The 500 Greatest Songs of All Time : 120-111

120. Windowlicker – Aphex Twin (1999)

エイフェックス・ツインが1999年3月にリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高16位を記録した。

アンビエント・テクノやドラムンベースなど様々なタイプの電子音楽を生み出す天才アーティストであり、契約金で装甲車を購入するなどユニークな行動で知られるが、この曲ではヒップホップ的なブレイクビーツやセクシーなボイスサンプルのようなものを再構築するなどして、またしても新境地を切り拓いている。

アートワークでは水着を着た女性の体にエイフェックス・ツインの顔を合成するなどインパクトがひじょうに強いことをやったり、ミュージック・ビデオはやはり同じ路線で当時のギャングスタ・ラップのビデオをパロディー化したようなものになっている。

119. Groove Is in the Heart – Deee-Lite (1990)

ディー・ライトのデビュー・アルバム「ワールド・クリーク」からの先行シングルで、全米シングル・チャートで最高4位、全英シングル・チャートでは最高2位のヒットを記録した。

DJディミトリー、レディ・ミス・キアー、ジャングルDJトーワ・トーワという国際色溢れるユニットによるポップでキャッチーなダンス・ポップで、ブーリィー・コリンズ、メイシオ・パーカー、ア・トライブ・コールド・クエストのQティップがゲスト参加している。

ジャングルDJトーワ・トーワはかつて坂本龍一がNHK-FMでやっていた「サウンドストリート」で投稿したデモテープが紹介されていた人としても話題になり、後にトウ・テイワとして有名になった。

セイント・エティエンヌやカーディガンズなどと並び、メジャーな「渋谷系」洋楽としても知られる。

118. You Made Me Realise – My Bloody Valentine (1988)

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがクリエイション・レコーズに移籍してから最初にリリースしたシングルで、インディー・チャートでは最高2位を記録したが、全英シングル・チャートにはランクインしていない。

ピクシーズのオープニングアクトを務めていたりした影響もあってか、ノイジーでアグレッシヴな音楽性に変化したことで注目をあつめた。

ミュージック・ビデオを監督したのは、元ジーザス&メリー・チャインのダグラス・ハートである。

117. …Baby One More Time – Britney Spears (1998)

ブリトニー・スピアーズのデビュー・シングルで、アメリカやイギリスをはじめ多くの国々のシングル・チャートで1位に輝いた。

個性的でありながらエモーショナルなボーカル、ポップでキャッチーでありながらマイルドにエッジが効いているサウンド、ティーンエイジャーの苦悩というポップ・ミュージック古来のテーマをヴィヴィッドに表現した歌詞など、これぞ完璧なポップ・シングルというべき素晴らしさである。

タイトルは歌詞に「hit me」というフレーズが入っていることからドメスティック・バイオレンスを連想させるという指摘もあるが、実際には精神的な状態を表現したものであり、作詞作曲者のマックス・マーティンがスウェーデン人だったことにより、こうなったともいわれている。いずれにしても、これもまたこの曲のフックとして機能している。

ブリトニー・スピアーズが高校の制服を着て歌い踊るミュージック・ビデオだが、元々は別のアイデアがあったものの、ブリトニー・スピアーズ自身のアイデアによってこうなったという。かつてのフィル・スペクター作品やモータウンのヒット曲、PWLのユーロビートなどと同様に、時代を象徴するのみならず、クラシックスとしても末永く評価されるべき楽曲である。

116. My Name Is – Eminem (1999)

エミネムのアルバム「ザ・スリム・シェイディ・LP」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高36位、全英シングル・チャートでは最高2位を記録した。

コマーシャルなポップソングに対する批評的なパロディーでありながら、実際にヒットしてポップソングとして機能もしてしまうという痛快な楽曲である。

当初はよりホモフォビックな歌詞を含んでいたが、イギリスのシンガー・ソングライター、ラビ・シフレが自身の楽曲のサンプリング使用を許可する条件として、変更を要求した。

歌詞ではナイン・インチ・ネイルズ、スパイス・ガールズ、パメラ・アンダーソンに言及し、ミュージック・ビデオでは当時のビル・クリントン大統領やその他、話題の人物たちに扮するなど、トリックスター的なエンターテイメントを提供するポップ・アイコンとして、エミネムの存在を大衆に知らしめた楽曲である。

