The 500 Greatest Songs of All Time : 490-481

490. Ping Pong – Stereolab (1994)

ステレオラブといえば知的で実験的な印象があるが、この曲はわりとキャッチーであり、ノスタルジックなシンセサウンドと気怠げな女声ボーカルが心地よい。とはいえ、歌詞は景気循環というポップソングとしてはなかなかユニークなテーマを扱ったものである。全英シングル・チャートでは最高45位と、ステレオラブにとって最も高い順位を記録している。

ボーカリストのレティシア・サディエールはこの年、ブラーの大ヒットアルバム「パークライフ」からシングルカットもされた「トゥ・ジ・エンド」にも参加していた。この少し後にはオアシス「リヴ・フォーエヴァー」がリリースされ、ブリットポップがいよいよ本格的に盛り上がっていく夏だったわけだが、西新宿のラフ・トレード・ショップで買った「ピン・ポン」の7インチ・シングルはターンテーブルでクルクル回りながら清涼感を味わわせてもくれた。

489. I Can’t Go for That (No Can Do) – Daryl Hall & John Oates (1981)

1980年代前半の全米シングル・チャートにおいて、最も数多くのNO.1ヒットを記録したのがホール&オーツことダリル・ホール&ジョン・オーツであった。ブルー・アイド・ソウル的な音楽性はポップスファンのみならず、ソウルやダンス・ミュージックのリスナーにも支持されていた。

「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」はアルバム「プライベート・アイズ」から2枚目のシングルとしてカットされ、全米シングル・チャートで1位に輝いたのだが、オリヴィア・ニュートン・ジョン「フィジカル」の連続1位の記録を10週でストップさせた曲としても知られる。そして、フォリナー「ガール・ライク・ユー」は10週連続2位に終わった。

シンプルな打ち込みサウンドとブルー・アイド・ソウル的なボーカルとコーラス、そしていかにも80年代的なサックスも最高なこの曲はR&Bチャートやホット・ダンス・クラブ・プレイ・チャートでも1位を記録した。デ・ラ・ソウル「セイ・ノー・ゴー」でサンプリングされたことでも知られる。

488. Undercover of the Night – The Rolling Stones (1983)

ローリング・ストーンズのアルバム「アンダーカヴァー」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高7位のヒットを記録した。とはいえ、ローリング・ストーンズのファンにはそれほど人気がないような気もする。

ロックンロールの真髄をきわめたバンドがヒップホップやダンス・ミュージックからの影響も取り入れたようなサウンドがユニークでとてもカッコいいと、個人的にはリリースされた当時から今日に至るまで信じて疑っていないわけだが、それほど賛同が得られないことも仕方がないような気もしている。このような曲を入れたいがために、こういうことをやっているのかもしれない。

楽曲は主にミック・ジャガーのアイデアによるものであり、歌詞では混迷する中南米の政治的状況などが取り上げられている。

487. Dreaming of You – The Coral (2002)

イギリスはマージーサイド出身のインディー・ロックバンド、ザ・コーラルのデビュー・アルバム「ザ・コーラル」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高13位を記録した。プロデューサーはライトニング・シーズなどで知られるイアン・ブロウディである。

00年代前半といえばガレージ・ロック的なサウンドが旬でもあったのだが、ザ・コーラルはハイ・クオリティーなブリティッシュ・ロックを聴かせてくれるバンドとして高く評価されていた印象がある。

「キングオブコント」4年連続ファイナリストの実績を持つ実力派お笑いトリオ、GAG少年楽団改めGAGがこの曲を出囃子に使っていることも特筆しておきたい。

486. Just a Girl – No Doubt (1995)

ノー・ダウトのボーカリスト、グウェン・ステファニーがバンドから脱退した兄、エリックの助けを借りずに初めて書いた曲が「ジャスト・ア・ガール」である。これが全米シングル・チャートで最高23位とノー・ダウトにとって初のヒットを記録して、バンドをメジャーにするきっかけとなった。

スカ・パンク的な要素も含まれたポップでキャッチーなサウンド、マイルドにパンキッシュなボーカルが特徴的なこの曲は、女性であることの生きづらさをテーマにしたフェミニスト・アンセムとしても評価されているが、グウェン・ステファニーが夜遅くに帰宅したことを親に咎められた時に強く感じた不満がベースになっているようだ。

プロデューサーは1984年に「想い出のステップ」をヒットさせたマシュー・ワイルダーである。

485. 1 Thing – Amerie (2005)

