邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:130-121
130. 大迷惑/ユニコーン (1989)
ユニコーンの3作目のアルバム「服部」からの先行シングルにして、実はこれがバンドにとっての初シングルでもある。オリコン週間シングルランキングで最高12位を記録した。
この頃から中高生のロックファンだけではなく、大人の音楽リスナーからもなかなかバラエティーにとんだ音楽をやる面白いバンドとして認知されはじめたような印象がある。
この曲もサラリーマンの単身赴任というなかなか若手ロックバンドらしからぬテーマを扱い、音楽的にもバンドサウンドにオーケストラを組み合わせたり、やたらとメロディーがポップでキャッチーだったりと、かなりすごいことになっていると感じさせられた。
129. TRAIN-TRAIN/ザ・ブルーハーツ (1988)
ザ・ブルーハーツのアルバム「TRAIN-TRAIN」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録した。テレビドラマ「はいすくーる落書」の主題歌に起用され、アルバムバージョンとは少し異なっている部分があったとはいえ、オリコン週間シングルランキングで最高3位のヒットアルバムと同じ日の発売でありながらここまでヒットしたというのは、この曲がいかにバンドのファン以外の一般大衆的なリスナーにまで支持されたかの証しであろう。
「弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく その音が響きわたれば ブルースは加速していく」「見えない自由がほしくて見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ」などのキラーフレーズが連発されるが、これらはバブル景気真っ最中のリリース当時よりも、現在の日本の一般大衆に深く刺さるような気もする。
128. Don’t Wanna Cry/安室奈美恵 (1996)
安室奈美恵の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは2週連続、通算3週の1位を記録した。
当時の女子中高生たちに社会現象的ともいえる影響をあたえ、アムラーと呼ばれるワナビーズさえ生み出すほど人気絶頂だった安室奈美恵だが、この曲はそれまでのアップテンポなダンスポップから、より深みのあるR&B的な楽曲へとシフトしたターニングポイント的な楽曲でもある。
ゴスペル音楽的なコーラスなども入っているのだが、それはけして表面的な導入ではなく、この曲は本当に当時の若者たちの魂をある意味において救ってもいたのではないかと思われる。
127. Young Bloods/佐野元春 (1985)
佐野元春の17枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。
ヒップホップを導入したニューヨーク録音のアルバム「VISITORS」の後のシングルだったこともあり、今度の元春の新曲にはメロディーがある、というだけで一部では話題になっていたような気がする。
ザ・スタイル・カウンシル「シャウト・トゥ・ザ・トップ」に似ているのではないか問題などもあるにはあったのだが、一部関連書籍で主張されているような、この曲のヒットがきっかけで日本でもザ・スタイル・カウンシルのリスナーが増えた、という事実はおそらくそれほどないのではないかと思われる。
それはそうとして、純粋にソウルフルなポップソングとしてとても良い曲であり、元旦に気持ちを新たにするにはもってこいのサウンドトラックでもある。個人的には大学受験直前にこのシングルが発売されたので、繰り返し聴いて気合いを入れていたことが思い出される。
126. 夜に駈ける/YOASOBI (2020)
YOASOBIの配信限定シングルで、オリコン週間シングルランキングなどで1位に輝いている。
小説投稿サイトに投稿された小説を原作にしているとか、いわゆるポストボカロ系的な音楽なのではないかとか、いまどきの若者たちにひじょうに受けているわけではあるのだが、そうではない世代の音楽リスナーにとっても、最新型の日本語ポップスとして何とか理解できる範疇にはある。特に「ほらまた チックタックと鳴る世界で」以降のリズミカルなところがとても良い。
ちなみに私のパーソナリティーをわりとよく知る複数の若者たちからこのユニットの「アイドル」という曲が主題歌のテレビアニメ「推しの子」を強烈にレコメンドされて、第1話を見はじめたものの数十分目の時点で挫折してしまったので、いろいろもうダメなのかもしれない。
125. come again/m-flo (2001)
m-floのメジャー9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。
当時のクラブミュージックにおける最先端をJ-POPに翻訳し、しかもヒットさせてしまったというだけでもかなりすごいのだが、ガラケー時代の当時の空気感のようなものを良い感じで真空パックしているようでもあり、どうせうまくいかないと分かっている相手なのに振り切れない女性の絶妙に微妙な心理がLISAの適度にウェットなボーカルで歌われている。
124. Vegetable/岡村靖幸 (1989)
岡村靖幸のアルバム「靖幸」の1曲目に収録され、後にシングルカットされた「友人のふり」のカップリング曲としても収録された。
「愛犬ルーと散歩すりゃストロベリーパイ」からはじまり、「青春しなくちゃまずいだろう」と、まさに岡村靖幸の真骨頂という感じなのだが、ロカビリー的要素やリトル・リチャード「トゥッティ・フルッティ」からのインスパイア的なところなど音楽的にもとても楽しい。
個人的にはおそらく渋谷ロフトにあったWAVEでこのアルバムのCDを買った日に、山口県で道重さゆみが生まれたらしい、という点も感慨深い。
123. 恋におちたら/サニーデイ・サービス (1995)
サニーデイ・サービスのとても良いアルバム「東京」からの先行シングルとしてリリースされた。
洋楽的でもあった「渋谷系」の音楽に対し、サニーデイ・サービスには和のテイスト、というか、はっぴいえんどなどからの影響が強いなどともいわれていて、当時、個人的にはちゃんと聴いていなかったのだが、後に実はこんなにも良かったのかと驚愕した記憶がある。
この曲についても、なんとなく良い感じについてはっきりと断言するのではなく、余白を残しながらヴィヴィッドに説明しているところがとても良く、「君を誘ってどこかへ行きたくなるような気分になったりする」というような言い回しが特徴的である。
122. リンダ リンダ/ザ・ブルーハーツ (1987)
ザ・ブルーハーツのメジャーデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高38位を記録した。
「ドブネズミみたいに美しくなりたい 写真には写らない美しさがあるから」というフレーズがあまりにも有名な日本のロックを代表するアンセムの1つである。デビューアルバムに収録された「パンク・ロック」では、「ああ やさしいから好きなんだ 僕 パンク・ロックが好きだ」と歌い、そうか、パンクロックとはやさしいものでもあったのだ、と気づかされたりもした。
個人的にザ・ブルーハーツを知った時にはすでにまあまあの大人だったのだが、もしもこれをたとえば14歳ぐらいの頃に知っていたならば間違いなく夢中になっていたのだろうし、洋楽を聴く必要など感じなかったのかもしれない、と思った。すさまじい熱量とポップ感覚、そして、おそらく革命であった。
121. 働く男/ユニコーン (1990)
ユニコーンのアルバム「ケダモノの嵐」からの先行シングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。
収録アルバムは日本のロックの録音作品としてはひじょうに素晴らしく、おそらくビートルズに最も近いところにいるのではないだろうか、と当時、思わせるほどであった。
この曲はバブル景気の頃のヤングエグゼクティブとか企業戦士とか、景気は良いのだが正直しんどい感じがテーマになっていたりもするのだが、音楽的にはニュー・ウェイヴ的なところがあったりもして、なかなか楽しい。
それで、「君の裸を とぎれる声を」のところで、ややアダルトなムードになるところなどもとても良い。