the 50 best albums of 2023: 20-11

20. Red Moon in Venus/Kali Uchis

カリ・ウチスの3作目のアルバムで、全米アルバムチャートで最高4位を記録した。

コロンビア出身ということもあり、これまでの作品ではラテン的な要素を入れたりもしていたのだが、今回はソフィスティケイトされていてマイルドにセクシーなR&Bに特化したことによって、とても聴きごたえがあり雰囲気づくりにも最適なアルバムになっているように思える。

などと言っているうちに、2024年1月には早くも次のアルバム「Orquídeas」がリリースされるのである。

19. Struggler/Genesis Owusu

ガーナ出身でオーストラリアを拠点として活動するアーティスト、ジェネシス・オウスの2作目のアルバムである。

ポストパンクやソウルミュージックなどからの影響が感じられる、エクレクティックでオルタナティブな音楽性が特徴である。

不条理も理不尽も飲み込み、というかそうせざるをえないリアルな現実、本気の現実を生き抜いていくことそのものをテーマにしているようにも感じられ、音楽的な才能に溢れまくっているのだが、その上で切実なメッセージ性があるところがとても良い。

18. THE GREATEST UNKNOWN/King Gnu

King Gnu(キングヌー)の4作目のアルバムで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

テレビアニメ「呪術廻戦 渋谷事変」の挿入歌として使われヒットした「SPECIALZ」をはじめ、すでに発表済みの楽曲が多数収録されているが、新たなアレンジが絶妙に施されていたり、インタールードを挟んだりもする構成で、全21曲、約1時間まったく飽きることがなかった。

このご時世にアルバムというフォーマットにこだわり、構成はおそらく考え抜かれているし、収録曲それぞれのクオリティーもひじょうに高い。日本のロック&ポップス名盤の1つとして、いすれきちんと評価されるのではないか、というような気もひじょうにしている。

17. Rat Saw God/Wednesday

アメリカはノースカロライナ州アッシュビル出身のインディーロックバンド、ウェンズデイの5作目で、レーベル移籍後初となるアルバムである。

インディーロックにカントリーやシューゲイズの要素も取り入れた音楽性が特徴だが、地元での生活をテーマに悲しくも可笑しみが感じられるソングライティングのクオリティーも高まり、音楽メディアでも軒並み高評価を受けがちであった。特にインターネットマガジンのPasteやStereogumでは年間ベストアルバムに選ばれている。

16. Madres/Sofia Kourtesis

ペルー出身で現在はベルリンを拠点に活動する音楽プロデューサーにしてDJ、ソフィア・クルテシスのデビューアルバムである。

母親とその命を救った神経外科医に捧げた作品で、音楽的には南米の陽気なセンスも感じられるクラブミュージックとなっている。ジェンダー平等などを訴えたメッセージ性も強く、リスペクトするマヌ・チャオがゲスト参加してもいる。

15. That! Feels! Good!/Jessie Ware

ロンドン出身のシンガーソングライター、ジェシー・ウェアの5作目のアルバムで、全英アルバムチャートで最高3位のヒットを記録した。

ディスコミュージックのとても良いところをモダンにアップデートしたような音楽性が特徴だが、単にスタイルだけではなく抑圧からの解放というその思想性をも受け継いだような、きわめてポリティカルなポップアルバムでもある。

14. With a Hammer/Yaeji

ニューヨークとソウルを拠点として活動するアーティスト、イェジのデビューアルバムである。

ベッドルームポップ的なサウンドとキュートにも聴こえがちなボーカルが特徴的だが、その根底にあるのは抑圧を叩き壊し、自己を解放していこうとする強い意志である。

13. 10,000 gecs/100 gecs

アメリカのハイパーポップデュオ、100 gecsの2作目にしてメジャーデビューアルバムである。

エレクトロニックやヒップホップのみならずヘビーメタルやノベルティーソング的な要素までをも取り入れ、ユニークで刺激的な音楽をつくりあげている。これもまたポップミュージックのいわゆるひとつの最新型だということができる。

12. The Ballad of Darren/Blur

ブラーの約8年ぶり通算9作目のスタジオアルバムで、全英アルバムチャートでは1994年の「パークライフ」以降7作連続となる1位に輝いた。

ブリットポップと呼ばれたり呼ばれなかったりした1990年代の英国インディーバンドやその出身者たちの動きがなんとなく活発だったような気もする2023年だったが、このブラーのいわゆるカムバックアルバムにはノスタルジーにとどまらぬ必然性のようなものが感じられもしてとても良かった。

音楽性のコアにあるインディーロック的なところは保持したまま、確実に年齢は重ねているところが作品にもあらわれていて、それは根本的に悲しみを帯びているところにもリアリティーを感じる。

11. Raven/Kelala

アメリカのシンガーソングライター、ケレラの約6年ぶり2作目のスタジオアルバムである。

オルタナティブR&Bというジャンル分けがかなり腑に落ちる作品であり、ジャケットアートワークにもあらわれている水のイメージと浮遊感のようなものと同時に力強さも感じることができる。