邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:300-291
300. 今すぐKiss Me/LINDBERG (1990)
LINDBERGの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、1990年の年間ランキングではB.B.クィーンズ「おどるポンポコリン」、米米CLUB「浪漫飛行/ジェットストリーム浪漫飛行」に次ぐ3位を記録した。
浅野温子と三上博史が主演したフジテレビ系のいわゆるトレンディードラマ「世界で一番君が好き!」の主題歌に起用され大ヒットした。ボーカルの渡瀬マキは元々アイドルの渡瀬麻紀であり、当時のバックバンドのメンバーであった平川達也らとLINDBERGを結成した。
ロックのお茶の間メインストリーム化を象徴するヒット曲だと思えるのだが、「ドキドキすることやめられない」というフレーズには普遍性があるし、世の中にキスよりも素敵なことはそれほどは無いという真実から考えても、この「今すぐKiss Me」という曲は名曲だということができる。
299. こぬか雨/伊藤銀次 (1976)
伊藤銀次のアルバム「DEADLY DRIVE」とシングル「風になれるなら」のB面に収録されていた曲で、後にシティ・ポップの名曲の1つとして知られるようになる。
元々は伊藤銀次がやっていたバンド、ごまのはえのレパートリーだったが、その後、シュガー・ベイブに一時的に在籍した時に山下達郎との共作詞となった。
「こぬか雨」というタイトルは欧陽菲菲のヒット曲「雨の御堂筋」の歌詞にインスパイアされているということだが、静けさの中にひらめきが感じられ、優しげなボーカルもとても良い。
298. Love so sweet/嵐 (2007)
嵐の18枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、2007年の年間シングルランキングでは秋川雅史「千の風になって」、宇多田ヒカル「Flavor Of Life」、コブクロ「蕾(つぼみ)」に次ぐ4位を記録した。
メンバーの松本潤が出演したテレビドラマ「花より男子2(リターンズ)」の主題歌ということもあっての大ヒットだが、楽曲そのものが単純にとても良い。
ある人の存在がいつの間にか自らの生を強く肯定する原動力となっていると気づいた瞬間の驚き、その甘い気持ちを存分に味わうのだが、たとえいつか終わりが訪れる宿命だとしても、それは美しく尊いものである。というようなことが、キャッチーに表現された素晴らしい楽曲だと感じるのである。
297. 空洞です/ゆらゆら帝国 (2007)
ゆらゆら帝国のアルバム「空洞です」の表題曲で、一番最後に収録されている。アルバムはオリコン週間シングルランキングで最高21位、「ミュージック・マガジン」が2019年に発表した「50年の邦楽アルバム・ベスト100」では、はっぴいえんど「風街ろまん」、シュガー・ベイブ「SONGS」、大滝詠一「ロング・バケイション」に次ぐ4位に選ばれるなど、すこぶる評価が高い。
サイケデリック・バンドと紹介されがちだが、絶妙なポップ感覚があり、初心者でもわりと聴きやすい。「ぼくの心をあなたは奪い去った」というような感覚は人生において、味わったり味わわなかったりはするわけだが、そんな時には決まって自分自身がまるで空洞のように感じられるものである。そういったもしかするとヘヴィーかもしれないような状況を、あっけらかんとポップ化しているようなところがとても良い。
296. 誰より好きなのに/古内東子(1996)
古内東子の7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高35位を記録した。もっと大きくヒットしていたような印象もあったのだが、実はそうでもなかったようだ。
「やさしくされると切なくなる 冷たくされると泣きたくなる」というフレーズに身に覚えがあり、心のかさぶたを剥がされるような気分になる人たちにとっては、たまらないラヴバラードである。
「誰よりも好きなのに」というタイトルそのものがまったく主観的であり、本当にそうなのかは分からないわけだが、そう言ってしまいたくなる気持ちはイタいほど分かるため、個人的にもヘラり気味な時に再生しがちである。いつまでこんなことをやっているのだという気分にもなるのだが、死ぬまで治らないような気もなんとなくしている。
295. ひと夏の経験/山口百恵 (1974)
山口百恵の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。
「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」のフレーズで有名な、いわゆる性典歌謡の代表曲である。まだ15歳なので当然なのだが、山口百恵のボーカルがまだ青く未成熟なところがリアリティーをあたえている。すべては「愛は尊いわ」という理由で正当化されるのだが、それは本当にそうなので仕方がないということもいえるし、「誘惑の甘い罠」であることもまた真実である。
294. チャコの海岸物語/サザンオールスターズ (1982)
サザンオールスターズの14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位、「ザ・ベストテン」では2週連続1位に輝いた。
1978年のデビューからヒット曲を連発したサザンオールスターズだが、1980年にテレビ出演などを控えるようになってからはシングルがどんどん売れなくなり、一方でアルバムは出せば必ず1位という状態になっていた。そして、この曲が久々のシングルでのヒットとなった。
昭和歌謡テイストを取り入れたり、田原俊彦の歌い方を真似たようなところもあったりと、徹底的に大衆エンターテインメントを狙ってきたところが、功を奏した。これ以降、国民的人気バンドとして知られるようになったような気もする。アルバム「NUDE MAN」には未収録であった。
293. Swallowtail Butterfly~あいのうた~/YEN TOWN BAND (1996)
YEN TOWN BANDのデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。
岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」に登場する架空のバンドで、主演したCHARAがボーカリストである。プロデュースはMr.Childrenの作品などでお馴染みの小林武史で、キャッチーな楽曲に乗せた個性的なボーカルがその真価を発揮しているように感じられる。
292. ロマンス/岩崎宏美 (1975)
岩崎宏美の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。
作詞が阿久悠で作曲・編曲が筒美京平という当時のゴールデンコンビによる楽曲で、アイドル歌手としては歌唱力抜群な岩崎宏美のボーカルパフォーマンスもかなり良い。恋の訪れに気づいた少女のときめきや不安、戸惑いなどが同時に表現されていて、すべては「あなたが…好きなんです」というたった1つの真実に帰結する。それ以上に重要なことが、おそらくこの世には存在しない。
291. 雨の御堂筋/欧陽菲菲 (1971)
欧陽菲菲のデビュー・シングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。
日本でエレキ旋風を巻き起こしたアメリカのインストゥルメンタル・ロック・バンド、ザ・ベンチャーズが作曲をしたいわゆるベンチャーズ歌謡であり、大阪のご当地ソングでもある。
おそらく浮気をしているであろう恋人を探して、雨の街を傘もささずに急いでいく悲しい現実をヴィヴィッドに描写したとても良い曲である。