邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1982, Part.4
土曜の夜はパラダイス/EPO(1982)
EPOの4枚目のシングルでオリコン週間シングルランキングでは圏外だったが、当時の人気バラエティー番組「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマ曲として使われていたため、聴き覚えがある人たちはひじょうに多かったと思われる。
「恋のパラダイス 夢のパラダイス ロマンティックな夜はふけて」と、かなり陽気で開放的ではあるのだが、実際には失恋をテーマにした楽曲である。しかしそういった心の痛みなどもかかえつつ、きらびやかな都会の夜の街に繰り出すワクワク感のようものがヴィヴィッドに表現されているように思える。
悲しい色やね/上田正樹(1982)
上田正樹の11作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高5位、「ザ・ベストテン」では最高6位を記録した。
林哲司が作曲したシティポップ的なメロディーに康珍化の演歌にも通じる恋の終わりをテーマにした関西弁の歌詞がのり、それを上田正樹が持ち前のハスキーなボーカルで歌うことによって、とてもユニークなポップソングが完成している。
当初はヒットしなかったのだが、有線放送から少しずつ人気が高まっていき、リリースの翌年にあたる1983年の夏にヒットのピークを記録した。
ドラマティック・レイン/稲垣潤一(1982)
稲垣潤一の3作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高8位、「ザ・ベストテン」で最高9位を記録した。
「あぁ 都会の夜はドラマティック」と歌われているだけあって、マイルドにシティポップ的な楽曲であり、当時の気分ともマッチしていたような気がする。テレビでドラムスを演奏しながら歌う姿も、ひじょうに印象的であった。
学生時代から放送作家として活動し、この頃には作詞家としての仕事も少しずつやりはじめていた秋元康にとって、最初のヒット曲となった。作曲は筒美京平である。
バカンスはいつも雨(レイン)/杉真理(1982)
杉真理の8作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高23位を記録した。
大滝詠一、佐野元春とのナイアガラ・トライアングルに参加し、知名度が一気に上がったタイミングでのリリースであり、リバプールサウンド的な音楽性は真骨頂ともいえるレベルであった。
堀ちえみが出演したグリコセシルチョコレートのテレビCMにも使われ、当時における最新シングル「待ちぼうけ」(杉真理にとっては慶應義塾大学時代のサークルの後輩である竹内まりやが作詞・作曲している)イメージとも相まってとても良かった。
冬のリヴィエラ/森進一(1982)
森進一の56作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高10位、「ザ・ベストテン」では最高5位を記録した。
演歌歌手の森進一が大瀧詠一の楽曲を歌うということで当時話題になったが、森進一は1974年にも吉田拓郎が提供した「襟裳岬」を大ヒットさせたりもしていた。
イタリア語で海岸を意味するリヴィエラを舞台に恋の終わりを描いた松本隆の歌詞に合わせて、メロディーはつくられたようで、ナイアガラ節とでもいえるような感じでありながら、森進一のハスキーなボーカルにもマッチしている。
スターダスト・キッズ/佐野元春(1982)
佐野元春の9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高58位を記録した。
杉真理と同じく大滝詠一のナイアガラ・トライアングルに参加したことによって知名度が飛躍的に上がり、この年にリリースしたアルバム「SOMEDAY」はオリコン週間アルバムランキングで最高4位のヒットを記録した。
そして、このシングルではオリコン週間シングルランキングの100位以内に初めてランクインしている。元々は1981年のシングル「ダウンタウン・ボーイ」に収録された楽曲をアレンジし直したものである。
都会で生活する若者をテーマにした楽曲で、「オートマティックな恋だけれど 誰にもYes No言わせないぜ」あたりに個性的な言語感覚が感じられるが、「本当の真実がつかめるまでCarry on」あたりが本質として深いレベルで支持されていたような気もする。
翌年、この曲をA面1曲目に収録したベストアルバム「No Damage(14のありふれたチャイム達)」をリリースし、オリコン週間アルバムランキングで1位に輝くのだが、この絶好のタイミングで佐野元春は単身でニューヨークに旅立つ。
つ・き・あ・い・た・い/RCサクセション(1982)
RCサクセションのアルバム「BEAT POPS」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高48位を記録した。
1982年のRCサクセションといえばバレンタインデーにリリースされた忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」がオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、夏には「サマーツアー」が同ランキングで最高6位のヒット、「ザ・ベストテン」などにも出演していた。
そして、この曲をA面1曲目に収録したアルバム「BEAT POPS」もオリコン週間アルバムランキングで最高2位を記録した。
「もしもオイラが偉くなったら偉くない奴らとはつきあいたくない」「だけどそいつがアレを持ってたら俺は差別しない Oh, つきあいたい」などと皮肉まじりの歌詞がポップでキャッチーなメロディーにのせて歌われているのだが、「つ・き・あ・い・た・い」というフレーズが繰り返されることからラヴソングのようにも聴こえてしまうという素晴らしい楽曲である。