邦楽ロック&ポップス名曲1001: 2002

二人のアカボシ/キンモクセイ(2002)

キンモクセイの2作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した。この曲で「NHK紅白歌合戦」にも出場している。

神奈川県相模原市で結成されたバンドで、ニューミュージック的な懐かしさも感じさせる音楽性が当時としてはむしろ新鮮に感じられた。

タイトルに入っている「アカボシ」を漢字で書くと「明星」だからなのか、ジャケットアートワークは明星食品の即席ラーメン、チャルメラのパッケージをモチーフにしたものになっていて、ミュージックビデオでは屋台のラーメン店が登場したりもする。

まったくの余談だが、明星チャルメラのパッケージをモチーフにしたジャケットといえば、「三宅裕司のいかすバンド天国」でイカ天キングに輝いたこともある宮尾すすむと日本の社長が1990年にリリースしたアルバム「大車輪」のことが思い出されたりもする。また、札幌の狸小路には明星ではなく赤星というおいしいラーメン店がある。

マルシェ/KICK THE CAN CREW(2002)

KICK THE CAN CREWの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高9位を記録した。

ラテン的な音楽も取り入れたとても楽しいパーティーラップチューンで、「上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけ!(上がってる!)」などと大いに盛り上がっている。

タイトルがなぜ「マルシェ」なのかというと、ハウス食品のレトルトカレーであるカレーマルシェのCMっぽいからという適当さ加減がとても良い。

ナインティナインの岡村隆史が主演した映画「無問題2」の主題歌であり、この曲で「NHK紅白歌合戦」にも出場した。

ワダツミの木/元ちとせ(2002)

元ちとせのデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングでは浜崎あゆみ「H」、宇多田ヒカル「traveling」に次ぐ3位を記録した。

鹿児島県奄美大島出身で、少女時代から民謡歌手として活動した後に上京し、HMV数寄屋橋店でアルバイトをしながらポピュラー歌手としてのデビューを目指していたようである。

その独特な歌唱法や歌声とどこか神秘的でもある楽曲とが大いに受けて、新人歌手によるノンタイアップの楽曲としては驚異的なセールスを記録した。

「ワダツミ」は日本神話に登場する海の神で、歌詞は人を好きになりすぎて花になってしまった女性をテーマにしたものだという。作詞・作曲・編曲はレピッシュの上田現である。

美しく燃える森/東京スカパラダイスオーケストラ(2002)

東京スカパラダイスオーケストラの22作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。

1980年代から日本を代表するスカバンドとして活動を続けているが、この頃にはゲストボーカリストをフィーチャーした歌モノのシングルを連続でリリースし、オリジナル・ラヴの田島貴男を迎えた「めくれたオレンジ」、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケによる「カナリヤ鳴く空」に続いて、奥田民生が歌ったこの曲が第3弾であった。

これらを収録したアルバム「Stompin’ On DOWN BEAT」はオリコン週間アルバムランキングで1位に輝いている。

ワールズエンド・スーパーノヴァ/くるり(2002)

くるりの9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高13位を記録した。

文化系ロックバンド的な音楽性にダンスミュージック的な肉体性が本格的に導入され、ダンサブルでエモーショナルでありながら、どこか冷めてもいるような感じがとても良い。

「ラフラフ&ダンスミュージック 僕らいつも笑って汗まみれ」というような歌詞や、岸田繁が監督をしたミュージックビデオなども含め、トータル的にアートフォームとしてかなり新しくてカッコよく感じられた。

FANTASISTA/Dragon Ash(2002)

Dragon Ashの11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで2週連続1位を記録した。

ヒップホップの要素を取り入れたロックバンドとして90年代後半から人気が高まっていき、Kjこと降谷建志のポップアイコン的なカリスマ性も当時の若者たちを中心に大いに受けていたような印象がある。

この年にはJ-PHONE(現在のソフトバンクモバイル)のCMソングであった「Life goes on」に続いて、「2002FIFAワールドカップ」のテーマソングであったこの曲も連続で1位に輝き、まさに絶好調という感じであった。

音楽的にはミクスチャーロックにあたり、爽快でスポーティーな勢いのようなものも感じられてとても良い。

光/宇多田ヒカル(2002)

宇多田ヒカルの10作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで3週連続1位、年間シングルランキングでは10位を記録した。

スクウェア・エニックス(当時はスクウェア)のゲームソフト「キングダムハーツ」シリーズのエンディングテーマとしても知られている。

自宅のキッチンで食器を延々と洗い続ける姿が1カットで撮影されたミュージックビデオにもなかなかインパクトがあったが、日常における「光」としての他者との関係性が歌われているのと同時に、タイトルは宇多田ヒカルの本名でもある。

そういった意味でひじょうにパーソナルな印象も受ける楽曲であり、ミュージックビデオを撮影した紀里谷和明との結婚が発表された時には、この曲の歌詞にそれを匂わせるようなところもあるといわれたりもした。

楽園ベイベー/RIP SLYME(2002)

RIP SLYMEの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

このわずか12年ぐらい前にはスチャダラパーが「日本じゃどうかなヒップホップミュージック」などとラップしていたりもしていたのだが、この頃になるとすっかり市民権を得たというか、メインストリームになってもいて、特にこのRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWなどはヒット曲を連発していた。

当時、ルミネ新宿のエスカレーターに乗っていた女子高生たちがRIP SLYMEのメンバーでは誰が好きかというようなことを、アイドルグループについて語るかのようなテンションで話していたことが思い出される。

それはそうとして、この曲は日本のポップミュージック史に残るとても良いサマーソングの1つであり、当時の気分を思い起こさせるのと同時に、これからも夏が来る度にずっと聴かれ続けていくような気もする。

タイガー&ドラゴン/クレイジーケンバンド(2002)

クレイジーケンバンドの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高17位を記録した。

クールスRCのボーカリストなどとして活動した経歴のある横山剣が1997年に結成したバンドで、ロックやポップス、ソウルやブルースのみならず、昭和歌謡や「渋谷系」などをもミックスした音楽性が高く評価されてもいた。

この曲は和田アキ子に歌ってもらうことを想定して書かれていて、昭和歌謡テイストが強く、「俺の話を聞け! 5分だけでもいい」という歌詞が特に印象的である。後に実際に和田アキ子によってもカバーされている。

「クリスマスなんて大嫌い!!なんちゃって♥」とのシングル2タイトル同時発売だったが、2005年には宮藤官九郎脚本で長瀬智也と岡田准一が主演したテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」のオープニングテーマに起用され、廉価版として再リリースされている。