邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2013
にんじゃりぱんぱん/きゃりーぱみゅぱみゅ(2013)
きゃりーぱみゅぱみゅの5作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高3位、Billboard JAPAN Hot 100、レコチョク着うたランキング、iTunes総合DLランキングなどでは1位を記録した。
中田ヤスタカプロデュースのテクノポップ的な楽曲なのだが、増上寺で撮影されるauのCMソングに決まっていたということで、あえて和テイストを入れたということである。このオリエンタルな感じが海外でも受けた。
アイドルばかり聴かないで/Negicco(2013)
新潟を拠点として活動するアイドルグループ、Negiccoのシングルで、作詞・作曲・編曲を小西康陽が手がけた。オリコン週間シングルランキングでは最高23位、「アイドル楽曲大賞2023」では2位に選ばれた。
当時のAKB48商法ことCDに握手券をつけて熱心なファンがそれをたくさん買ったりする風潮を取り上げ、「どんなに握手をしたって あのコとはデートとか出来ないのよ ざんねーん!!」と歌ったりしている。「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」という歌詞も当時の気分を反映してはいるのだが、Apple Musicはまだはじまっていないし、Spotifyも日本ではまだ利用することができなかった。
アイドルファンの恋人を持つ女性という設定で歌われていて「アイドルばかり聴かないで」なのだが、最後には「そんなにアイドルが好きなら じゃあ、Negiccoにしてね」と締めているところなどもとても良い。音楽的には「渋谷系」の流れをくんでもいて、楽曲派アイドルファン直撃という感じではあった。
高嶺の花子さん/back number(2013)
back numberの8作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高11位、Billboard JAPAN Hot 100では最高3位だが、おそらくそれからずっとよく聴かれ続けていて、ストリーミングチャートにもよくランクインしている。
音楽的な爽快なサマーポップのようでもあるのだが、友達の友達に向けられた絶望的な片想いと妄想について歌われていてこのバンドの本領発揮といったところである。
「君の恋人になる人」についての妄想においては、「焼けた肌がよく似合う洋楽好きな人」という表現が出てきたりもしてとても良い。
ラブホテル/クリープハイプ(2013)
クリープハイプの2作目のシングル「吹き雫れる程のI、哀、愛」に収録された楽曲である。「夏のせい 夏のせい 夏のせいにすればいいからさ」と歌いはじめられるだけあって、最高のサマーポップなのだが、タイトルが「ラブホテル」なのでもちろん性愛について歌われている。
歌詞は女性目線で書かれているのだが、その絶妙な面倒くささも含めてポップソングとしてはなかなかかゆいところに手が届く的な快感が感じられてとても良い。
恋するフォーチュンクッキー/AKB48(2013)
AKB48の何作目かのシングルでオリコン週間シングルランキングでは当然のように1位、年間シングルランキングでは2位を記録した。というか、年間シングルランキングンの1位から4位までがすべてAKB48で、5位がEXILEで6位、10位が嵐だが、7位、8位、11位がSKE48で9位、12位がNMB48、乃木坂46も13位、14位にランクインしている。
この頃には恒例行事と化していたAKB48の選抜総選挙で初めて1位になった指原莉乃がセンターということで話題になった。後にバラエティ女王的な立ち位置を獲得するのだが、この頃はまだヘタレキャラ的な扱いでもあり、この結果に例年の上位常連メンバーの何人かが苦笑していたような気もするのだが、気のせいかもしれない。
フィリーソウル的なストリングスが印象的なとても良い曲で、それまでのAKB48の楽曲とはかなり違っていたのだが、文化人のような人たちがこの曲に合わせて踊っている動画がYouTubeに上げられていたり、「告りたい」という表現がナチュラルに使われていることについて難色を示しているリスナーが少なくとも1名は存在したことが確認はできている。
Negicco「アイドルばかり聴かないで」を抑えて、「アイドル楽曲大賞」で1位に選ばれていた。
わがまま 気のまま 愛のジョーク/モーニング娘。(2013)
モーニング娘。の54作目のシングルとして「愛の軍団」との両A面でリリースされた。グループ名にその年の下2ケタが付く前の最後にリリースされたシングルである。
「アイドル戦国時代」といっても勝者はいまのところ(AKB48)に決まっているじゃないですか、という認識をしっかりと持っていた道重さゆみがリーダーを務めるようになって以降、フォーメーションダンスとかEDMとかで話題になり、リリースイベントもしっかりやるようになったりもしたため、オリコン週間シングルランキングではこの曲も1位になった。
