The 500 Greatest Songs of All Time : 460-451

460. Rip It Up – Orange Juice (1982)

オレンジ・ジュースは1970年代後半から1980年代前半にかけて活動していたポスト・パンク~ニュー・ウェイヴ・バンドでアズテック・カメラ、ジョゼフ・Kなどと同じく「サウンド・オブ・ヤング・スコットランド」のキャッチフレーズで知られるポストカード・レコーズに所属していた。

「リップ・イット・アップ」は全英シングル・チャートで最高8位を記録したオレンジ・ジュースにとって最大のヒット曲なのだが、このバンドのファンは代表曲としてあまり挙げないような気がする。なぜならもっと良い曲がたくさんあるからである。初期のポスト・パンク的な音楽性とは少し異なり、ディスコ・ミュージックやファンクからの影響が感じられ、シンセサイザーも効果的に用いられている。バズコックス「ボアダム」にオマージュが捧げられているところもとても良い。

90年代に入るとフリッパーズ・ギターが影響を受けたバンドの1つとしてオレンジ・ジュースを紹介したことによって、日本のおしゃれでいたいけな少女たちがこぞってこのバンドのレコードを探しはじめるという好ましいムーヴメントも巻き起こった。

459. I Can’t Help Myself (Sugar Pie, Honey Bunch) – The Four Tops (1965)

フォー・トップスはモータウン・レコーズを代表する人気グループのうちの1つで、この全米NO.1ヒットはソングライター・チームのホーランド=ドジャー=ホーランドによって書かれている。

1980年代にオレンジ・ジュースはフォー・トップスにオマージュを捧げた「アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ」、ビリー・ブラッグはフォー・トップスのリード・ボーカリスト、リーヴァイ・スタッブスの名前をタイトルにも入れた「リーヴァ・スタッブス・ティアーズ」をリリースした。そして、田原俊彦「キミに決定!」もこの曲に影響を受けているのではないかと思えなくもない。

タイトルがあらわしているように、もう自分自身を止めることができない恋の気分について歌われている。また、「TV海賊チャンネル」の「ティッシュタイム」でBGMに使われたことがあるという事実も特筆しておきたい。

458. Don’t Worry Baby – The Beach Boys (1964)

ビーチ・ボーイズの全米NO.1ヒットシングル「アイ・ゲット・アラウンド」のB面に収録されていた曲で、とにかく美しいコーラスが最高である。ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」にインスパイアされているともいわれ、確かに似ているところもあったりする。

それにしても、苦悩や困惑に満ち溢れた人生において、気にしないでベイビー、すべては大丈夫だから、というメッセージほど大切なものもそれほどないのだが、それがこのように素晴らしいポップソングとして表現されているのだからたまらない。

457. Nothing Can Stop Us – Saint Etienne (1991)

幼なじみで元音楽ジャーナリストのボブ・スタンリーとピート・ウィッグスによって結成されたセイント・エティエンヌの音楽は、60年代的なポップ感覚を90年代のテクノロジーによってアップデートしたようなものであった。当初はボーカリストを固定していなかったのだが、ニール・ヤング「オンリー・ラヴ」のハウス・ミュージック的なカバーで注目された後にリリースしたシングル「ナッシング・キャン・ストップ・アス」で初めて参加したサラ・クラックネルが正式メンバーとして定着することになった。

ダスティ・スプリングフィールド「アイ・キャント・ウェイト・アンティル・アイ・シー・マイ・ベイビーズ・フェイス」からのサンプリングをベースにしたトラックには懐かしさと新しさが程よくブレンドされ、サラ・クラックネルのキュートなボーカルもとても良かった。個人的には土曜の午前中に前夜に録画した「BEAT UK」でこの曲のビデオを初めて見て、すぐにとても気に入って、六本木WAVEでシングルCDを買ったことが思い出される。

この曲も収録したデビュー・アルバム「フォックスベース・アルファ」もジャケットからしてすでにおしゃれで内容も最高で、「渋谷系」洋楽という感じであった。

456. Wannabe – Spice Girls (1996)

本国のイギリスのみならず世界中でガールズパワー旋風を巻き起こしたスパイス・ガールズのデビュー・シングルで、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、オーストラリア、香港など様々な国々のシングル・チャートで1位に輝いた。

