GREAT3の名曲ベスト10

1968年5月23日生れの片寄明人を中心とする3ピース・ロック・バンド、GREAT3は、ロッテンハッツというバンドのメンバーであった3人によって結成され、1995年にシングル「Fool & The Gang」でデビューした。切なくて甘い歌詞やメロディー、洋楽的なセンスが感じられる音楽性によって、一部の音楽ファンからは特に熱烈な支持を得ることになった。活動休止期間メンバーチェンジをへて、現在は片寄明人、白根賢一、janの3人編成となっている。今回はそんなGREAT3の楽曲の中から、これは特に名曲なのではないかと思える10曲をあげていきたい。

10. Soul Glow (1998)

GREAT3の4作目のアルバム「WITHOUT ONION」は切なさが心に沁みわたるような曲がひじょうに多く、味わい深いアルバムなのだが、先行シングルとしてリリースされたこの曲はファンキーに振り切っていて、これもまたとても良い。「誰ひとりとしてわかりあえない 冷酷かつ無情な世界」ではあるが、「愛だけは悪戦苦闘しても忘れたくない 疑いたくもない」ということが歌われている。キラキラした衣装が印象的なミュージック・ビデオもインパクトが俄然強めである。

9. Ruby (2001)

GREAT3の6作目のアルバム「When you were a beauty」からの先行シングルで、洗練されていて聴きやすい楽曲でもあるのだが、「心から血が流れ出して止まらない」「愛しているから愛さないで」といったフレーズにあらわれているように、込められた切なさは致死量レベルといっても過言ではない。

8. 玉突き (1997)

GREAT3の3作目のアルバム「ROMANCE」からの先行シングルで、ビリヤードのことを歌っているようでいて、「部屋の隅 穴をあけ 涙を突き落とし あぁ ひまつぶし」という具合である。それ以前に、雨上がりの日曜日にすることが何もなく、デリバリーのピザを頼んだものの1人だけで食べるには大きすぎた、というくだりがある。音響的にも実験性が感じられるのだが、何らかのかたちで恋が終わった後の無気力状態というかぼんやりと虚脱した状況をヴィヴィッドに表現しているように感じられる。同じアルバムからは「R.I.P.」「バナナ」「ナツマチ」なども必聴である。

7. Last Song (1995)

GREAT3の2作目のアルバム「METAL LUNCHBOX」の最後に収録された曲である。「こうして僕らは少しずつすりきれながら それでも最後は笑えると こんなになるまで信じてた」「どんなに愛されても愛していても 永遠なんてことはありえない」といった、ビターな真実が歌われるのだが、「どうしても君がいとおしい 目の前で笑う君が全てだ これでいい そう これでいいんだ」と結論づけられもする。時々、これこそが究極のラヴソングなのではないかと思ったりもするのだが、まったく理解する必要がなくてもそれはそれで素敵な人生である。一方で、ある状況に置かれた人々にとっては救いとして機能する可能性も秘めた楽曲である。

6. Golf (1998)

アルバム「WITHOUT ONION」に収録された、アコースティックとテクノポップ的な要素が絶妙にミックスされたとても良い曲である。「心は18個の穴開いたゴルフコース」であり、「大人になりさえすれば全てうまくゆく そう思っていたのになんでこんな悲しい音が」というフレーズが象徴するような内容が歌われている。

5 STAR TOURS (1996)

アルバム「METAL LUNCHBOX」からの先行シングルで、「きっと死ぬまでギリギリなんだ 愛を頼りながら 寂しい夜をのりこえてゆこう」というようなことが、キャッチーなメロディーと演奏に乗せて歌われている。快活なロック・サウンドでありながら、エンリオ・モリコーネ的なシンセサイザーのフレーズなど、音楽的な仕掛けもいろいろ楽しめる。

4. DISCOMAN (1996)

これもまた、アルバム「METAL LUNCHBOX」からの先行シングルである。「かなわない夢もかなえてみせると 僕らはいつも愛を重ねる」からのところが王道的にポップでキャッチーでありながら、その奥に狂気スレスレの切実さのようなものも感じられ、たまらなく良い。「バランスとれぬまま 笑ったり泣いたり繰り返す」ような状況に相応しいポップソングである。

3. Little Jの嘆き (1996)

これもまたアルバム「METAL LUNCHBOX」からだが、先行シングルではなく、アルバムがリリースされてからシングル・カットされた。ミュージック・ビデオがTVKテレビの「ミュージック・トマトJAPAN」でよく流れていた記憶がある。「神様 あぁ 勝ち目はない 僕はダメだよ 憎めない さよならもいえない あぁ」ということに尽きるわけだが、取り壊された家の門だけが残されていて、その応える人のいないインターホンを意味もなく押しているいちに涙がこぼれてきた、というようなくだりが狂気スレスレすぎてたまらなく良い。このような危うげな状態がとても聴きやすいサウンドに乗せて歌われている。さらに、「悲しいわけじゃないんだ 少し憂うつな気持ちだっただけさ」と続くのだからたまらない。

2. Oh Baby (1995)

GREAT3の2枚目のシングルで、デビュー・アルバム「Richmond High」にも収録された。「君が離れてゆくのに 何ができる? 教えてくれないか」と、恋の終わりを歌ったバラードであり、ここまでならばよくありがちなようにも思えるのだが、とにかく曲がとても良いのに加えて、「昔の恋も チョコレイトでも 君が好きなものはみんな嫌いだ」とまで歌われているところに非凡さを感じずにはいられない。アレンジには中期ビートルズ的なフィーリングも感じられる。

1. Fool & the Gang (1995)

GREAT3のデビュー・シングルで、アルバム「Richmond High」にも収録された。喪失と再生ではなく、喪失にとどまったままで、そこからなかなか抜け出すことができない。そのような状況というのは人にはわりとありがちであり、それについて歌ったポップソングも少なくはない。とはいえ、ここまで突き抜けてポップでキャッチーでありながら、戻ることはできないと分かってはいるのだが、輝いていた過去の幻影から逃れることができないということがずっと歌われている曲というのは、実はわりとレアなのではないだろうか。「愛してたものはどこにもない それだけが全てだったのに 君の姿さえ思い出せない」というくだりには、カタルシスさえ感じられる。