邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1981, Part.2

君は天然色/大滝詠一(1981)

大滝詠一のアルバム「A LONG VACATION」の1曲目に収録され、シングルでもリリースされた。オリコン週間シングルランキングでは最高36位を記録している。

フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド的な音楽を日本のポップミュージックとして実現した本来ならばなかなか実験的な音楽のはずなのだが、これが大いに売れてしまい、「A LONG VACATION」はこの年のオリコン年間アルバムランキングで寺尾聰「Reflection」に次ぐ2位を記録する。

作詞はアルバムに収録されたほとんどの楽曲と同様に松本隆によるものだが、「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」のフレーズなどには、妹を病気で亡くしたことの影響が色濃く出ているという。

カナリア諸島にて/大滝詠一(1981)

大滝詠一のアルバム「A LONG VACATION」に収録された楽曲である。

このアルバムのカジュアルなリゾート感覚を最も象徴しているのは、「君は天然色」よりもおそらくこの曲である。永井博のイラストによるこのアルバムのレコードジャケットは、当時インテリア的にも好まれていたような気がする。

カナリア諸島は実在する地名だが、作詞をした松本隆は当時はまだ現地に行ったことがなく、イメージだけで書き上げたのだという。

このなんとなくフィクショナルな感じが80年代的だったのではないかと思えたりもするのだが、それゆえに時代を超越したエバーグリーンな魅力を放っているような気もする。

長い夜/松山千春(1981)

松山千春の10作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングで5位、「ザ・ベストテン」でも1位に輝いた。

1980年のオリコン年間アルバムランキングで社会現象的ともいえるブームを巻き起こしたイエロー・マジック・オーケストラ「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」を抑えて1位だったのが松山千春「起承転結」であったように、現実は常に通り一遍ではありえないということである。

とはいえ、松山千春もこの楽曲ではよりライトでポップな音楽性になっていて、あれだけ拒んでいたテレビ出演もライブ会場からの中継ではあったが久々に果たした。

夏の扉/松田聖子(1981)

松田聖子の5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、「ザ・ベストテン」では最高2位を記録した。

作曲はこの前のシングル「チェリーブラッサム」に続いてチューリップの財津和夫で、このあたりからニューミュージック系のアーティストを作家として起用する流れが生まれていったような気もする。

「フレッシュ! フレッシュ! フレッシュ! 夏の扉を開けて私をどこか連れていって」というわけで、夏という年間で最高の季節を前に否が応でも盛り上がらずにはいられない気分をヴィヴィッドに表現した、とても良い楽曲である。

まちぶせ/石川ひとみ(1981)

石川ひとみの11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高3位のヒットを記録した。

1978年にデビューした石川ひとみはNHKの人形劇「プリンプリン物語」に主役の声優として抜擢されたり、音楽番組「レッツゴーヤング」で司会を務めたりタレントとしてかなりの知名度があったのだが、ヒット曲にはなかなか恵まれず、このシングルを最後に歌手を辞めようとすら考えていたという。

この曲は荒井由実がかつて三木聖子に提供した楽曲のカバーバージョンであり、「好きだったのよあなた 胸の奥でずっと もうすぐわたしきっとあなたをふりむかせる」というフレーズなど、恋する女性の秘めた想いをヴィヴィッドに表現した内容が大いに受けていたような気がする。

メモリーグラス/堀江淳(1981)

堀江淳のデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで最高3位、「ザ・ベストテン」で最高7位を記録した。

「水割りをください 涙の数だけ」という歌詞ではじまる失恋ソングで、その中性的ともいえるボーカルも絶妙にハマり、とても良い感じのヒット曲になったような気がする。

その後、なぜか謎に死亡説が流布されたりもするが、それを逆手に取ったタイトルでツアーを行ったり、実は水割りが苦手だということから「誤解だらけ」と題したこの曲の替え歌を発表したりもしている。

お嫁サンバ/郷ひろみ(1981)

郷ひろみの38作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

ラテン調ともいえる陽気で軽快な曲調が特徴的だが、おそらくサンバではない。とはいえ、「123バ 223バ」という身も蓋もないフレーズには抗いがたい魅力を感じずにはいられない。

美しい女性に対して結婚を急ぐ必要はない、一人のものにならないで、と歌われているのだが、この曲のヒットが日本における晩婚化や少子化の流れに少なからず影響をあたえたかどうかは定かではない。

テレフォン・ナンバー/大橋純子(1981)

大橋純子の9作目のアルバム「Tea For Tears」に収録された楽曲である。

この年にも「シルエット・ロマンス」というとても良い曲をヒットさせたりもしているのだが、シティポップリバイバル後の現在、やはりこのような曲こそを名曲として挙げておいた方が良いのではないかというような気はなんとなくしている。

2020年代のある日に下北沢のペットショップで流れていたラジオ番組で、国民的地元のツレを自称する絶妙に良い感じのお笑い芸人、ヒコロヒーがリスナーから竹内まりや「プラスティック・ラブ」かオリジナル・ラヴ「接吻」がリクエストされていたにもかかわらず、個人的にお気に入りだからという理由でこの曲をかけていたことが思い出される。

守ってあげたい/松任谷由実(1981)

松任谷由実の17作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、「ザ・ベストテン」共に最高2位を記録した。アルバムはずっと売れ続けていたのだが、シングルでは久々のヒットだったような気がする。

薬師丸ひろ子が主演した映画「ねらわれた学園」の主題歌で、キャッチコピーは「才能のきらめきは不思議世代を惑わすか」であった。つまり、それまでのファン層よりも下の世代をターゲットにしていたと思われる。そして、見事それに成功したといえる。

荒井由実時代に三木聖子に提供した楽曲を石川ひとみがカバーした「まちぶせ」も同時期にヒットしていて、ユーミン人気は新しい世代をも巻き込んで、より大きなものになっていったような気がする。