洋楽ロック&ポップス名曲1001:1983, Part.2

Aztec Camera, ‘Oblivious’

アズテック・カメラのデビューアルバム「ハイ・ランド、ハード・レイン」に先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高47位を記録するが、その後に再リリースされ最高位を18位に更新した。邦題は「思い出のサニー・ビート」である。

日本ではネオアコースティックと呼ばれるジャンルで最も有名なアルバムの1曲目に収録された楽曲で、アコースティックなサウンドと天才少年として評判にもなったロディ・フレイムの卓越したソングライティングが大いに受けた。

シンセポップ全盛の時代にネオアコースティックと呼ばれた音楽は新鮮に響いたが、この曲は特にロディ・フレイムによってポップヒットを意図して書かれた。

The Police, ‘Every Breath You Take’

ポリスのアルバム「シンクロニシティー」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで4週連続、全米シングルチャートで8週連続1位の大ヒットを記録した。グラミー賞では最優秀楽曲賞と最優秀ポップパフォーマンス賞(デュオまたはグループ、ボーカルあり)を受賞している。

「見つめていたい」の邦題でも知られるこの楽曲は美しいラブソングとして受け止められることが多く、それが大ヒットにつながったようでもあるのだが、実際には執着的な独占欲について歌われていて、ゴドレイ&クレームが監督したミュージックビデオでスティングが怒っているように見える理由も、この曲が不吉で醜いからだと語られている。

この楽曲とアルバムは商業的にも批評的にも大成功をおさめるのだが、バンド内の人間関係は修復が不可能なレベルで悪化していて、その後で次のアルバムが制作されることもなかった。

スティングのソロデビューアルバム「ブルー・タートルの夢」からリードシングルとしてリリースされた「セット・ゼム・フリー」は、もしも誰かを愛しているとするならば彼らを自由にしなさい、と「見つめていたい」のストーカー的な支配欲を否定する内容になっている。

1997年にはパフ・ダディ&フェイス・エヴァンスがノトーリアス・B.I.G.を追悼したシングル「アイル・ビー・ミッシング・ユー〜見つめていたい」を大ヒットさせるのだが、この曲ではポリス「見つめていたい」が引用されていたため、ソングライターのスティングにも多額の印税が入り、それで子供たちを大学に通わせたなどとも語られていた。

Talking Heads, ‘This Must Be the Place (Naive Melody)’

トーキング・ヘッズのアルバム「スピーキング・イン・タングズ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高62位、全英シングルチャートで最高51位を記録した。

同じアルバムからは「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」が全米シングルチャートで最高9位のヒットを記録していて、当時は間違いなくこちらの方が有名であった。

しかし、オスティナートと呼ばれる同じフレーズの繰り返しを用いた素朴なメロディーと、ポストモダン的なイメージが強いトーキング・ヘッズには珍しい純粋なラブソングであることが受けて、時を経るにつれてとても人気があり高く評価されている曲の1つとして知られるようになった。

Bananarama, ‘Cruel Summer’

バナナラマのアルバム「愛しのロバート・デ・ニーロ」にも後に収録されたシングルで、全英シングルチャートで最高8位、全米シングルチャートでは翌年に映画「ベスト・キッド」で使われた後に最高9位を記録した。当時の邦題は「ちぎれたハート」であった。

サマーソングには陽気でアップリフティングなものも多いが、この曲では暑い夏に恋人が去って一人ぼっちという残酷な状況が描写されている。

ミュージックビデオは猛暑のニューヨークで撮影されたが、昼食で訪れた地元の居酒屋で知り合った港湾労働者からコカインの小瓶を分けあたえられ、人生で初めて体験した。その前と後に撮影されたシーンでは、メンバーのテンションが明らかに違っている。

R.E.M., ‘Radio Free Europe’

R.E.M.がデビューシングルとしてインディーレーベルからリリースした後、IRSレコードと契約後に再レコーディングしたバージョンが全米シングルチャートで最高78位を記録した。

当時のメインストリームで受けていた音楽とはまったく異なるオルタナティブロックで、歌詞もかなり不明瞭だったのだが、大学生たちによるカレッジラジオでブレイクし、新しいマーケットの存在を知らしめたりもした。

この曲を収録したデビューアルバム「マーマー」が「ローリング・ストーン」誌でマイケル・ジャクソン「スリラー」を抑えて年間ベストアルバムに選ばれたことも話題になった。

タイトルはアメリカ政府が運営するヨーロッパや中東向けのラジオネットワークに由来するが、歌詞の内容とは関係がなく、語呂の良さで選ばれたにすぎないということである。

Madonna, ‘Borderline’

マドンナのデビューアルバム「バーニング・アップ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高10位、全英シングル・チャートでは最高56位だったが、1986年に再リリースされた際には最高2位を記録した。

マドンナのポップアイコンとしての認知がまだ広がっていなかった頃、このポストディスコ的な楽曲はポップソングとしての純粋な強度で一般大衆的な音楽リスナーを魅了した。

恋人同士のナチュラルな諍いのようでありながら、異性間の恋愛における女性のあり方を再定義していたり、ミュージックビデオではヒスパニック系のボーイフレンドとの関係を表現するなど、すでに社会的にもひじょうに価値があることをやっている。

Billy Joel, ‘Uptown Girl’

ビリー・ジョエルのアルバム「イノセント・マン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位、全英シングル・チャートでは1位を記録した。

ビリー・ジョエルが幼い頃に好んで聴いていたであろうオールディーズからの影響が感じられる楽曲であり、都会で暮らす裕福な女性に憧れる下町のそれほど裕福ではない男性の心情が歌われている。

イギリスでは男性アイドルグループのボーイゾーンがカバーし、全英シングルチャートで1位を記録したり、日本ではKANのJ-POPクラシック「愛は勝つ」に影響をあたえたことなどでも知られる。