邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1982, Part.2

スローモーション/中森明菜(1982)

中森明菜のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高30位を記録した。

当時のキャッチコピーは「ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)」というよく分からないものであった。「出逢いはスローモーション」というフレーズが印象的なこの曲はアイドルのデビュー曲としてはやや地味な印象があったのと、他の新人アイドルたちと比べてリリースが少しだけ遅かったような気がする。

しかし、来生えつこ・来生たかお姉弟によるこの楽曲は純粋に評価が高く、アイドルポップスということを度外視して、とても良い曲としても知られていたような気がする。中森明菜のボーカルに初々しさが残っているところもかなり良い。

聖母たちのララバイ/岩崎宏美(1982)

岩崎宏美の28作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで4週連続1位、年間シングルランキングで3位、「ザ・ベストテン」では5週連続1位で年間2位、「第13回日本歌謡大賞」で大賞、「第8回日本テレビ音楽祭」でグランプリなどを獲得している。

元々は日本テレビ系の2時間ドラマシリーズ「火曜サスペンス劇場」のエンディングテーマとして1コーラスだけがつくられていたが、番組に問い合わせが殺到したことなどがきっかけでフルバージョンを制作し、レコードとして発売することが決まったようである。

「この都会は戦場だから 男はみんな傷を負った戦士」というようなことが歌われているのだが、岩崎宏美の素晴らしい歌唱が説得力をあたえているように感じられる。

TVの国からキラキラ/松本伊代(1982)

松本伊代の3作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高15位、「ザ・ベストテン」では最高9位を記録した。

作曲はデビューシングル以来、継続して筒美京平、作詞は人気絶頂のコピーライター、糸井重里である。とにかく徹底的に表層的であり、これぞ80年代アイドルポップスと断言したくなる超名曲であり、松本伊代の個性的な声質がまたとても良い。

特に「ねえ 君ってキラキラ」のセリフのところは至高であり、「カンニングさえサラサラ」はさすがに調子に乗りすぎなような気もしなくはないのだが、それすらも勢いで押し切ってしまうポップ感覚が最高である。

それでいて、恋をすると目に映るすべてのものがキラキラと輝いて見える、というようなわりとベタなテーマを実は扱っているところもとても良い。

ラ・セゾン/アン・ルイス(1982)

アン・ルイスの20作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、「ザ・ベストテン」共に最高3位のヒットを記録した。作詞が三浦百恵で作曲が沢田研二というあまりにも豪華なライター陣によって書かれた楽曲であり、マイルドにニューウェイブ的なエッジも効いた編曲は伊藤銀次によるものである。

アン・ルイスにとっては長男の出産後、育児のための休業から復帰して最初のシングルであり、すでに芸能界を引退していた三浦百恵が以前から友人だったこともあり、一度限りという条件で作詞を引き受けた。沢田研二には「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」の路線でと作曲のオファーがされたということで、とてもカッコいい歌謡ロックチューンに仕上がっている。

夏のヒロイン/河合奈保子(1982)

河合奈保子の9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

歌唱力には定評がある上に水着グラビアでもひじょうに人気があった河合奈保子はこの時点ですでに新曲を出せばベストテン入りという状態になっていたのだが、特にこの曲はその明るいキャラクターをも含めた魅力がフルに発揮された名曲だということができる。

特に「ときめいて tropical feeling」などというよく分からないのだが、確かに感じることはできるような気もするフレーズなどが完全にハマっているところなどがとにかくかなりすごい。

ロマンチスト/ザ・スターリン(1982)

ザ・スターリンのアルバム「STOP JAP」の1曲目に収録され、シングルカットもされた楽曲である。シングルは特にヒットしたというわけでもないのだが、アルバムはオリコン週間アルバムランキングで最高3位と、当時の日本のパンクバンドとしてはかなり売れていたということができる。

「吐き気がするほどロマンチック」だぜというフレーズの印象がひじょうに強いのだが、そこに至るまでに様々な主義者に対しての嫌悪感のようなものが皮肉を込めて吐き出されている。

ハートブレイク太陽族/スターボー(1982)

スターボーのデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高98位を記録した。

細野晴臣が作曲・編曲を手がけた音楽的にはテクノ歌謡なのだが、宇宙からやってきた性別不明の3人組アイドルという設定にのっとり、松本隆による歌詞は「ハートブレイク気分に火をつけて 俺から不良になっちまう」というように男性言葉である。

とにかくかなり不思議な楽曲ではあるのだが、かなりの中毒性もあり、80年代アイドルポップスを語る上ではもしかすると外せないのではないかと考えている人たちも少なくはないような気もする。

この時点でのグループの正式名称は宇宙三銃士スターボーだったのだが、次のシングル「たんぽぽ畑でつかまえて」ではスターボーになり、衣装や曲調もごく普通の女性アイドルグループ的なものになっていた。

小麦色のマーメイド/松田聖子(1982)

松田聖子の9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングや「ザ・ベストテン」などでは当然のように1位に輝いていた。

「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」に続き、3曲連続の呉田軽穂こと松任谷由実楽曲で、しかもそのすべてが名曲というすごいことになっていた。

この曲はより大人の雰囲気に加え、「嫌い あなたが大好きなの」「嘘よ 本気よ」というような恋する女性の絶妙に微妙な心理描写が特徴であり、それをヴィヴィッドに表現している松田聖子のボーカルパフォーマンスもとても良い。

すみれSeptember Love/一風堂(1982)

一風堂の6作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高2位、「ザ・ベストテン」では1位に輝いた。

カネボウ化粧品のCMソングとして使われていたこともあり、ニューウェイブ的な楽曲としては異例ともいえるほどの大ヒットとなった。

この曲がヒットしていた頃、中心メンバーの土屋昌巳はイギリスのニューウェイブバンド、ジャパンのツアーに参加していたため、「ザ・ベストテン」などにはロンドンからの中継で出演したりもしていた。

1997年にはヴィジュアル系ロックバンドのSHAZNAによってカバーされ、オリコン週間シングルランキングで最高2位のヒットを記録している。