the 50 best albums of 2023: 30-21

30. World’s End FM/Hak Baker

イギリスのシンガーソングラッパーとでも呼んでしまいたくなるHak Bakerのデビューアルバムである。パンク、ラップ、グライム、レゲエなど、その音楽性はきわめてエクレクティックではあるのだが、いうなればザ・クラッシュなどにも通じるプロテスト精神が一貫して感じられるところがとても良い。

アルバムのタイトルやアートワークからもラジオ的なコンセプトがあることはなんとなく分かるのだが、まるで海賊放送を聴いているかのようにバラエティーにとんでいながらもレジスタンスな気分を感じることができるアルバムである。

29. The Summing Up/吉田哲人

チームしゃちほこやWHY@DOLLといったアイドルへの楽曲提供でも知られる音楽家、吉田哲人のシンガーソングライターとしてのデビューアルバムである。

NEO・ニュー・ミュージックの新星として数年前に7インチシングルとしてリリースした「ひとめぐり」やWHY@DOLLに提供した「ラブ・ストーリーは週末に」「ふたりで生きてゆければ」などのセルフカバーも収録している。

ソフトロック的だったりインディーロック的だったり楽曲はバラエティにとんでいるのだが、温かみの感じられるボーカルがとても良く、アルバム全体を特徴づけているように感じられる。心や身体の疲れによく効く。

28. Jaguar Ⅱ/Victoria Monét

カリフォルニア州出身のシンガーソングライター、ヴィクトリア・モネのデビューアルバムで、2020年のEP「Jaguar」の続編にあたる。

音楽的にはモダンなR&Bではあるのだが、ブジュ・バントンをゲストに迎えレゲエの要素を取り入れた「Party Girls」をはじめ、様々な工夫が凝らされてもいて、とても良いアルバムに仕上がっているといえる。

27. The Age of Pleasure/Janelle Monáe

ジャネール・モネイの4作目のアルバムで、全米アルバムチャートでは最高17位を記録した。

前作「Dirty Computer」でも見られたアンドロイド的なキャラクター設定を完全に脱ぎ捨て、よりナチュラルで開放的な感じが全面的に出ているところが特徴である。

とはいえ、音楽的な実験性は随所に見られ、レゲエやトラップなど様々なビートやが効果的に用いられているところなどもとても良い。

26. Blondshell/Blondshell

ロサンゼルス出身のシンガーソングライター、Blondshellのデビューアルバムである。とはいえ、以前にBAUMとして活動していた経歴がある。

コロナ禍中などに自作した楽曲などが中心になっていて、ホールやリズ・フェアなど90年代のオルタナティブロックやインディーロックからの影響を感じさせながらも、そのポップ感覚は実に新鮮である。

25. Let’s Start Here/Lil Yachty

アトランタ出身のラッパー、リル・ヨッティーの5作目のアルバムで、全米アルバムチャートで最高9位を記録した。

これまでのトラップ的な路線から離れ、サイケデリックロックなどの要素を取り入れたとてもユニークなサウンドが特徴的である。

24. Javelin/Sufjan Stevens

スフィアン・スティーヴンスの10作目のアルバムで、全米アルバムチャートで最高30位、全英アルバムチャートで最高7位を記録した。

時としていろいろと実験的なこともやりがちなスフィアン・スティーヴンスなのだが、この作品はおそらく多くのリスナーが最も求めているであろう、純粋にシンガーソングライター的な音楽を追求したようなものになっていて、評価もすこぶる高いようである。

23. SCARING THE HOES/JPEGMafia and Danny Brown

アメリカのラッパー、ジェイペグマフィアとダニー・ブラウンによるコラボレーションアルバムである。

いわゆる売れ線とは逆をいく実験的でカオティックなサウンドがたまらなく魅力的なのだが、それでいて根底に研ぎ澄まされたポップ感覚のようなものが感じられもする。

収録曲の「Garbage Pale Kids」ではなぜか力士の大乃国が出演していたニチロ味付ラムの1980年代の北海道ローカルCMから「ジンギスカン」のフレーズが、ファミリーコンピュータのCM音源と共にサンプリングされていたりもする。

22. ひみつスタジオ/スピッツ

スピッツの約3年半ぶり通算17作目のオリジナルアルバムで、オリコン週間アルバムランキングで最高2位を記録した。

アニメーション映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影」の主題歌に起用されヒットした「美しい鰭」を収録してもいるが他の楽曲も素晴らしく、実は最高傑作なのではないかという意見もあったほどである。

ベテランバンドではあるのだが、それを感じさせないフレッシュ感とギターロックでありながらメインストリームのJ-POPとしてもずっと支持され続けているところなども本当にすごい。メンバー全員が各々ソロパートを歌っている「オバケのロックバンド」も微笑ましくてとても良い。

21. Sundial/Noname

シカゴ出身のラッパー、Nonameの2作目のアルバムである。一旦つくりはじめていたアルバムに納得がいかずお蔵入りにしたりもして、前作から約5年ぶりのアルバムとなった。

ネオソウルやジャズ、ボサノバなどの要素を取り入れたサウンドは洗練されていて聴き心地が良くも感じられるのだが、それに白人優位主義などに対しての辛辣な批判をも含んだメッセージ性のあるラップがのせられている。