洋楽ロック&ポップス名曲1001:1993, Part.3

Mazzy Star, ‘Fade into You’

アメリカのオルタナティブロックバンド、マジー・スターのアルバム「妖しき夜」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高44位、全英シングルチャートで最高48位を記録した。

ボーカリストのホープ・サンドヴァルが愛する相手と魂のレベルでつながりたいと願う、深刻な片想いについて歌った切実なバラードである。

当時それほど大きくヒットしたわけではないのだが、後に様々な映画やテレビシリーズで使われ続けるうちに、ラヴソングの名曲として知られるようになっていった。

Elastica, ‘Stutter’

ロンドン出身のインディーロックバンド、エラスティカのデビューシングルで、7インチアナログ盤で5,000枚のみの限定リリースだったためか、1日で売り切れたにもかかわらず全英シングルチャートにはランクインしていない。後に全米シングルチャートでは最高65位を記録した。

中心メンバーのジャスティン・フリッシュマンはスウェードの元メンバーでブレット・アンダーソンのパートナーでもあったが、別れてバンドも脱退後、ブラーのデーモン・アルバーンと付き合っていることでも話題になっていた。

「NME」が大きく取り上げ、1994年のトレンドになるはずだったNWONW(ニューウェイヴオブニューウェイヴ)の中心的なバンドだったが、代わりにブリットポップが流行するとその文脈で語られるようになった。

酔った男性の勃起不全という時折起こる深刻な問題を取り扱った、クールでシャープなインディーポップチューンである。

Leftfield feat. John Lydon, ‘Open Up’

ロンドン出身のエレクトロニックミュージック、当時の日本のCDショップでの分類上はテクノデュオ、レフトフィールドがセックス・ピストルズやパブリック・イメージ・リミテッドでの活躍でお馴染み、ジョン・ライドンのボーカルをフィーチャーした楽曲で、全英シングル・チャートで最高13位を記録している。

レフトフィールドによる当時のトレンド感も感じられるテクノサウンドにのせて、ジョン・ライドンのポップな厭世観とでもいうべきオリジナリティ溢れるボーカルが炸裂しているのだが、この曲でもハリウッドを焼き尽くせとひじょうに威勢がよい。

Wu-Tang Clan, ‘C.R.E.A.M (Cash Rules Everything Around Me)’

ウータン・クランのデビューアルバム「燃えよウータン」からシングルカットされ、全米シングルチャートでは最高60位だったのだが、後のヒップホップ音楽にはこの順位が想像させる以上のひじょうに強い影響をあたえている。

チャーメルズ「アズ・ロング・アズ・アイヴ・ガット・ユー」をサンプリングしたトラックにのせて、メンバーのレイクウォン、インスペクター・デック、メソッド・マンがスラム街に育ち、路上でドラッグを密売しながら生き延びてきた経験を語っている。

現金という人生における重要な問題について真正面から取り上げた楽曲であり、後の様々なラップソングにおいて引用されたりパロディ化されたりもした。

Snoop Doggy Dogg, ‘Gin and Juice’

スヌープ・ドギー・ドッグのデビューアルバム「ドギースタイル」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高8位、全英シングルチャートで最高39位を記録した。

ドクター・ドレーのエポックメイキング的なアルバム「ザ・クロニック」に参加していたことによって、すでにかなり有名になっていたスヌープ・ドギー・ドッグだが、ソロデビューによって人気を不動のものとした。

とにかく最高のパーティーチューンなのだが、タイトルのジンとジュースは当時の若いプレイボーイの間でのトレンドだったらしいのだが、2024年になってこの曲にちなんだ缶入りカクテルが発売されたりもした。

Bikini Kill, ‘Rebel Girl’

ビキニ・キルが1993年に発表した楽曲で、いくつかのバージョンがそれぞれ異なったフォーマットでリリースされている。

ヒットチャートにはランクインしていないのだが、シーンの男性優位的な状況に一石を投じるべくフェミニズムとパンクロックとを結びつけたライオットガールムーヴメントを代表する楽曲として知られる。

内容は同性に対するラヴソングとなっていて、シングルとしてリリースされたバージョンはジョーン・ジェットによってプロデュースされている。

カート・コバーンの部屋の壁に「カートはティーン・スピリットの匂いがする」と書いて、ニルヴァーナ「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のタイトルにインスピレーションを与えたのは、ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナであった。

カート・コバーンは当時、ビキニ・キルのトビ・ヴェイルと付き合っていて、「ティーン・スピリット」は彼女が使っていたデオドラントのブランド名である。