「愛はきっと罪深い」からの「愛されたい 愛されたい」のところでライブではひじょうに盛り上がるのだが、その後で「愛されたい!」とソロで歌う特に佐藤優樹のパートが特にとても良い。
メンバー同士が張り手をかます振り付けは、イモ欽トリオ「ハイスクールララバイ」にインスパイアされている。
さよならMusic/Negicco(2013)
Negiccoのシングル「ときめきのヘッドライナー」のカップリング曲で、作詞・作曲・編曲はグループの活動初期からかかわっているが本職は会社員のconnieである。
英語のように聴こえるのだが歌詞を確認すると実は日本語というような箇所がいくつもあり、特に「Oh! 新潟 超いいな アイドルとかだナァ」には度肝を抜かれた。
実はシングル表題曲の作曲・編曲者が所属するバンド、NONA REEVESの楽曲に対するオマージュになっていて、それが分かっているとより深く楽しめたりもするのだが、それをまったく意識しなかったとしても、アイドルといういつ目の前から姿を消すかも分からない存在との関係性を歌った名曲であることには間違いがない。
「出会えたのは偶然の運命 無駄なことなんてないね」というところがとても良いのだが、ライブでは終盤に歌われがちで「嬉しすぎて最高 だから余計に終わりを考えてしまう」のところで、そういえばそうだったのでもっとちゃんと堪能するようにしよう、と気合いを入れ直してもくれる。
Saturday Night to Sunday Music/Shiggy Jr(2013)
Shiggy Jr.の最初のミニアルバム「Shiggy Jr. is not a child.」に収録されていた楽曲である。後にメジャーデビューもして「ポップでポップなバンド」というキャッチコピーで活動していたりもしたのだが、すでに解散していて、Negiccoのファンとしても知られるベーシストの森夏彦はMrs. GREEN APPLEのサポートメンバーとしても活動している。
いけもここと池田智子のボーカルがとにかくポップでキュートで最高なのだが、この頃にはメジャーで活動していた頃とはメンバーが違っていて、キーボードで他の女性メンバーというかすねありかが在籍している。
良すぎたせいでブレイクし切れなかったというようなことをいうと、本当にそんなことがありうるのだろうかと思えなくもないのだが、このバンドの場合はおそらく本当にそうで、これからも語り継がれていくべきではないかと強く感じる。
レット・イット・ゴー〜ありのままで〜/松たか子(2013)
ディスニーのアニメ映画「アナと雪の女王」で使用された楽曲で、いろいろな国々のシンガーによって歌われているのだが、日本では劇中が松たか子でエンドロールがMay J.であった。
大ヒットしたこのアニメ映画を見ていても見ていなくてもこの曲を耳にしたことがある人はかなり多いのではないかと思うのだが、改めてちゃんと聴いてみると、松たか子のボーカルもドラマティックな演奏もとても良く、一流のエンターテインメントとしての満足感が確実に得られる。
そして、「ありのままの姿見せるのよ ありのままの自分になるの」「これでいいの 自分を好きになって これでいいの 自分信じて」というようなことが歌われたメッセージソングでもあるのだ。
ミッドナイト清純異性交遊/大森靖子(2013)
大森靖子はとても優れたシンガーソングライターなのだが、道重さゆみの熱心なファンとしても知られている。そして、アルバム「絶対少女」に収録されたこの楽曲は、道重さゆみについて歌われている。
イントロの効果音のようなものは道重さゆみが東海地方のローカル局であるCBCラジオで放送されていた「モーニング娘。道重さゆみの今夜もうさちゃんピース」のオープニングを想起させもするのだが、もしかすると気のせいかもしれない。
「ときわ公園」は山口県にある道重さゆみの実家のわりとすぐ近くにあった公園で、「空飛ぶ自転車」は推測に間違いがなければラジオで話していた中学生時代のエピソードに由来しているかもしれない。
「妄想通りさ 君だけがアイドル」はそのものズバリだし「大きい瞳」はモーニング娘。の6期メンバー(グループ加入前にすでにソロで活動をしていた藤本美貴を除く)、亀井絵里、道重さゆみ、田中れいなで歌っていた「大きい瞳」、「不評なエンディング」は推測に間違いがなければ「妄想セクシーワード」のコーナーのことではないか、などと実に味わい深い。
それでいて、アイドルポップスの1つの典型であるPPPH(ぱんぱぱんひゅー)のリズムでノレるところにもリスペクトを感じる。何よりもすごいのが道重さゆみがモーニング娘。’14(当時)から道重さゆみが卒業して芸能活動を無期限休止する直前のタイミングで大森靖子がエーベックスからメジャーデビューして、NHKの音楽番組収録でギリギリ出会えるのだが、その時に感激のあまり号泣していた大森靖子が休養を経て復帰した道重さゆみに楽曲を提供したり主宰する音楽フェスティバルで共演したりという、アイドルファンとして最高のサクセスストーリーを実現しているところが尊すぎる。