The 500 Greatest Songs of All Time : 480-471
480. Better the Devil You Know – Kylie Minogue (1990)
オーストラリア出身のカイリー・ミノーグはテレビドラマ「ネイバーズ」のシャーリーン役で人気者になり、その後、ストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースによるユーロビートというかPWLサウンドのヒット曲を連発していく。
「悪魔に抱かれて」の邦題でも知られるこのシングルからはそれまでのアイドル的なイメージからよりアダルトでセクシーな路線にシフトしていき、これが大成功したといえる。インディー・ロックファンにもカイリー・ミノーグはわりと人気があり、音楽雑誌でプライマル・スクリームと対談したり、BMXバンディッツが「カイリーズ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー」というシングルをリリースしたりしていた。
視覚的なイメージチェンジのみならず、よりクラブ・ミュージックに接近した音楽性やボーカリストとしてのスキルアップも功を奏したように思える。全英シングル・チャートでは1位こそアダムスキー「キラー」に阻まれたものの、最高2位を記録した。
479. Metal Mickey – Suede (1992)
スウェードは1992年にシングル「ザ・ドラウナーズ」でデビューする頃にはすでにかなり話題になっていて、イギリスの音楽週刊紙「NME」「メロディー・メイカー」などでも大きく取り上げられていた。とはいえ、全英シングル・チャートでの最高位は49位となかなか地味であった。もしかするとあまりプレスされていなかったため、売り切れ状態が続いていたのではないかとも思える。というのも、個人的に西新宿のラフ・トレード・ショップで12インチ・シングルを買えるまでにかなりの日数を要したからである。
そして、2枚目のシングルとしてリリースされたのが「メタル・ミッキー」で、サウンドはよりアグレッシヴかつアップテンポになっていた。全英シングル・チャートでも最高17位と順位を大きく上げている。当時のインディー・ロックシーンから失われて久しかったセクシーでグラマラスなイメージやサウンドが特徴的で、当時はネオグラム的に捉えられがちでもあったのだが、結果的にはブリットポップ・ムーヴメントの切り込み隊長的な役割を果たしたことになる。
478. World Destruction – Time Zone (1984)
アメリカはニューヨーク州ブロンクス出身のアフリカ・バンバータは、ヒップホップの黎明期においてひじょうに重要な役割を果たしたアーティストとして知られる。特にクラフトワーク「ヨーロッパ特急」を引用した「プラネット・ロック」は有名だが、他にもジェームス・ブラウンとコラボレートした「ユニティ」などがある。
そして、このタイム・ゾーンというユニット名でリリースされた「ワールド・ディストラクション」では、セックス・ピストルズやPILことパブリック・イメージ・リミテッドのボーカリスト、ジョン・ライドンとタッグを組んでいる。プロデューサーはビル・ラズウェルである。
個人的には大学受験で東京に滞在していた時に、この曲の12インチ・シングルを六本木WAVEで買った記憶がある。宿泊していた品川プリンスホテルのテレビで真夜中に見た「グッドモーニング」という番組で、オナッターズ「恋のバッキン!」に度肝を抜かれていた頃である。
477. My Sharona – The Knack (1979)
ザ・ナックのデビュー・アルバム「ゲット・ザ・ナック」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで5週連続1位、年間チャートでもドナ・サマー「バッド・ガール」、シック「おしゃれフリーク」、ロッド・スチュワート「アイム・セクシー」といったディスコヒットを抑えて1位に輝いた大ヒット曲である。
日本ではオリコン週間シングルランキングで最高26位を記録しているが、ラジオでもよくかかっていて、洋楽にそれほど興味がない人たちでもなんとなく知っているレベルであった。なんといっても繰り返されるドラムビートとベースラインのフレーズがとても印象的で、ニュー・ウェイヴやパワー・ポップを代表する曲として知られる。
ビートルズの再来的なイメージで売り出されたものの、この後はヒットが続かなかった。しかし、その音楽性は高く評価されていて、根強いファンや新しいリスナーを獲得し続けている。TOKYO FM「SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記」でも特集が組まれていた。
476. The Look of Love – ABC (1982)
イギリスはシェフィールド出身のニュー・ウェイヴバンド、ABCのデビュー・アルバム「ルック・オブ・ラヴ」はパーフェクトなポップ・アルバムとして高く評価されがちであった。先行シングルとしてリリースされたこの曲は全英シングル・チャートで最高4位、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの勢いにのって、全米シングル・チャートでも最高18位のヒットを記録している。
マーティン・フライのダンディーなボーカルと、美しくもきらびやかなシンセ・ポップサウンドが特徴である。1990年代半ばにヤマハのシーケンサーを買うと、この曲をベースにしたと思われるパターンがプリセットされていたりもした。
475. Regulate – Warren G feat. Nate Dogg (1994)
