邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1996, Part.1

DEPARTURES/globe(1996)

globeの4作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで2週連続通算4週1位、年間シングルランキングでは2位を記録した。

プロデューサーとしてヒット曲を連発していた小室哲哉がマーク・パンサー、KEIKOと結成した3人組ユニットで、当初はメディアに顔を出していなかったが、それでもCDはいきなり売れていた。

その後、顔出しやテレビの音楽番組への出演を解禁した後に、JR東日本のCMソングとしてリリースされたのがこのシングルであった。

スキー旅行のキャンペーンソングということで、カップルが新幹線に乗って出発するイメージで楽曲はつくられたということである。

静かめにはじまりながらやがてドラマティックに盛り上がっていく冬のラヴソングとして聴かれ続けていて、2018年にはプリンスホテル系スノーリゾートのキャンペーンソングに使われたりもしていた。

名もなき詩/Mr.Children(1996)

Mr.Childrenの10作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングのみならず、年間シングルランキングでも1位に輝いた。この曲で「CROSS ROAD」から7作連続となるミリオンセラーを記録した。

「君が僕を疑っているのなら この喉を切ってくれてやる」といったやや強めの言葉が用いられていて、「Oh darlin」と韻を踏んでいる「ノータリン」は当時、放送禁止用語だったため、放送用にはこの箇所を差し替えた音源が提供されたり、テレビ出演時にはカットされるようなこともあった。

恋愛をする過程で時に誰かを傷つけたとしても、それは仕方がない場合もある、というようなメッセージが含まれているようでもある。

そばかす/JUDY AND MARY(1996)

JUDY AND MARYの9作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

テレビアニメ「るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー」のタイアップが急遽決まって、急いで楽曲を仕上げなければならなかったのだが、アニメといえば「キャンディ・キャンディ」で「そばかすなんて きにしないわ」とオープニングテーマで歌われていることなどから「そばかす」になったようである。

切ない失恋ソングではあるのだが、「想い出はいつもキレイだけど それだけじゃおなかがすくわ」というフレーズが印象的だったり、全体的にポップでキャッチーな楽曲ではあるものの、演奏がオルタナティブロック的になるところがあったりと、聴きごたえがあってとても良い。

あじさい/サニーデイ・サービス(1996)

サニーデイ・サービスのとても良いアルバム「東京」に収録されている楽曲である。シングルカットはされていないのだが、ミュージックビデオが制作されたりベストアルバムにも収録されたりと、人気はとてもある。

大正の大衆文学の感じをポップスで表現しようとした試みのようだが、ザ・スタイル・カウンシル的だったり、ストリングスも美しく、結果としてとてもユニークなポップソングに仕上がっている。

JAM/THE YELLOW MONKEY(1996)

THE YELLOW MONKEYの9作目のシングルとして「Tactics」との両A面でリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。

モット・ザ・フープル「すべての若き野郎ども」をモチーフにしているともいわれるロッカバラード的な楽曲で、孤独や不安が吐露されると同時に大切な他者との関係性の中に希望を見いだしてもいる。

特に海外での航空機墜落事故のニュースで、「乗客に日本人はいませんでした」と嬉しそうに報道するニュースキャスターに対しての違和感が表明されているくだりは印象的である。

I’m proud/華原朋美(1996)

華原朋美の3作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高2位、年間シングルランキングで8位を記録した。

高校生の頃に渋谷の吉野家でスカウトされたことをきっかけに芸能界入りし、タレントやモデルとしていくつかの芸名で活動した後に小室哲哉と出会い、交際がはじまる。カラオケでtrfの楽曲を歌っているのを聴いて感銘を受けた小室哲哉が歌手デビューさせることを決め、芸名も自らと同じT.Kをイニシャルとする華原朋美に改名した。

このシンデレラストーリーのテーマソングにふさわしいのと同時に、不安な年頃の少女たちにとっては自己肯定感を高めてくれる楽曲として、大いに共感できる内容であった。

Don’t wanna cry/安室奈美恵(1996)

安室奈美恵の5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで2週連続通算3週1位、年間シングルランキングでは9位を記録した。

沖縄アクターズスクール出身で、ダンスパフォーマンスグループ、SUPER MONKEY’Sのメンバーとして活動した後、avexに移籍してユーロビートのカバーバージョンをヒットさせる。それから小室哲哉が楽曲提供、プロデュースした楽曲でさらなるブレイクを遂げるのだが、そのファッションなども含めてポップアイコン化して、アムラーと呼ばれるワナビー(有名人に憧れてなりたがる人たち)を出現させるまでに至った。

この曲はゴスペル音楽の要素なども取り入れながら、「やめちゃえばいいのにね ツライ・イタイ事なんか」というような平易な歌詞なども含め、平和への希求をテーマとしたメッセージソングにもなっているところがとても良い。

BABY BLUE/フィッシュマンズ(1996)

フィッシュマンズのとても良いアルバム「空中キャンプ」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高59位を記録した。

アルバムは当時のオリコン週間アルバムランキングで最高88位とそれほど売れまくったわけでもないのだが、後に邦楽ロック&ポップスの名盤として評価が定着していく。

レゲエやダブ的なトラックにのせて、「意味なんかないね 意味なんかない 今にも僕は泣きそうだよ」「このまま連れてってよ 僕だけを連れてってよ」などと切実な感じで歌われていて、それが聴く者の心を強く動かしたりもする。