メンバーそれぞれキャラクターが立っていて、誰が好みかが話題になったりしているのも微笑ましかった。音楽、映画、アートなどにおいてイギリスのものにひじょうに勢いがあり、クール・ブリタニアなどとも呼ばれていたのだが、スパイス・ガールズの大ブレイクは中でも最もインパクトがあるものの1つであった。

455. These Boots Are Made for Walkin’ – Nancy Sinatra (1965)

ナンシー・シナトラは超ビッグスターであったフランク・シナトラの実の娘で、同じレーベルからレコードも出していたのだが、なかなかヒットせず契約を打ち切られるかもしれないところだった。しかし、父親からの依頼でリー・ヘイゼルウッドがかかわるようになると「にくい貴方」の邦題でも知られるこの曲がアメリカやイギリスのシングル・チャートで1位に輝き、その後もいくつかのヒット曲を生み出した。

リー・ヘイゼルウッドは自分自身で歌うためにこの曲を書き、その強気な内容から女性シンガー向きではないと考えていたのだが、ナンシー・シナトラは自分のような小娘が歌ってこそ真価を発揮すると主張してこの曲をレコーディング、結果的に大ヒットになったのだという。

日本では石橋貴明と中居正広の司会で1996年から長年続いていたTBSテレビの音楽番組「うたばん」のテーマソングとしても使われていた。

654. Cut Your Hair – Pavement (1994)

アメリカはカリフォルニア州出身のオルタナティヴ・ロック・バンド、ペイヴメントのアルバム「クルーキッド・レイン」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高52位を記録した。アメリカのバンドではあるのだが、イギリスで先に評価されたような印象もあり、当初はザ・フォールからの影響が指摘されたりもしていた。

とはいえ、この曲はとてもキャッチーで、音楽業界におけるイメージ重視の風潮を風刺しているようでもある。特に「no big hair」と力強くシャウトするあたりが最高である。

453. Wouldn’t It Be Nice – The Beach Boys (1966)

ビーチ・ボーイズの歴史的名盤「ペット・サウンズ」のA面1曲目に収録されている曲で、邦題は「素敵じゃないか」である。シングルとしてもリリースされ、全米シングル・チャートでは最高8位を記録している。

大人になって結婚できたら素敵じゃないか、というようなことが何の迷いもなく純粋に歌われていてとても良い。90年代の初めに当時なぜかブームになっていたもつ鍋を中目黒で食べた後、友人のマンションに遊びに行って、真夜中に「ペット・サウンズ」を聴きながら、この曲を聴いていると本当に結婚がしたくなる、というようなことを無邪気に語り合っていたことが思い出される。

コンビ名をバニラボックスから改名し、神保町よしもと漫才劇場に出演しているお笑いコンビ、素敵じゃないかはもちろんこの曲を出囃子にしている。

452. Pride (In theName of Love) – U2 (1984)

U2のアルバム「焔(ほのお)」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高3位、全米シングル・チャートでは最高33位を記録した。アメリカではこれがU2にとって初のトップ40ヒットである。

「焔(ほのお)」はU2がブライアン・イーノをプロデューサーに迎えた最初のアルバムであり、バンドとしてのスケールの広がりを強く感じさせた。アメリカを明確に意識していて、この曲は人種差別と非暴力で闘った末に暗殺されたマーティン・ルーサー・キング牧師に捧げられている。

当時、「MTV」がやっと日本でもテレビ朝日で放送されることになり、大学受験も近づいているというのに日曜の深夜に眠い目をこすりながら見ていたのだが、この曲やデヴィッド・ボウイ「ブルー・ジーン」などのミュージック・ビデオなどがよくかかっていたことが思い出される。

451. White Lines (Don’t Do It) – Grandmaster Flash & Melle Mel (1983)

グランドマスター・フラッシュ&メリー・メルによる反ドラッグをテーマにした楽曲で、全英シングル・チャートで最高7位のヒットを記録した。

パーティーの音楽として誕生したヒップホップには初めの頃、社会的メッセージを含んだものなどはほとんど無く、「ザ・メッセージ」をヒットさせたグランドマスター・フラッシュはその先駆的な存在とされていた。

そして、この「ホワイト・ライン」も社会的メッセージを含んではいるのだが、クレジットされているにもかかわらず、グランドマスター・フラッシュは実際にはほとんどかかわっていないという。

1995年にはデュラン・デュランがこの曲をカバーし、全英シングル・チャートで最高17位を記録している。