洋楽ロック&ポップス名曲1001:1992, Part.1

Manic Street Preachers, ‘Motorcycle Emptiness’

マニック・ストリート・プリーチャーズのデビューアルバム「ジェネレーション・テロリスト」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高17位を記録した。邦題は「享楽都市の孤独」である。

マッドチェスターやインディーダンスがトレンドだった頃にパンクロック的なイメージを打ち出していたり、様々な行動や言動によって、熱心なファン意外からは懐疑的に見られてもいたマニック・ストリート・プリーチャーズだが、ドラマティックで批評的でもあるこの曲で多くのリスナーの認識を変えた。

高度資本主義社会が提供するきわめて消費主義的な若者文化の空虚さを、バイクのたとえなどを用いて表現した素晴らしい楽曲である。

ミュージックビデオは当時の東京や横浜などで撮影されている。

PJ Harvey, ‘Sheela-Na-Gig’

PJハーヴェイのデビューアルバム「ドライ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高69位を記録した。

タイトルの「シーラ・ナ・ギグ」はイギリスやアイルランドの古い建物に見られる裸体の彫刻で、女性器を大きく広げたりしているのが特徴である。

PJハーヴェイはこの曲にユーモアを込めたつもりだったのだが、フェミニストアンセムとして高く評価され、「NME」「メロディー・メイカー」といったインディーロック系メディアを中心に一躍、注目をあつめるようになった。

The Disposable Heroes of Hiphoprisy, ‘Television, the Drugs of the Nation’

アメリカのヒップホップグループ、ディスポーザブル・ヒーローズ・オブ・ヒップホップリシーのデビューアルバム「警告!」からのリードシングルである。

特に大きなヒットを記録したわけではないが、ギル・スコット・ヘロンなどにも通じるメッセージ性の強いスポークンラップが特徴で、批評家から高く評価されたり、U2などのオープニングアクトを務めたことなどでも話題になった。

この楽曲はアメリカにおいてテレビがいかに麻薬のように機能して、一般市民に偏見や恐怖を植えつけているか、というようなことをテーマにしている。

En Vogue, ‘My Lovin’ (You’re Never Goona Get It) ’

アメリカのR&Bグループ、アン・ヴォーグのアルバム「ファンキー・ディヴァス」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートで最高4位を記録した。

ジェームス・ブラウン「ザ・ペイバック」のファンキーなギターリフを効果的に用いたトラックにのせて、素晴らしいハーモニーで力強く歌われるのは別れる恋人に対する捨て台詞であり、次の機会には女性にもっと敬意を払うべきという主張をも伝えている。

ポップソングとしてのクオリティが純粋に高いのみならず、断定的で自信に満ち溢れたアティテュードが痛快で素晴らしく、時代を先取っていたようにも感じられる。

Blur, ‘Popscene’

ブラーが1992年にリリースしたシングルで、全英シングルチャートでは最高32位を記録した。この前の年に「ゼアズ・ノー・アザー・ウェイ」がトップ10入りし、ブレイクしたブラーだったが、当時このシングルは失敗と評価されがちであった。

インディー・ダンス的でもあったデビュー・アルバム「レジャー」の音楽性に比べるとより性急でパンキッシュであり、歌詞は当時の音楽シーンを皮肉ったものでもあった。

この曲が期待されたほどヒットしなかったこともあり、多額の借金を負うことになったブラーは絶望的なアメリカ・アーに駆り出され、深刻なホームシックに陥るが、それによって翌年のデフォルメされたイギリスらしさが特徴のアルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」が生まれた。

後にこの曲はブリットポップムーヴメントを振り返る上でひじょうに重要だったのではないかと、再評価されるようになった。

Pete Rock and C.L. Smooth, ‘They Reminisce Over You (T.R.O.Y.)’

ピート・ロック&CLスムースのデビューアルバム「メッカ・アンド・ザ・ソウル・ブラザー」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高58位、全米ラップトラックチャートでは1位を記録した。

ヘヴィ・D&ザ・ボーイズのトラブル・T・ロイとして知られるトロイ・ディクソンはメンバーの親友であったが、インディアナポリスでのショーにおいて転倒事故で亡くなり、その深い悲しみから生まれたのがこの曲であった。

トム・スコット・ウィズ・ザ・カリフォルニア・ドリーマーズ「トゥデイ」をサンプリングしたこの楽曲は、大切な人を失った悲しみに寄り添う名曲として、様々なメディアのベストソングリストに選曲され続けている。