The 500 Greatest Songs of All Time : 260-251

260. Standing in the Way of Control – The Gissip (2006)

アメリカのインディー・ロックバンド、ゴシップのアルバム「スタンディング・イン・ザ・ウェイ・オブ・コントロール」からのシングルカットで、全英シングル・チャートで最高7位を記録した。

同性婚を憲法上で違法とする連邦結婚修正条項に対する異議申し立てをテーマにしたプロテストソングで、ポスト・パンク的でありながらディスコ的なノリも感じられる音楽性が大きく受けた。

若者向けの人気テレビドラマ「スキンズ」において、ほとんどテーマソングのように使われていたこともヒットの要因であった。

259. Pretend We’re Dead – L7 (1992)

ロサンゼルス出身でメンバー全員が女性のロックバンド、L7のアルバム「ブリックス・アー・ヘヴィー」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高21位を記録した。

ニルヴァーナ「ネヴァーマインド」の大ヒットの後、アメリカのオルタナティヴ・ロックがメインストリーム化していった頃にリリースされた楽曲である。グランジ・ロックにカテゴライズされることもあったが陰鬱ではなく、ポップでキャッチーなところがとても良かった。

とはいえ、当時のアメリカ共和党政権下における無気力感のようなものは気分としてはじゅうぶん反映しているように思える。イギリスのテレビ番組出演時やライブにおける過激な行動なども話題になった。

258. Our House – Madness (1982)

マッドネスのアルバム「ライズ・アンド・フォール」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高5位、全米シングル・チャートでも最高7位のヒットを記録した。

イギリスではザ・スペシャルズなどと共にスカ・リバイバルのバンドとしてひじょうに人気があり、ヒット曲もたくさんあったのだが、アメリカではこれが初めてのヒット曲であった。ミュージック・ビデオがMTVでよく流れたことが影響したと思われ、やはり第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの波に乗っていたのだろう。ちなみに日本ではホンダシティという小型自動車のテレビCMに出演し、CMソングの「シティ・イン・シティ」もオリコン週間シングルランキングで最高26位のヒット、一時期はお茶の間レベルにまでうっすらと知られる存在であった。

ポップでキャッチーなブリティッシュ・ポップではあるが、経済的に豊かではないためなかなか実家を出ることができないというシビアな現実を反映してもいた。

257. Oh Bondage, Up Yours! – X-Ray Spex (1977)

ロンドン出身のパンク・ロックバンド、X・レイ・スペックスのデビュー・シングルで、特にヒットはしていないのだが、ロンドン・パンクを代表する楽曲のうちの1つとして知られる。

若い女性を外見のみで判断して、話を聞こうとはしない風潮に対する怒りに満ちたシャウトではじまり、様々な規制の比喩にもなっているボンデージからの解放をポップに訴えている。サックスがノリノリで演奏されているところもとても良い。

256. Stan – Eminem featuring Dido (2000)

エミネムのアルバム「ザ・マーシャル・マザーズ・LP」からシングルカットされ、全米シングル・チャートでは最高51位だったが、全英シングル・チャートでは「ザ・リアル・スリム・シェイディ」に続き、2曲目の1位に輝いた。

狂信的すぎるファンがアーティストにコンタクトを取ろうと手紙を出すのだが返事がもらえず、そのうち妊娠している恋人を車に同乗させたまま川に飛び込むというショッキングな内容が語られている。ミュージック・ビデオもこのストーリーに沿ったものとなっていて話題になった。

イギリスのシンガー・ソングライター、ダイドの「サンキュー」がサンプリングされているが、この曲のヒットがきっかけでブレイクを果たした。

タイトルの「スタン」はこの曲の主人公の名前だが、狂信的すぎるファンを意味するスラングとして定着し、現在では辞書にも載っているレベルである(「ストーカー」と「ファン」を組み合わせて「スタン」なのではないか、という説もあるようだ)。