115. Work It – Missy Elliott (2002)

ミッシー・エリオットのアルバム「アンダー・コンストラクション」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高2位、全英シングル・チャートでは最高6位を記録した。

RUN D.M.C.「ピーター・パイパー」がサンプリングされていたり、ブロンディ「ハート・オブ・グラス」のイントロで使われているシンプルでチープなリズムパターンが低速化されていたり、オールド・ヒップホップ的でニュー・ウェイヴ的な気分を感じさせながらも、新しくてとてもカッコいい曲である。

とてもセクシーな内容が扱われていたりもして、オノマトペのみならず、象の鳴き声的なサウンドをピー音的に使用する工夫などもとても良い。

114. Can’t Get You Out of My Head – Kylie Minogue (2001)

カイリー・ミノーグのアルバム「フィーヴァー」からシングルカットされ、イギリスをはじめ40ヶ国のシングル・チャートで1位に輝いた。全米シングル・チャートでは最高7位であった。邦題は「熱く胸を焦がして」である。

シンセ・ポップ的なサウンドとセクシーなボーカルが絶妙にマッチしていて、中毒性が高いコーラスも印象的である。未来的でありながらマイルドなエロティシズムが感じられるミュージック・ビデをも、とても評判が良かった。

2002年のブリット・アワードでパフォーマンスして、シングル「ラヴ・アット・ファースト・ライト」にカップリング曲として収録された、ニュー・オーダー「ブルー・マンデー」とのマッシュアップもとても良い。

113. Straight Outta Compton – N.W.A. (1988)

発売から約27年後にあたる2015年、N.W.A.の伝記映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」が公開されたこともあり、全米シングル・チャートの38位にランクインして、この曲も全米トップ40ヒットの1つとなった。

N.W.A.のデビュー・アルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」からの先行シングルとしてリリースされたが、全米シングル・チャートにはランクインしていない。ストリートのリアルをヴィヴィッドに描写した内容があまりにも過激すぎて、放送禁止になっている場合が多かったという。

当時はドラッグや暴力にまみれたギャングスタ的なライフスタイルを魅力的なものとして描いているのではないかと批判されたりもしたのだが、実はそれはまだ広くは知られていない過酷で日常的な現実であり、後に優れたアートフォームとして評価されるようになる。

112. Born Slippy .NUXX – Underworld (1995)

アンダーグラウンドのシングル「ボーン・スリッピー」のB面に収録されていた曲だが、映画「トレインスポッティング」で使われたことにより人気が高まり、シングルA面で発売したところ全英シングル・チャートで最高2位を記録した。

アルコール依存症だったカール・ハイドがその影響下で歌詞を書いたが、貯蔵工程で熟成されたビールのことであるラガーという単語が連呼されることなどから、酒飲みアンセムのようにとらえられたりもしてしんどかったらしい。

「トレインスポッティング」ではひじょうに印象的なラストシーンで使われ、オープニングのイギー・ポップ「ラスト・フォー・ライフ」と共に、最低にも見えがちな日常において、それでも生命を讃美しているように感じられる。

タイトルはメンバーがドッグレース場で見たグレイハウンドの名前に由来している。

111. Paranoid Android – Radiohead (1997)

レディオヘッドのアルバム「OKコンピューター」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高3位を記録した。

とはいえ、ポップでキャッチーなシングル曲とはなかなか言えるような内容でもなく、わりとややこしくて暗かったりもする。しかし、当時のリスナーがこういったタイプのシリアスさを求めていたのではないか、と感じられるようなところもある。

タイトルはアルバムと同様に、バカSFの金字塔とも評されがちなダグラス・アダムスの小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」に由来している。トム・ヨーク自身が個人的に感じていた不安や恐怖が、テクノロジーの進化がもたらす社会的な疎外感に当てはめられ、それが広く共感されたような気もする。

これ以上に深刻で複雑になりすぎると、ポップソングとしてはなかなか成立しにくくなりそうなギリギリ一歩手前で止まっている感が絶妙であり、ここにスゴみを感じたりもする。