ニューオーリンズのファンク・バンド、ミーターズ「オー、カルカッタ!」からサンプリングしたというドラムビートがとにかくユニークでカッコよく、ワシントンD.C.発祥の音楽ジャンル、ゴーゴーの要素も入っている。そして、エイメリーの高音域を生かしたボーカルもパンチがあってとても良い。

恋人との関係でうまくいかないことがあったとしても、たった1つのことがお互いを繋ぎとめて離さない、というようなことが歌われている。それははっきりと説明されていなく、リスナーの想像に委ねられている。クールでセクシーなミュージック・ビデオもとても良い。

484. Regret – New Order (1993)

ニュー・オーダーは1990年にイタリアで開催されたサッカーワールドカップのイングランド代表公式応援ソング「ワールド・イン・モーション」をイングランド・ニュー・オーダー名義でリリースし、全英シングル・チャートで初の1位に輝いたのだが、その後、各メンバーはそれぞれのユニットなどで活動していくようになった。そして、ファクトリー・レコードの破産なども経て、久々に発表された新曲がアルバム「リパブリック」からの先行シングル「リグレット」であった。

いかにもニュー・オーダーらしいシンセ・ポップではあるのだが、より円熟味を増した大人の雰囲気も感じられる。イントロがとても印象的でインパクトがあるのだが、バーナード・サムナーのボーカルとピーター・フックのベースはそれ以外ではありえないほどの個性に溢れたものである。全英シングル・チャートでは最高4位、アルバムは1位に輝くのだが、このレコーディングでメンバー間の仲は悪化していったようである。

483. Yellow – Coldplay (2000)

00年代初頭のポップ・ミュージックシーンを振り返ると、ロックではラップメタルのようなものが主流になっていたりもして、80年代からニュー・ウェイヴやインディー・ロックなどを好んで聴いてきたリスナーの中には、もう最新のポップ・ミュージックを楽しんで聴くには年を取り過ぎてしまったのではないか、というような気分もあった。

コールドプレイ「イエロー」はデビュー・アルバム「パラシューツ」からの先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高4位を記録した。インディー・ロックやブリットポップからの流れも感じられるメロディアスでエモーショナルな楽曲であり、これならばまだ良さが分かると一安心していた記憶がある。

他の曲のレコーディングが終わった夜に外を歩きながら、星を見ていた時にこの曲ができたようだ。はじめはよりニール・ヤング的な楽曲だったという。そして、タイトルにもなっている「イエロー」という単語にはそれほど深い意味はないようである。この曲のヒットも影響してデビュー・アルバム「パラシューツ」は全英アルバム・チャートで1位に輝き、人気バンドとしての地位を早くも確立することになった。

482. Black Hole Sun – Soundgarden (1994)

ニルヴァーナ「ネヴァーマインド」が1991年秋にリリースされると大ヒットしたのをきっかけとして、アメリカのオルタナティヴ・ロックがメインストリーム化していった。サウンドガーデンもそのような流れの中でブレイクしたバンドであり、ラウドでヘヴィーな音楽性を持ち味としていた。

しかし、アルバム「スーパーアンノウン」からシングルカットされ、バンドにとって最も有名な楽曲となった「ブラック・ホール・サン」はビートルズ的なメロディーとサイケデリック感覚が特徴的である。

中心メンバーのクリス・コーネルはニュース番組の司会者の話からタイトルを着想し、車の運転中に頭の中でこの曲を作曲したという。

481. Don’t Look Back in Anger – Oasis (1995)

オアシスのアルバム「モーニング・グローリー」からシングルカットされ、全英シングル・チャートではバンドにとって「サム・マイト・セイ」に続き2曲目の1位に輝いている。ギャラガー兄弟の兄、ノエルがリードボーカルの曲がシングルA面としてリリースされたのは、これが初めてのことであった。

アルバム「モーニング・グローリー」からは「サム・マイト・セイ」「ロール・ウィズ・イット」が先行シングルとしてリリースされ、それぞれ1位、2位の大ヒットを記録した。「ロール・ウィズ・イット」はブラー「カントリー・ハウス」と同じ日に発売され、どちらが全英シングル・チャートで1位に輝くかがニュース番組でも取り上げられていた。いわゆるバトル・オブ・ブリットポップである。

「モーニング・グローリー」を買って聴いて驚いたのは、すでにリリースされていたシングルよりも素晴らしい曲がいくつも収録されていたことである。「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」もそのうちの1曲であった。

過去を振り返るよりも未来に向かっていこうというようなポジティヴなメッセージが感じられもするこの曲は、歌詞のフレーズやイントロのピアノなどにジョン・レノンからの影響も見られる。