邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1997, Part.2
明日、春が来たら/松たか子(1997)
松たか子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位を記録した。
歌舞伎役者、松本幸四郎(後に隠居名の松本白鸚を襲名)の娘で、木村拓哉と共演したフジテレビ系月9ドラマ「ロングバケーション」が大ヒット、19歳にして「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、すでに人気スターとしての地位を確立していた松たか子のCDデビューということで、わりと話題にはなっていたような気がする。
癒し効果絶大なボーカルとどこか浮遊感も感じられるサウンド、「明日、春が来たら 君に逢いに行こう」というフレーズも含め、前向きでとても良いのだが、「永遠の前の日」とは一体何のことなのだろうか。
春の定番ソングであり、クラブでかかるとブチ上がるともどこかで言われていたような気もする。
この曲のヒットによって松たか子は前年に司会を務めていた「NHK紅白歌合戦」に、今度は歌手としての出場も果たしていた。
MajiでKoiする5秒前/広末涼子(1997)
広末涼子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。
ピュアネスという概念を凝縮的に具現化したような印象が(当時も現在も!)強い広末涼子(とっても大スキよ!)だが、この楽曲は特にJ-POP史に残る超名曲だということができる。
作詞・作曲・プロデュースは竹内まりやで、いわゆるモータウン歌謡の1つでもあるのだが、イントロで「ブラザーズ&シスターズ!」とパブリック・エナミーの楽曲で使われるようなタイプのセリフがサンプリングされていたり、タイトルが当時の若者の間での流行語とされていた「MK5(マジでキレる5秒前)」を意識していたりもする。
「渋谷はちょっと苦手 初めての待ち合わせ」と歌われるその街にはまだ渋谷マークシティも交差点を渡ったところにあるTSUTAYAのビルも無くてとてもよかった(完全に個人的な感想である)。HMVもまだギリギリONE-OH-NINE(現在はMEGAドン・キホーテ渋谷本店)の方にあった頃である。
渚にまつわるエトセトラ/PUFFY(1997)
PUFFYの4作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで「これが私の生きる道」「サーキットの娘」に続き3作連続となる1位に輝いた。
作曲・編曲はここまでずっと奥田民生だが、作詞はデビューシングル「アジアの純真」以来となる井上陽水である。
それでナンセンス的なフレーズが多かったりもするのだが、「カニ食べ行こう はにかんで行こう」はさすがに見事だし、「リズムがはじけて恋するモード」で締めくくっているところもとても良い。
往年のディスコヒッツをJ-POP的にカスタマイズしたかのようなメロディーやサウンドも楽しく、日本の夏を感じさせるポップソングの1つとして定着しているように思える。
Heaven’s Kitchen/BONNIE PINK(1997)
BONNIE PINKの4作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高50位を記録した。
カーディガンズのヒットなどで日本でもスウェディッシュポップの最重要人物として知られていたトーレ・ヨハンソンによってプロデュースされている。
レコーディングもスウェーデンで行われ、そのスタイリッシュでありながら温もりが感じられるサウンドとBONNIE PINKのエモーショナルなボーカルが絶妙なマッチングを実現している。
歌詞には日本語と英語がナチュラルに混じり合い、メロディーは洋楽的なセンスをも感じさせるものなのだが、作詞・作曲はBONNIE PINK自身である。
髪を赤く染めた姿でこの曲を歌うミュージックビデオは当時、ケーブルテレビやテレビ神奈川の「ミュージックトマトJAPAN」などでよく流れていて、強烈な印象を残していた記憶がある。
この曲を1曲目に収録したアルバム「Heaven’s Kitchen」は、オリコン週間アルバムランキングで最高8位のヒットを記録した。
やさしい気持ち/ Chara(1997)
Charaの14作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。
主演映画「スワロウテイル」の劇中に登場した架空のバンド、YEN TOWN BANDのボーカリストとして「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」を大ヒットさせた後、Charaのソロアーティストとしての知名度も格段に上がり、この曲のヒットにつながったような気がする。
Charaの独特でキュートなボーカルの魅力が存分に生かされたとても良い曲で、「手をつなごう 手を ずっとこうしていたいの」というプリミティブでストレートなメッセージも強く伝わってくる。
この曲を収録したアルバム「Junior Sweet」はCharaにとってソロアーティストとしては初の1位に輝いた。
玉突き/GREAT3(1997)
GREAT3の3作目のアルバム「ロマンス」から、先行シングルとしてリリースされた。
一般大衆的にそれほどメジャーに知られていたわけではけしてないのだが、一部の音楽ファンからは圧倒的な支持を得ていたり、渋谷の外資系CDショップではものすごく売れていると言われていたりもしたような気がする。
当時、一部音楽ファンたちの間でトレンド化していたような気もするいわゆる音響派的なアプローチが取られているのが特徴ではあるのだが、致死量レベルの切なさを含んでいるように思える歌詞もとても良く、「玉突き」というタイトルの所以でもあろう「ビリヤードが得意なら 部屋の隅 穴をあけ 涙を突き落とし あぁ ひまつぶし」というフレーズなどにはたまらないものがある。
個人的にはこの年の梅雨時に、鬱々とした気分でこの曲をよく聴いていた記憶がある。
STAR FRUITS SURF RIDER/コーネリアス(1997)
コーネリアスの6作目のシングルだが、オリコンではアルバム扱いとなり、週間アルバムランキングで最高17位を記録した。
「STAR FRUIT」「SURF RIDER」の2枚の12インチシングルもリリースされ、同時に再生するとこの曲になるというなかなかトリッキーなことをやっていてとても良かった。
ちなみにこの1つ前のシングル「MOON WALK」は200円のカセットテープのみで発売されて、パッケージの色は9種類あった。カヒミ・カリィの Dシングル「GOOD MORNING WORLD」と一緒に渋谷ロフトの1階から上の方の階に移転してからまだそれほど経っていないWAVEで買ったような気がする。
それはそうとしてこの曲は海外でも高い評価を得て、ブラーやベックやマニック・ストリート・プリーチャーズまでもがコーネリアスにリミックスを依頼するような状況をつくるきっかけにもなったアミューズメントパーク的に楽しいアルバム「FANTASMA」からの先行シングルである。
テクノ的でもあるサウンドと小山田圭吾でしかあり得ないボーカル、猫好きにはたまらない歌詞などもあってアルバムへの期待を高めてくれるにはじゅうぶんであった。
渋谷センター街のONE-OH-NINE(現在のMEGAドン・キホーテ渋谷本店の場所)にあった頃のHMVで土曜日の午後に新譜をチェックしていると、まだ発売されていない「FANTASMA」のサンプル盤のようなものがかかっていたことがあって、なかなか店から出られなくなったことなどが懐かしく思い出される。
そして、当時とはまた別の「猫が僕を見る」。