255. Watching the Detectives – Elvis Costello (1977)

エルヴィス・コステロが1977年10月にリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高15位を記録した。これがエルヴィス・コステロにとって最初のヒット曲であり、ジ・アトラクションズはまだ率いていない。

ザ・クラッシュのデビュー・アルバム「白い暴動」を何度も繰り返し聴き続けた後で書いた曲らしく、レゲエからの影響も感じられる。インスタントコーヒーを飲みながら、36時間ぐらい起き続けてもいたようだ。

恋人が探偵もののテレビを見続けている状況について、淡々と静かな憤りのようなものもまじえながら、シニカルに歌っているところがとてもユニークである。

254. It Was a Good Day – Ice Cube (1992)

アイス・キューブのアルバム「略奪者」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高15位を記録した。邦題は「サウス・セントラルの平和な日々」である。

アルバムがリリースされたのはロサンゼル市警の警官たちによる人種差別的な暴力行為とそれに対する不当な評決がきっかけで、ロサンゼル暴動が起こった頃である。激しい怒りに満ち溢れてもいるアルバムにおいて、レイドバックした感じが特徴のこの曲は、このような環境での生活における理想的な1日をテーマにしている。その条件の1つとして、仲間が誰ひとりとして死ななかったことも挙げられている。

253. Wonderwall – Oasis (1995)

オアシスのアルバム「モーニング・グローリー」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。ブリットポップの楽曲はほとんどがアメリカではそれほどヒットしていないのだが、この曲は全米シングル・チャートで8位まで上がっている。

この年の夏、オアシスとブラーが同じ日に新曲をリリースした、いわゆる「バトル・オブ・ブリットポップ」は、いろいろあってブラーの勝利に終わったのだが、その後、オアシスのアルバム「モーニング・グローリー」がリリースされると、すでにシングルで発売されている曲よりも良い曲がこれでもかというぐらいにたくさん収録されていることが明らかになった。

そして、次のシングルとしてこの曲がカットされ、当然のように大ヒットしたりするにつれて、オアシスがその時点におけるイギリスのトップバンドであることは多くの人々にとって明白となった。

この曲はノエル・ギャラガーの当時の恋人で、後に結婚し離婚する相手について歌われたものだとされたり、その後にもっと広い意味での関係性がテーマになっているとされたりいろいろではあるのだが、素晴らしいラヴバラードとしての評価は定着しているように思える。

当初は別のタイトルがつけられていたが、ノエル・ギャラガーがジョージ・ハリスンのソロアルバム「不思議の壁」に影響された結果、こうなったといわれている。オアシス解散後も、ノエルとリアムのギャラガー兄弟が、それぞれライブで歌い続けている。

252. Intergalactic – Beastie Boys (1998)

ビースティ・ボーイズのアルバム「ハロー・ナスティ」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高28位、全英シングル・チャートでは最高5位のヒットを記録した。

ボコーダーで加工した声や電子楽器などによるチープな未来感覚、新宿や渋谷で撮影されたと思われるミュージック・ビデオには怪獣特撮パロディー的なところもあってとても良い。

この頃、渋谷のHMVがONE-OH-NINE(2023年3月現在はMEGAドン・キホーテがあるところ)から、よりセンター街の入口近く(2023年3月現在はIKEAがあるところ)に移転したような気がする。

251. Boys Don’t Cry – The Cure (1979)

ザ・キュアーの初期の代表曲として知られるが、リリース当時はヒットしていなかったようだ。1986年にボーカルを録り直し、リミックスされたバージョンが全英シングル・チャートで最高22位を記録している。

男の子は感情を表に出すものではなく、泣くなどというのはもっての外だ、というような保守的な価値観が支配する環境で育ち、それがたまらなく苦痛でもあったロバート・スミスの心の叫びのようなものが、最高にポップでキャッチーなインディー・ポップとして結晶化しているようなところがとても良い。

野々村文宏、中森明夫と共に新人類トリオの1人として一部で知られていた田口賢司が、同じタイトルで小説を出していた。

次回につづく