洋楽ロック&ポップス名曲1001:1986, Part.1

Public Image Ltd., ‘Rise’

パブリック・イメージ・リミテッドのアルバム「アルバム」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高11位を記録した。

南アフリカのアパルトヘイト時代における人種的抑圧をテーマにし、古いアイルランドの祝福の言葉を引用したりもしているのだが、最もインパクトがあったのは後にジョン・ライドンの自伝のタイトルにもなる「anger is an energy(怒りはエネルギー)」というフレーズであろう。

ジョン・ライドンとビル・ラズウェルがプロデュースし、スティーヴ・ヴァイのギターやトニー・ウィリアムズのドラムスに加え、坂本龍一もフェアライトCMIでレコーディングに参加している。

Janet Jackson, ‘When I Think of You’

ジャネット・ジャクソンのアルバム「コントロール」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高10位を記録した。邦題は「あなたを想うとき」である。

すでに2作のアルバムをリリースしていたのだが、マイケル・ジャクソンの妹というイメージしかほとんどなかったのだが、ジミー・ジャムとテリー・ルイスがプロデュースした「コントロール」によって、ソロアーティストとしての存在感を本格的にアピールしたともいえる。

この曲は「恋するティーンエイジャー」「ナスティ」に続くアルバムから3曲目のヒット曲で、ジャネット・ジャクソンが全米シングルチャートで初めて1位を記録した楽曲となった。

カラフルでポップなミュージックビデオはジュリアン・テンプルが監督し、振り付けはポーラ・アブドゥルが担当した。

Prince and The Revolution, ‘Kiss’

プリンス&ザ・レヴォリューションのアルバム「パレード」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高6位を記録した。

贅肉を徹底的に削ぎ落としたサウンドは革新的であり、ミニマルでありながらクールなファンクネスを実現している。ポップソングとしてはかなり実験的なところもあり、レーベルもリリースを渋っていたということなのだが、結果的には大ヒットを記録した。

イギリスのオルタナティブロックバンド、エイジ・オブ・チャンスによるインダストリアル的なカバーも評判となったが、アート・オブ・ノイズが演奏しトム・ジョーンズが歌ったバージョンは全英シングルチャートで最高5位とイギリスではオリジナルを超える順位にランクインしていた。

The Blow Monkeys, ‘Digging Your Scene’

ブロウ・モンキーズのアルバム「アニマル・マジック」に先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高12位、全米シングルチャートで最高14位を記録した。

後にソフィスティポップと呼ばれることになる都会的で洗練された音楽性が特徴だが、歌詞のテーマはエイズに感染した人たちに対する世間からの偏見というシリアスなものであり、そこが高く評価されてもいる。

日本ではポスト「渋谷系」的なparis matchが2007年のアルバム「Our Favourite Pop」でカバーしているが、「Digging Your Scene」歌謡としては米米CLUBの1986年のアルバム「E・B・I・S」に収録された「トラブル・フィッシュ」を挙げておきたい。

Metallica, ‘Masters of Puppets’

メタリカのアルバム「メタル・マスター」からシングルカットされた楽曲で、当時のシングルチャートにはランクインしていないものの、バンドの代表曲であるのみならず、ヘヴィメタルやスラッシュメタルというジャンルにおいて最も重要な楽曲の1つとして知られる。

薬物依存をテーマにしたこの楽曲はスラッシュメタル的でありながら、デヴィッド・ボウイ「アンディ・ウォーホル」のリフを引用していたりもする。

2022年にNetflixの人気ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス」の第4シーズン最終回で効果的に使われたことがきっかけで、アメリカやイギリスのシングルチャートにランクインした。

Peter Gabriel, ‘Sledgehammer’

ピーター・ガブリエルのアルバム「SO」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高4位を記録した。

アルバムのために最後にレコーディングされた楽曲の1つで、ソウルミュージックからの影響を強く受けているが、シンセサイザーによる尺八のような音色が使われていたりもする。

楽曲そのものもプログレッシブなポップソングとして素晴らしいのだが、クレイアニメも使用したミュージックビデオがなんといっても印象的で、MTVビデオミュージックアワードでは9部門で受賞することになった。