ギャングスタ・ラップで映画「ビート・オブ・ダンク」のサウンドトラックにも使われていた。全米シングル・チャートでは最高2位のヒットを記録している。驚いたのはマイケル・マクドナルドの1982年のヒット曲「アイ・キープ・フォーゲッティン」がサンプリングされていたことである。
田中康夫のエッセイで好意的に取り上げられ、「ミュージック・マガジン」の中村とうようからは誹謗中傷レベルのディスりを受けそうな、オッシャレーなAORとギャングスタ・ラップとではあまりにもイメージが異なっているような気がしたからである。しかし、これが見事にハマっている。
マイケル・マクドナルド「アイ・キープ・フォーゲッティン」はアルバム「思慕(ワン・ウェイ・ハート)」からの先行シングルだが、個人的には当時、高校で他のクラスの女子からヘアカット100「ペリカン・ウエスト」を買って貸すようにと命じられたものの、レコード店に行くと気が変わってこっちを買ってしまったという記憶がある。平和通買物公園のミュージックショップ国原だったかファッションプラザオクノ地下の玉光堂だったかはよく覚えていない。
474. Hype Boy – NewJeans (2022)
韓国の5人組ガールズグループ、NewJeans(ニュージーンズ)の2作目のシングルで、アジア各国でヒットしたのみならず、「NME」「ローリング・ストーン」といった欧米のメディアからも高く評価されている。日本では2023年に「OMG」がオリコン週間合算シングルランキングで最高1位に輝いている。
ノスタルジックで中毒性の高い楽曲とパフォーマンスが特徴であり、ジャンルそのものに勢いがあるK-POP界にあって、最も注目すべきグループの1つだといえる。
473. Uptown Girl – Billy Joel (1983)
ビリー・ジョエルといえばポップ・ミュージック界を代表するシンガー・ソングライターにしてスーパースターだということができるのだが、代表曲となるとやはりピアノ弾き語り的な「ピアノ・マン」「ニューヨークの想い」、あるいは「イタリアン・レストランにて」などということになるのだろうか。しかし、ポップソングとしては1983年に全英シングル・チャートで1位に輝いた「アップタウン・ガール」もなかなか魅力的である。
1982年のアルバム「ナイロン・カーテン」は社会問題なども取り扱ったシリアスな内容で、ビリー・ジョエルのレコードにしては実験的なところもあった。ファンにはわりと好評でもあったと思えるのだが、一般的にはセールスも評価もいまひとつだったようだ。その反動か1年も空けずにリリーズされたアルバム「イノセント・マン」はとにかく難しいことはあまり考えず、楽しさを追求したかのような内容であった。
「イノセント・マン」に収録された曲はビリー・ジョエルが幼少期や若かりし頃に好んで聴いていた音楽にインスパイアされたものが多いのだが、「アップタウン・ガール」はフォー・シーズンズから影響を受けていると思われる。そして、日本で1991年に大ヒットしたKAN「愛は勝つ」はこの「アップタウン・ガール」にインスパイアされている。
下町の少年が都会の女性に恋をするという内容で、ミュージック・ビデオもそれに準じている。このビデオに出演しているモデルのクリスティ・ブリンクリーとビリー・ジョエルはやがて結婚することになるのだが、後に離婚している。「イノセント・マン」から全米シングル・チャートでは先にリリースされた「あの娘にアタック」が1位で、この曲は最高3位を記録している。
472. Fastlove – George Michael (1996)
ジョージ・マイケルは1980年代にアンドリュー・リッジリーとのデュオ、ワム!でヒット曲を連発した後、ソロ・アーティストとしてもアルバム「FAITH」やシングルカット曲の数々を大ヒットさせた。しかし、よりアーティスティックな音楽性が特徴のアルバム「LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL.1」のセールスが前作を下回るとレーベルのソニーとの関係が悪化し、いろいろあって裁判沙汰にまで発展していく。
ヴァージンに移籍後、最初のアルバムとなった「オールダー」からの先行シングルが、この「ファストラヴ」である。ミュージック・ビデオではソニーならぬフォニーのヘッドフォンで音楽を聴いている人が登場したりもする。クールでスムーズなダンス・ポップという感じで、サックスも最高である。パトリース・ラッシェンのディスコ・クラシック「フォーゲット・ミー・ノッツ(忘れな草)」が引用されているのもとても良い。全英シングル・チャートではジョージ・マイケルにとって最後となる1位に輝いている(その後、ワム!「ラスト・クリスマス」がリバイバルで1位になるが)。
471. Carnival – The Cardigans (1995)
スウェーデンのバンド、カーディガンズのアルバム「ライフ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高35位を記録した。というよりも、アルバムが日本でものすごく売れ、スウェディッシュ・ポップがブームのようになってもいた。「渋谷系」との親和性も高く、プロデューサーのトーレ・ヨハンソンはカジヒデキ、BONNIE PINK、原田知世といった日本のアーティストの作品にもかかわることになった。
キュートなボーカルとノスタルジックなサウンドが特徴で、渋谷のいわゆる外資系CDショップや外資系ではないWAVEなどで特に売れていた印象が強いが、個人的な気分としては渋谷LOFTよりもクアトロパルコにあった方のイメージである。後に映画「オースティン・パワーズ」のサウンドトラックにも使われていた。アルバム「ライフ」は発売された国によって収録曲が違ってもいて、何種類か持っていたような気もする。全英アルバム・チャートで最高51位だったのに対し、オリコン週間アルバムランキングでは最高13位であった。