洋楽ロック&ポップス名曲1001:1977, Part.2

Sex Pistols, “God Save the Queen”

セックス・ピストルズが1977年5月にリリースしたシングルで、全英シングルチャートで最高2位を記録した。

実際にはその週の1位だったロッド・スチュワート「もう話したくない」よりも売れていたが、何らかの操作によって2位にさせられたという説が有力である。

というのもこのシングルはエリザベス2世の即位25周年という国民的行事に合わせるかたちでリリースされ、曲の内容は君主制を批判するようなものだったためである。しかもタイトルはイギリス国家「国王陛下万歳」と同じで、祝典の当日にはテムズ川に浮かべた船上でゲリラライブを行い、逮捕されたりもした。

楽曲そのものはポップでキャッチーなパンクロックであり、ジョニー・ロットンの個性的なボーカルパフォーマンスもとても良い。

Ramones, “Sheena Is a Punk Rocker”

ラモーンズが1977年5月にリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高22位を記録した。邦題は「シーナはパンクロッカー」である。

音楽的にはパンクロックとビーチ・ボイーイズ的でもあるサーフ・ロックを掛け合わせたような、ひじょうにご機嫌なものになっている。

それで、ここで歌われている「シーナ」というのは一体誰なのかという話にもなってきたりはするのだが、どうやらシーナという名のジャングルの女王を描いたコミックブックが1940年代に出版されているらしく、それがモチーフになっているようである。

Sex Pistols, “Pretty Vacant”

セックス・ピストルズの3枚目のシングルで、全英シングルチャートで最高6位を記録した。後にアルバム「勝手にしやがれ!!」にも収録された。

この曲のメインとなるリフは、ベーシストのグレン・マトロックがABBA「SOS」を聴いて思いついたとのことである。オルタナティヴでありながらヒットチャートの上位にもしっかりランクインし続けていた理由の1つとして、ポップミュージックとしての強度が並外れていたことは挙げられるように思える。

タイトルにも表れているように、オレたちは空っぽで何も気にしていないというような虚無感がポップに歌われている。

Ian Dury, “Sex & Drugs & Rock & Roll”

イアン・デューリーが1977年8月にリリースしたシングルだがヒットしなく、すぐに廃盤になったらしい。

デビュー・アルバム「ニュー・ブーツ・アンド・パンティーズ」には収録されなかったため、しばらくレコードに入手が難しかったようだが、ジョン・ピールなどのDJがラジオでかけ続けたり、「NME」のクリスマスパーティーで配るために1000枚だけプレスされたりしていたようだ。

タイトルにもなっている「セックス&ドラッグ&ロックンロール」という常套句をややユーモラスに歌い、音楽的にはオーネット・コールマンの曲を参考にするなどひじょうにユニークで、パンク/ニューウェイヴの名曲として後に評価されるようになるが、当時はBBCで放送禁止になったりもしていたようだ。

Iggy Pop, “Lust For Life”

イギー・ポップのアルバム「ラスト・フォー・ライフ」の表題曲で、リリース当時には特にヒットしなかったのだが、19年後の1996年に映画「トレインスポッティング」のオープニングシーンで使われた後、全英シングルチャートで最高26位を記録した。

ベルリンでデヴィッド・ボウイと共作した曲で、印象的なベースラインはアメリカ軍放送網のジングルから引用しているが、いわゆるモータウンビートともよく似ている。デヴィッド・ボウイがウクレレで作曲したようだ。

歌詞はドラッグやストリップティーズなどを題材にし、冒頭に出てくるジョニー・イェンはウィリアム・S・バロウズの小説「爆発する切符」の登場人物である。

Iggy Pop, “The Passenger”

イギー・ポップのアルバム「ラスト・フォー・ライフ」に収録された楽曲で、シングル「サクセス」のB面としてもリリースされた。

歌詞はデヴィッド・ボウイと北米やヨーロッパをツアーで回った経験や、現代生活を車での旅に見立てたジム・モリソンの詩「神」にインスパイアされたといわれている。

1998年にはトヨタ自動車が主にヨーロッパで販売していたステーションワゴン、アベンシスのCMソングとして使われ、全英シングルチャートで最高22位を記録した。

Talking Heads, “Psycho Killer”

トークング・ヘッズのデビュー・アルバム「サイコ・キラー’77」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高92位を記録した。初期の代表曲として紹介されることが多いが、当時それほどヒットしていたわけではなかった。

サイコパス的な猟奇殺人鬼をテーマにしたニューウェイヴな楽曲で、アリス・クーパーのショックロック的な作品やアルフレッド・ヒッチコック監督の映画「サイコ」からも影響を受けている。

ボストンのロックバンド、ザ・フールズがこの曲にニワトリ的な要素を入れたパロディーソング「サイコ・チキン」をリリースし、全米シングルチャートにはランクインしていないのだが日本ではまあまあ売れて、オリコン週間シングルランキングで最高74位を記録している。