタイミングであり、この時点ではまだakkoと藤井謙二の2人組ユニットである。とはいえ、プロデュースのみならずソングライティングにも小林武史は深くかかわっていた。
テレビドラマ「終らない夏」の主題歌として大ヒットしたのだが、ドラマそのものは様々な問題が発覚したため、後に視聴することが困難になった。
「記憶の中でずっと二人は生きて行ける」というフレーズが印象的なとても良い楽曲で、ポップなメロディーにakkoの味のあるボーカルが絶妙にマッチしている。
満月の夕/ソウル・フラワー・ユニオン(1995)
ソウル・フラワー・ユニオンの2作目のシングルである。
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の後、メンバーの伊丹英子の発案により、被災者を励ますための出前出張ライブがソウル・フラワー・モノノケ・サミット名義で開始される。
被災地でのライブということで電気は使わず、エレキギターの代わりに中川敬がその当時に興味を持って弾きはじめていた三線を演奏し、マイク代わりに阪神タイガースの応援用メガホンを使っていたという。
その際に見た被災地の現実やそれに向き合う人々の姿をテーマに、中川敬とヒートウェイヴの山口洋によって共作されたのが、この楽曲である。ソウル・フラワー・ユニオン、ヒートウェイヴ、それぞれのバージョンが存在し、歌詞は異なったものになっている。
その後、この曲は広く知られるようになり、様々なアーティストたちによってカバーされているが、特にソウル・フラワー・ユニオン、ヒートウェイヴ、両方の歌詞が混ざったガガガSPによるバージョンは2003年にリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高11位を記録している。
LOVE PHANTOM/B’z(1995)
B’zの18作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングでは10位を記録した。
1988年にデビューして以降、最初にオリコン週間シングルランキングで1位になったのは5作目の「太陽のKomachi Angel」だが、14作目の「Don’t Leave Me」からは2024年1月時点での最新シングル「STARS」まで、40作以上連続して1位に輝いている。つまりずっと売れに売れまくっているわけだが、90年代における代表曲といえば、この「LOVE PHANTOM」が挙げられがちである。
クラシックロック的な快感をエッセンスとして抽出し、ポップでキャッチーなJ-POPソングとして展開することにかけては天才的ともいえるのだが、そこにデジタルビートが導入されているところなどもとても良い。
残酷な天使のテーゼ/高橋洋子(1995)
高橋洋子の11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでの最高位は27位なのだが、テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマ曲としてとても有名で、JOYSOUNDが発表した平成のカラオケランキングでは1位に輝いている。
テレビアニメそのものも後に幾度にもわたり映画化されるなど、サブカルチャー的な人気を経てスタンダードとしての評価が定着してもいるのだが、それ以上にこのオープニングテーマ曲が広く知られているように感じられる。
タイトルのみならず歌詞の内容もそれほど単純明快ではなく、なかなかよく分からないようなところもあるのだが、そのあたりも寧ろ人気の要因になっているかもしれず、とにかく歌っておけば確実に盛り上がる楽曲として知られがちなのはすごいことである。
恋におちたら/サニーデイ・サービス(1995)
サニーデイ・サービスのとても良いアルバム「東京」から先行シングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングにはランクインしていないのだが、初期の代表曲の1つとして知られる。
「渋谷系」的なクールでスタイリッシュできらびやかな感じが受けている一方で、よりフォーキーでオーガニックなタイプの音楽も支持されはじめていて、はっぴいえんどなどが参照されがちでもあった。
オーセンティックなフォークロック的であるところが寧ろ新しくも感じられ、「晴れた日の朝には 君を誘ってどこかへ行きたくなるような気分になったりする」というような普段着的なフレーズが甘い歌声で歌われているところなどがとても良い。
ナイトクルージング/フィッシュマンズ(1995)
フィッシュマンズのとても良いアルバム「空中キャンプ」からの先行シングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高58位を記録した。
レゲエやロックステディなどの要素を取り入れた音楽をやっているバンドとして知られていたフィッシュマンズは、そのサウンドをより音響派的なものへと進化させていった。
レーベルの移籍や制作スタジオの設立といった環境の変化、さらには中心メンバーでソングライターの佐藤伸治が運転免許証を取得し、車を買ったことによって、運転中の車窓から見える景色にインスパイアされて書かれた楽曲だともいわれる。
ガッツだぜ‼︎/ウルフルズ(1995)
ウルフルズの9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。
ソウルミュージックからの影響を感じさせるロックバンドとしてなんとなく認知されてはいたような気もするのだが、ディスコソング的な要素を取り入れたこの曲のヒットで一気に知名度を上げたような印象がある。
「ガッツだぜ」というフレーズは、KC&ザ・サンシャイン・バンドのヒット曲「ザッツ・ザ・ウェイ」にインスパイアされたものだともいわれる。