洋楽ロック&ポップス名曲1001:1977, Part.1

David Bowie, “Sound and Vision”

デヴィッド・ボウイのアルバム「ロウ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高3位を記録した。

ブライアン・イーノが制作にかかわり、クラウトロックからの影響も感じられる実験的な音楽性が高く評価されているアルバム収録曲の中でも最もシングル向きな楽曲だといえる。

キャッチーでアップリフティングではあるのだが、ドラッグ漬けの日々から脱しようともがいていた当時のデヴィッド・ボウイの心境を反映した深刻な内容にもなっている。

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティと当時の妻であるメリー・ホプキンがコーラスで参加している。

Fleetwood Mac, “Dreams”

フリートウッド・マックのアルバム「噂」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで1位、全英シングル・チャートで最高24位を記録した。2020年にはTikTokで効果的に使われたことでリバイバルし、全米シングル・チャートで最高12位、全英シングルチャートで最高35位を記録している。

当時、フリートウッド・マックはバンド内でカップルや夫婦が別れるなどして、いろいろしんどい状況にあったわけだが、楽曲でもそのことにふれられていて、しかもすごく売れまくったのであった。

アルバムからの先行シングル「オウン・ウェイ」はリンジー・バッキンガムが別れたスティーヴィー・ニックスにあてた楽曲で、全米シングルチャートで最高10位を記録したのだが、次にシングルカットされたこの曲は逆にスティーヴィー・ニックスがリンジー・バッキンガムに向けて歌っている。

あなたは自由が欲しいと言うけれど、別れた後で失ったものに気づいて、寂しさでおかしくなる、というようなことを歌っている。これをお互いが同じバンドのメンバーとして一緒に歌ったり演奏していたというのも実に味わい深いということができる。

Television, “Marquee Moon”

テレヴィジョンのデビューアルバムにして歴史的名盤「マーキー・ムーン」のA面最後に収録されたタイトルトラックで、9分58分にも及ぶ長い曲である。シングルカットの際にはA面とB面に分けて収録され、全英シングルチャートでは最高30位を記録した。

ニューヨークを拠点に活動するバンドではあったのだが、当時、全米チャートにはシングルもアルバムもランクインしていなく、イギリスではそこそこ売れていたようである。

トム・ヴァーレインとリチャード・ロイドによるギターの掛け合い、文学的でアート感覚に溢れた音楽性は後続のバンドやアーティストたちに強い影響をあたえた。

Peter Gabriel, “Solsbury Hill”

ピーター・ガブリエルのソロデビューシングルで、全英シングルチャートで最高13位を記録した。

プログレッシブロックバンドのジェネシスを脱退した後、イギリスのバース近郊にあるソールズベリー・ヒルに上ったときの神秘的な体験がこの楽曲のベースになっているようだ。

フォーキーなムードが心地よいこの楽曲は、ロック系のラジオで長年にわたってオンエアされ続けたり、映画のサウンドトラックに使われたりすることによって、名曲としての評価を高めていった。

Kraftwerk, “Trans Europe Express”

ドイツのシンセポップグループ、クラフトワークのアルバム「ヨーロッパ特急」の表題曲で、全米シングル・チャートでは最高67位を記録した。

タイトルは当時、ヨーロッパで運行されていた国際特急列車(略してTEE)のことであり、曲も列車が走る音をイメージしたものである。歌詞には当時、ドイツに傾倒していたデヴィッド・ボウイやイギー・ポップの名前も登場する。

ニューヨークのアンダーグラウンドなクラブでヒットしていたらしく、1982年にアフリカ・バンバータ&ザ・ソウル・ソニック・フォース「プラネット・ロック」でサンプリングされたことでも話題になった。

Donna Summer, “I Feel Love”

ドナ・サマーのアルバム「アイ・リメンバー・イエスタデイ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高6位、全英シングルチャートでは1位に輝いた。

ジョルジオ・モロダーによるムーグシンセサイザーを効果的に用いた未来的なサウンドとドナ・サマーの官能的なボーカルがミックスされた画期的な楽曲であり、後のポップミュージック全般あたえた影響は計り知れない。

この曲を初めて聴いたブライアン・イーノが、デヴィッド・ボウイに未来の音楽だと興奮気味に話したというエピソードでも知られる。

Elvis Costello, “Alison”

エルヴィス・コステロのデビューアルバム「マイ・エイム・イズ・トゥルー」からのリードシングルとしてリリースされ、当時はシングルチャートにランクインしなかったが、後に代表曲として知られるようになる。

この頃はバックバンドのジ・アトラクションズはまだ結成されていなく、後にヒューイ・ルイス&ザ・ニュースに発展するクローバーというバンドのメンバーなどが参加している。

エルヴィス・コステロがスーパーマーケットで見たとても美しいレジ係の女性にインスパイアされて書いた曲だといわれ、人生に対するマイルドな失望というか、期待はずれ感のようなものが哀感と共に歌われているところがとても良い。