洋楽ロック&ポップス名曲1001:1991, Part.3

Nirvana, ‘Smells Like Teen Spirit’

ニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高6位、全米シングルチャートで最高7位を記録した。

1980年代後半にアメリカのラウドでヘヴィーなオルタナティヴロックが盛り上がってはいっていたのだが、メインストリームで大ヒットするレベルではなかった。

ニルヴァーナの2作目のアルバム「ネヴァーマインド」は確かに売れそうな音づくりはされていたのだが、全米アルバムチャートでマイケル・ジャクソンやU2などの最新アルバムと肩を並べ、ついには1位になってしまうとは誰も予想していなかったのではないだろうか。

インディーロックからハードロックのリスナーまでをも取り込む音楽性と、楽曲の良さが高く評価されていたが、若者の苦悩というポップ・ミュージックにおいて定番ともいえるテーマをヴィヴィッドに扱いながら、その陰鬱さが高度資本主義社会のなれの果てを可視化し、批評しているようでもあった。

これ以降、オルタナティヴロックがメインストリームでも売れやすくなり、ベック「ルーザー」、レディオヘッド「クリープ」などもヒットさせたスラッカー感覚はこの時代を象徴する気分のようにもなった。

ネガティヴな現実を反映させながら、それらを意識と熱量で反転させていくポップ感覚が確実にあり、それは「ハロー、どれぐらいロウ?」と問いかけてくる。

タイトルはバンドビキニ・キルのキャスリーン・ハンナがカート・コバーンの部屋の壁にスプレーで書いた「カート・スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」という落書きに由来している。

カート・コバーンはビキニ・キルのトビ・ヴェイルと付き合っていたのだが、彼女が愛用しているティーン・スピリットというブランドのデオドランドの香りがカート・コバーンからもしているという意味なのだが、カート・コバーンはこのブランドのことをまったく知らなかったため、パンクロック的な反骨精神が感じられるフレーズとしてタイトルに採用したのであった。

Nirvana, ‘Come As You Are’

ニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高32位、全英シングルチャートでは最高9位を記録した。

キリング・ジョーク「エイティーズ」と似ているところもあることから、シングルカットにあたっては躊躇するところもあったようである。

この曲でカート・コバーンは銃を持っていないという歌詞を歌ってもいるのだが、数年後に遺体で発見された時の死因は、ショットガンで自分の頭を撃ち抜いたこととされていた。

ミュージックビデオは「ネヴァーマインド」のジャケットアートワークをモチーフしたものになっている。

Nirvana, ‘Lithium’

ニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」から3枚目のシングルとしてカットされ、全米シングルチャートで最高64位、全英シングルチャートでは最高11位を記録した。

「ネヴァーマインド」がヒットしはじめた頃、その音楽性についてビートルズ・ミーツ・レッド・ツェッペリンなどと評していたメディアもあったような気がするのだが、サウンドはラウドでヘヴィーだがメロディーはポップでキャッチー、そして、カート・コバーン自身がピクシーズにインスパイアされたと認めている轟音と静寂のギャップを利用した手法が良い感じに機能した楽曲ともいえる。

深い悲しみや心の痛みを和らげて、死なないために依存するものについて歌われているように感じられるが、それは薬物か宗教、あるいは別の何かのようでもある。

Red Hot Chilli Peppers, ‘Under the Bridge’

レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアルバム「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートで最高13位を記録した。

バンドのリードボーカリストであるアンソニー・キーディスが自らのヘロイン中毒とそれにともなう孤独について書いた個人的な詩をプロデューサーのリック・ルービンが見つけ、曲にすることを強くすすめた。歌詞やタイトルにも入っている橋は、アンソニー・キーディスがドラッグを買ってハイになるために通ったことがある場所である。

「City of Angels」と歌われているように、ロサンゼルスのことが歌われているのだが、この曲がアルバムからシングルカットされた少し後にロサンゼルス暴動が起こり、それとの関連性で聴かれることもあった。

異端的なハードコアファンクのイメージが強かったレッド・ホット・チリ・ペッパーズのメロディアスで情緒的な一面が広く知られるきっかけとなった楽曲でもある。

Teenage Fanclub, ‘The Concept’

ティーンエイジ・ファンクラブのアルバム「バンドワゴネスク」から2作目のシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高51位を記録した。

当時、最も勢いがあったイギリスのインディーレーベル、クリエイション・レコーズからリリースされたアルバムはアメリカの「SPIN」で年間ベストアルバムの1位、イギリスの「NME」ではニルヴァーナ「ネヴァーマインド」に次ぐ2位に選ばれるなど、高く評価されていた。

クラシックロック的なギターソロや美しいコーラスなどオーセンティックなところと、ラウドでヘヴィーなオルタナティヴロック的なところが程よく混じり合っているところがとても良い。

Shanice, ‘I Love Your Smile’

シャニースのアルバム「インナー・チャイルド」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャート、全英シングルチャートそれぞれにおいていずれも最高2位のヒットを記録している。

同じクラスの男子に恋をしている少女の気持ちを歌ったイノセントなラヴソングで、キャッチーなコーラスがひじょうに印象的である。

プロデューサーはナラダ・マイケル・ウォルデンで、ブランフォード・マルサリスのサックスソロやジャネット・ジャクソンとレネ・エリゾント・ジュニアの笑い声をもフィーチャーしている。

My Bloody Valentine, ‘Only Shallow’

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのアルバム「ラヴレス」(当時の邦題は「愛なき世界」)の1曲目に収録された楽曲である。アメリカではプロモーション用のシングルも制作され、モダンロックトラックスチャートで最高27位を記録した。

予定していた以上に時間と費用が莫大にかかり、クリエイション・レコーズを倒産させかけたともいわれるアルバムにはこのバンドにしか出せない革新性とポップ感覚が溢れていて、モダンクラシックとしての評価が定着するようになった。

轟音ギターと耽美的なボーカルが特徴で、似たような音楽性のバンドの多くに演奏する際にうつむいた状態でギターを弾いて、オーディエンスの方を向いていないイメージがあったことから、まるで自分が履いている靴を凝視しているようだという意味でシューゲイザーなどと呼ばれるようになった。

当初は一部のメディアによって使用され、自己陶酔的なアティテュードを揶揄するようなニュアンスもあったのだが、後にインディーロックのサブジャンル名としてすっかり定着した。

U2, ‘One’

U2のアルバム「アクトン・ベイビー」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高7位、全米シングルチャートで最高10位を記録した。

歴代ベストソングのリストでも上位にランクインしていることが少なくはなく、U2で最もポピュラーな楽曲だということができる。

「ワン」というタイトルからして一体感について歌われているようにも思われがちだが、実際には信心深い父親にゲイであることを告白する息子、浮気がバレたセックスレスの結婚生活を送る女性という2つの具体的なストーリーを元に歌詞は書かれていて、われわれは1つだが別々である、というようなメッセージが込められている。